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D&D【プロテクション・フロム・イーヴル・アンド・グッド】の物質要素に関する疑問と考察

 D&Dを初めて1年以上経ち、やっと慣れてきたというか、ルールブックなどが言ってることがようやくわかるようになったような、そんな感覚がありる。

 先日、呪文のルールに関して疑問に思ったことがあり、X上で質問をしてみたら様々な見解がよせられ勉強になったので、ここにまとめておくことにする。

 【今回の疑問】

 呪文「プロテクション・フロム・イーヴル・アンド・グッド」の物質要素のルール「聖水または銀と鉄の粉;これは呪文により消費される」に関して、構成要素ポーチや焦点具を使う場合は、消費は特になしで処理して良いのか?

【前提となるルール】

 まず、5版PHB203にある呪文の物質要素に関するルールは以下の通りだ。
・物質要素が必要な呪文を発動する際には、指定された物体が必要。
・実際の物体のかわりに呪文構成要素ポーチ、または焦点具を用いることもできる。
・ただし、物体の価格が書かれているものについては、代用ができず、実際の物体(以下、現物)が必要。
・物質要素が消費されると書かれている場合、その呪文を発動する回数分だけ現物を準備する必要がある。

 次にPHB148~の装備の説明を見る。
 呪文構成要素ポーチには物質要素など呪文発動に必要となるものがすべて入っている、とある。ただし、呪文の説明において価格が明記されているものは別だ。
 つまり、価格が明記されていないものは「すべて入っている」ということだ。

 焦点具は、構成要素ポーチのように物質要素が入っているわけではないが、ルール上、現物の代わりとして使用できる。

【物質要素のからむ呪文の例】

 以上をふまえると、例としてウェブを発動しようとする場合、物質要素に関する以下のいずれかの条件を満たす必要がある。
・物質要素として指定されている、「クモの巣ひとかけら」の現物を準備する。
・構成要素ポーチで代用する(上記のルールにより、中には「クモの巣ひとかけら」が入っているわけだ)
・焦点具で代用する。

 次にフォースケイジを発動しようとする場合だが、この呪文は物質要素として「1500gpの価値のあるルビー粉末」が指定されている。価格が明記されているため、これは構成要素ポーチや焦点具で代用はできないことになる。何らかの手段で現物を調達しておく必要がある。ただし、発動によって物質が消費されるわけではない。

 最後にストーンスキンを発動しようとする場合だ。この呪文は物質要素として「100gpの価値のあるダイアモンドの粉末」を指定しているため現物を調達する必要があるし、消費されると書かれているので、発動の回数分だけ現物が必要になる。

【プロテクション・フロム・イーヴル・アンド・グッドの特殊な説明文】

 さて、問題のプロテクション・フロム・イーヴル・アンド・グッドだが、この呪文はルールが少し特殊だ。物質要素の説明が「聖水または銀と鉄の粉;これは呪文により消費される」となっている。
 これを物質要素に関するルールで解釈すると、以下のような扱いになるはずだ。
・物質要素の価格が明記されていないので、構成要素ポーチや焦点具での代用が可能。
・消費されると書かれているので、物質要素は消費される。

 ここで今回の疑問が沸き起こった。
 消費されると書かれているが、構成要素ポーチや焦点具で代用した場合、何を消費するのか?
 構成要素ポーチにおける代用は、現物が中に収められているという意味なので、ポーチの中身が減るのか?
 完全な代用となる(現物が存在しない)焦点具の場合はどうなるのか?
 フレーバー上、何かが消費されたことになり、データ上では何も起こらないということで良いのか?

【寄せられた見解と、それに対する疑問】

 このことをXで質問したところ、たくさんの方たちが見解や、実際の卓での扱いを教えてくださった。面白いことに、圧倒的多数である「正解」がないようで、様々な角度からなる多種の見解があった。
 以下、見解とそれに対する私の疑問や考えを並べる。

 ひとつ前置きしておきたいのは、私はなにも正答を探してルールを厳格に適用することを目的としているのではない、ということだ。
 このゲームの大前提として、DMの裁定とプレイヤーの合意によって多様な解釈はもちろんルールの変更さえ許されている。厳格なルールのもとに競うゲームではなく、ルールを土台にして互いに楽しむことを目的としているからだ。
 とはいえ、結果として自由に、柔軟に遊ぶとしても、深くルールを分析し理解することは良いプレイに確実に寄与するものであると考える。

・呪文の説明には価格表記がないが、もともと聖水には25gpの価格が設定されているので、価格表記があると同様と見なすことができる。よって構成要素ポーチや焦点具での代用はできない(現物の調達が必要)。
 気になる点:たしかに、冒険用装備の項で「聖水(ビン)」は25gpとされているが、だからといって、それが呪文の説明において価格明記が省略される理由になるのかが疑わしい。また、呪文の説明には「聖水」としか書かれていないので、1ビンも要らない可能性がある。
 また、「銀と鉄の粉」の価格設定はそもそもないため、それなら「25gpの価値がある銀と鉄の粉」と書いてあるはずではないだろうか。これに関しては
・聖水が25gpなので、同列に挙げられている銀と鉄の粉も25gpだと考えられる。
・聖水を作成する儀式に25gp相当の銀の粉末が必要とあるため、粉の方も25gp相当と考えられる。

 という見解もあった。ただ、多少の関連があるとしても「銀の粉」と「銀と鉄の粉」は別物ではないかという気もする。

 D&Dのデザイナーであるジェレミー・クロフォード氏のTwitter上での解説を共有してくださった方もいた。それによれば
・「消費される」呪文の場合、発動のたびに物体が必要
 とのことだが、25gpの物体が必要かという質問に対して氏は
・聖水や粉を振りかけることはあくまで物語上の手段であり、消費されるべき物体があることが重要で、価格は重要ではない。
 と説明し、最終的にはDMの裁定によるとして締めている。
 これによって考えれば、少量であるために価格までは書かないが、現物を扱うことが必須であるために代用はできない、ということか。
 同時に必ずしも毎回1ビンを使い切ると決められてもいないので、そこはDMの裁定によるし、イメージのベースにあるであろうカトリックでの聖水の使い方などを考えれば、振りかけたり、付けるものであってジャバジャバ注ぐものでもない(ジェレミー氏も sprinkleという動詞を使っている)。

 使用する聖水の量に関しては、
・ブレスの物質要素では「少量の聖水」と書いてあるので、少量と書いていないプロテクション~では25gp分まるまる使う。
・呪文の説明の英語表記だと不可算名詞の holy water 表記であり holy water (flask) や a flask of holy water ではないので、1ビンまるまる使うとは考えられない。
 など様々な角度からの見解が寄せられた。

 また上記のブレスへの言及によって気になったのが、ブレスの説明文で「少量の聖水。これを散布する」とある部分だ。
 価格表記がなく消費されるとも書かれていないので、構成要素ポーチや焦点具で代用できるはずであるが(実際にクレリックが現物を用意することなく聖印でブレスを発動するさまを何回も見ました)、「散布」されたら、それは回収できない、つまり消費されていることにはならないのだろうか?
 構成要素ポーチの中から取り出して散布することができる、または焦点具の使用によって散布したのと同等の効果があるのなら、プロテクション~の場合もそうできるのではないだろうか?とも思う。

 プレイ上での実際の運用としては
・25gpを払うことで聖水や粉を消費したことにしている。
・構成要素ポーチ使用でOKにしている。

 などの情報もいただいた。

【結論】

 ということで、以上をふまえての結論であるが、結局ピタッと腑に落ちる答えは出なかった。
 ただ、沢山の情報をいただき、様々な角度からの見解に触れたことで、今後ゲーム上でこの呪文を扱う際に途方に暮れることはないし、DMをしたときに裁定に迷うこともないだろう。
 プロテクション・フロム・イーヴル・アンド・グッドについて、またD&Dにおける呪文の考え方について深く考え、理解する助けを与えてくださった方々に感謝する。

金くれ