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本当の私を明かしたらこの関係はどうなっちゃうんだろう~倉木麻衣「Secret of my heart」

こんにちは、2000年前後のbeing作品の歌詞の解釈について書いている「品川みく」です。

思春期の頃から20年間愛してきた曲たちが、時が経つにつれ私の中でどのように変化していったのか、解釈の変化をお楽しみいただけると嬉しいです。

今回は倉木麻衣「Secret of my heart」(2000年)を紹介します。

21年前の解釈:君に恋心を告白したいけど

この曲がリリースされたころ、私は中学生。好きな人にいつ、どうやって思いを伝えようかドキドキしている年頃に、この曲はスーッと入っていきました。

この恋心を「どんな言葉に変えて君に伝えられるだろう」。君に「もっと近づきたい」。でも、それを言ってしまったら、この「君と過ごす」「大切な」「穏やかな時間」は失われてしまうかもしれない。

言うべきか、まだ機会を待つべきか? 2番まで歌い手は悩み続けますが、Cメロ以後は、あなたを愛しているから、「これ以上」「隠せない」と、いよいよ告白する決意を固めていきます。

このまま平行線をたどっていても、いつかは卒業の時が来るなどして、離れなければならない時がきてしまう(どんな作り物も簡単に壊れてしまう日が来る)。君との関係がいつか終わってしまうことを「諦めるくらいなら」君と思いが同じであることを「信じて」「もう迷わない」、「よし、言おう!(I just wanna say)」。

私たちの関係が永遠に続くことを信じて、この秘めたる想い(Secret of my heart)を明かそう、というところで物語を終えています。

現在の解釈:君に「本当の自分」を見せられるだろうか

その後しばらくして、Secret of my heartは倉木麻衣が昔からの友人に自分が倉木麻衣であることを打ち明けようかどうかという思いを歌にしたものであるということが明かされます。ですが、長らく私はその感覚を理解することができませんでした。スター歌手になった後でも自分は自分なのだから、それで関係が大きく変わってしまうことがあるだろうか、なんて無邪気に思っていました。

ですが、それから20年ほど経った今、私は当時の倉木麻衣と同じような感覚を持っている、気がします。ちょっと長くなりますが私の話をさせてください。

私は学生のころ、よくインターネットを使って気楽にブログやホームページでエッセイや音楽、漫画、映画の感想などを書いたりしていました。ネットを通じて出会った楽しい出会いもいくつもあり、今でも続いている関係も何人もいます。けれど、社会人になりプロの物書きになっていく中で、次第にインターネットでの匿名の活動からフェードアウトしていくようになりました。ブログ時代とは桁違いの反響が得られ、次々とフィールドが広がっていくのが面白くなっていったのです。

けれど、突然に小松未歩の昔話が明かされ、また、ふとした偶然から、noteにて自分の大好きなアーティスト、小松未歩について熱く語っている方(南葦ミトさん)を見つけことから、これまで抑えていた想いがとめどなく流れてきました。ちょうど、仕事も子育ても少しだけ落ち着いてちょっとだけ時間が取れるようになってきたころ。求められるもの、売れるものを書くのも面白いけれど、もう一度、自分が好きなものを思いっきり語ってみたい。そんな思いがあふれてきて、十数年間止まっていた筆が一気に動きだしたのでした。実名を使うか匿名(ハンドルネーム)にするかは悩みましたが、自由に書きたい思いから匿名を選ぶこととしました。

さて、前置きが長くなりましたが、ここからが本題です。noteにて小松未歩やGARNET CROWなど大好きな楽曲たちの歌詞解釈について書き始めると、どんどん新しい人とのつながりが生まれていきました。特に、花の砂時計さん、えいちびぃさんとは長らく小松未歩の楽曲から連想する物語を考えてきていたことですっかり意気投合。Twitterのスペース機能にて一緒に小松未歩の歌詞解釈を語るラジオを開催したら30名ほどの方が来てくれるようになりました。

好きな音楽を語り合えることがどれだけ楽しいものか実感する日々を送っていましたが、一方で少し気になることもありました。それは、私の百数十名ほどのtwitterのフォロワーのの中に、ときどき、私の実名がつぶやかれているのを見かけることです。

まったく関連がないはずのコミュニティでも私を知っている人がいる。プロとしてやっていくことは当然そういうことだと分かってはいましたが、そのときふと思ったのです。もし、私が正体を明かしたら、noteやtwitterでの関係はどうなってしまうんだろう、と。もちろん、倉木麻衣ほどの知名度や影響力は到底ないわけですが、それでも、やっぱり、今までとは見方が変わってしまうだろうなあ、とは思っています。

「もっと近づきたい」という気持ち。でも、伝えてしまったら「君と過ごす」「大切な」「穏やかな時間」は形を変えてしまうかもしれない。倉木麻衣は、この二つの気持ちの相克を歌にしたんだなあ、と今まさに実感しています。

おわりに:これからもよろしくね

いずれ気持ちが変わるかもしれませんが、今はまだnoteやtwitterではハンドルネームの「品川みく」を使って匿名の発信を楽しんでいようと思っています。これからもよろしくお願いします。でも、交流が少しずつ増えていく中で、「もっと近づきたい」と思った人には、少しずつ自分を明かしていこうかな、とも思っています。

楽曲の解釈に正解はなく、多くの人が心を動かされ、いろんな解釈で一つの曲を楽しめることを私はとても素敵に思います。その中の一つとして、私の解釈(…というより今回はほとんどエッセイですが)も楽しんでいっていただけると嬉しいです。

創作を通じてつながるnoteの表現空間が素敵だなと思いつつ、他にもなにか私のエッセイで思いを共有できる人がいたら、ひとりでもふたりでもコメントを残していただけるとうれしいです。