僕のロールモデルだった先輩について
なんか、仕事の話ばかりで飽きてきて別のことを書きたいのだが、この話題だけは今日書かないといけないような気がするので書きます。
以前のノートで「かなわないくらいすごいと思った少し年上の先輩が3人いる」と書いた。
その3人の名前を板垣、大嶋、小林という。
板垣さんは僕に文章のイロハを教えてくれた先輩だ。体育会系柔道部出身の巨体から繰り出される突進力でコンピューター付きブルドーザーという形容詞が最もよく似合う先輩だった。繊細な文章を書きながら仕事のやり方は豪快磊落。フロアで大声を張り上げながら周囲を巻き込み、難関なトライを何度も決めてきた。たぶん人生で一番僕を怒鳴った回数が多い人だ。
もうひとりは大嶋さん。この人はとにかく素頭が良かった。西にある某有名国立大学法学部出身で、頭の良さは若手No1と言われていた。とにかく記憶力が抜群。数年前の記事のことを昨日のことかのように覚えている。そして「これ日本語????」というような技術系の社員の説明も瞬時に解する理解力を持ち合わせていた。
更にありがたいことに、この大島さんは「敷居」が抜群に低かった。雰囲気は前田裕二さんを少しナヨっとさせた感じで物腰が柔らかい。板垣さんにしろ後述する小林さんにしろ、後輩にとってはある種の圧を感じる先輩だった。変なことを言った瞬間に怒鳴られたり、怒涛の「詰め」が始まったりしたのだが、大嶋さんにはそれがない。いつもほわっとしていて、怒ったところを一度も見たことがなかった。いつしか僕は4つ年上の彼のことを「おい!大嶋!」と呼びつけにしていた(笑)。
後輩から「柳田さん。これ誰に相談したらいいですかね?」と聞かれた時も「とにかく大嶋に相談しろ。それがたとえ担当外だったとしてもだ。大嶋に相談すれば彼がなんとかしてくれる」とアドバイスしていた(笑)。ちなみに僕に対して「バカ」といった回数はこの人が一番多い。
「君はどうしてそんなに頭が悪いんだい?」
「なんでそんなバカに生まれてきてしまったのかねぇ〜」
なんか、いつもなよっとこんなことを言われていたような気がする(笑)
さて。。。20代中盤だった僕がどの先輩を目指したのか。
目指すことを放棄したのは大嶋さんだった。何しろ頭の出来が違いすぎる。とてもではないがこうなれる自信はなかった。加えて、僕は物腰柔らかくスマートに何かをするタイプではなく、どうひっくり返っても大嶋さんのようになれる自信はなかった。
板垣さんについては憧れた。ただ、少し職場が離れていた(僕は東京、板垣さんは新潟)ため、どうしてもやり取りは電話中心。普段接する機会は少なかった。加えて、なんというか。板垣さんは上司に対して意見は言うが、最終的にはその意見に従った。いわゆるよくできたサラリーマンだった。かっこいいけどね。
僕がこうなりたいと憧れ、目指した先輩は3番目に紹介する小林さんという人だ。
この人とは職場で直属の先輩後輩だった。背が高く、ほっそりとした体型でいつもニコニコしていた。色が黒い。仕事のやり方としては板垣さんに似ていてブルトーザー型だった。上司にも度々楯突いていた。
しかし決定的に違うのは板垣さんが最終的には上司の意見に従ったのに対して、小林さんはあくまでも我を通したという点だった。板垣さんが与えられたフレームの中で泳ぐ人ならば、この小林さんはフレームごとぶっ壊し、新しいフレームを自分でつくってしまうようなところがあった。いわゆる起業家にいそうなタイプ。
同じ職場だったこともあり、彼のことはずっと見ていた。配属初日のことが忘れられない。広報部に配属された初日。恐る恐る席に座ってふっと顔を上げた先に小林さんはいた。ニヤニヤ笑いながら椅子に座り、自分よりもはるか年上の社員を立たせて話をしていた。
「チョット困るんですよね。あいつ馬鹿なんだから○○さんがしっかり見てくれないと。次からよろしくおねがいしますね。まああいつは馬鹿だからむりだろうけど」
・・・・とてつもなくひどいことを言っていた。で、聞けば立って小林さんの話を聞いていた人物は「できる」と評判の他部署の管理職。20代の若手社員がそんな人を座りながら「説教」している。割と体育会系な職場で育ってきた僕にとっては衝撃的な光景だった。
こんなこともあった。その部署は深夜残業がデフォルトで基本的には22時くらいまではみんな働いていた。そんななか、小林さんは朝は定時よりも遅れて出社し、帰りも18時には「お先に!」といった具合で退社していた。
ある日、残業しようとしていた僕の席につかつかと小林さんが近づいてきた。
小林:なんだ、お前今日も残業か。
柳田:仕事が終わらなくて
小林:ったく。そんなんじゃ先が思いやられるな。残業することが当たり前になっちゃったら、ここにいる奴らみたいに仕事がどんどんできなくなってくよ(笑)。じゃ、お先!
部署中に聞こえる声でそう言って帰っていった(なんか・・・好かれる要素ゼロだなw)
小林さんは僕より3つ上の先輩で部署に所属していた先輩はほぼ全員年上だった。ドキドキしながら周りを見たが、メンバーは全員苦笑い。
「まあ、小林くんだからしょうがない。。」
この人の傍若無人な振る舞いはまだまだあるのだが、このへんでやめておく。なぜこんなことをして彼が許されていたのか。それは仕事が抜群にできたからに他ならなかった。
とにかく圧倒的にできた。18時に帰宅していたのに終電まで残業していた社員の倍近くの成果を上げていた。
「こいつらバカだから要領が悪すぎるんだよ」
そんなことを言っていた。(余談ながら、この人ほど「バカ」という単語を口に出した人間を今まで生きてきて僕は見たことがないw。一日何回言ってるんだろうと数えてみたいと思っていたほどに)
僕が赴任する前、新潟に転勤する前の板垣さんとこの小林さんが仕事上で激突するという夢のカードがあったらしいのだが、その時も小林さんが勝ったらしい。。ちなみに板垣さんは小林さんの一つ年上。。
当然こういう性格だから敵も多かったが、できる管理職になればなるほど彼をかわいがった。
ある日、とある女性社員が「私は小林くんのこと、この会社で一番嫌いです」と飲み会の席で宣言した。そんな女性社員に上司が静かに言う。「〇〇さん。僕の立場になったとして、この職場で誰か一人を残さないといけないとしたら、君は誰を残す?」その女性社員は静かに言った。
「小林くんだと思います。。。。」
小林さんのこんなことを言わせてしまう部分が純粋にかっこいいと思った。
ああ。。。もうちょっと最後は書きたかったけど。ここで終わりにする
なぜなら、今から10分後、僕は小林さんとおよそ7年ぶりに会うからだ。。
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