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ドブス・ザ・ライド 二章


戦車編



ドーブズと阿知波は未来へと飛んだ。
辿り着いた時代は未来の某世界大戦。
核戦争で地球の大地は荒野と化していた。
そんな中、ドーブズ・マクフライは某国の戦車隊に潜入することに成功した。

「おや、君が新入りか」
戦車長が話しかけてきた。
「ええ。まぁ、そうです。マクフライです。よろしくお願いします」
「これから君にやってもらうことは砲弾の装填だ。あと、あいさつ、直しとけよ」
「はっ、了解!」
「よろしい」

ただ、ドーブズにはあまり腕力が無かったが、ミッションのためと思って過酷な肉体運動に身を任せた。
そもそも、この部隊に配属されたのはタネオ・ビフの子孫、タネムラ・ビフを暗殺することにあった。
タネムラ・ビフは将来的に王族となったマクフライ家の人間を根絶やしにする。
そこを阿知波は止めたいと思っていた。
そこで、ドーブズは戦車隊に潜入した。
タネムラも別陣営の戦車隊に所属している。
上手くいけば、戦車ごとタネムラを吹き飛ばせると読んだのだ。

砂漠の熱風が砂丘の大地を揺らす中、戦車のエンジンが轟音を響かせながら前進した。
名は「炎の戦車」。ドーブズが配属された戦車はその名にふさわしい、炎のような速さと破壊力を持って、タネムラの陣地めがけて直進していった。

戦車長は、焦げついた砂漠の中、息を飲むような緊張感の中で操縦席に座っていた。だが、彼の脳は阿知波が開発した洗脳マシーンによって、行く方向の管理を支配されていた。つまり、彼の手に握られたステアリングホイールは、阿知波が戦場を支配するための唯一のリンク装置だった。

「敵の位置は?」
「南東、距離300メートル!」

戦車長は敵の位置を確認すると、無言でボタンを押した。炎の戦車は一気に加速し、砂塵を巻き上げながら前進した。狙いを定めたタネムラの乗る戦車が彼らに向かって進んできた。

「レディ!」

戦車長が叫ぶと、ドーブズは自らの役割に就き、力をこめてかつ正確に弾薬をセットした。
敵の戦車が接近するにつれ、ドーブズの心臓の鼓動が激しくなった。しかし、彼は恐れることなく前進し、タネムラのいる戦隊に立ち向かった。

「砲撃準備!」

戦車長が命令すると、砲手が砲身を標的に合わせた。「炎の戦車」が砂漠の大地を飛び越え、敵に向かって疾走する。

「ファイヤー!!」

戦車長の声が車内に響き渡ると、戦車が一斉に反撃した。
その瞬間、砲弾の爆発が炸裂し、炎が敵の戦車を包み込んだ。

轟々と燃える戦車から、白旗を持ったタネムラ・ビフが現れ、そのまま焼かれたままで絶命した。

「勝った」

フォ~~~!!と雄叫びを上げ、ドーブズは戦車から顔を出した。
すると、戦車の周りは敵だらけ。
周囲を銃で取り囲まれ、「降りろ」と命令された。

計画は失敗だった。
計画は読まれていた。
何故なら、敵陣営には我々の正体を知るタネオ・ビフがいたからだった。


霊柩車編


タネオ・ビフは過去へと戻り、宝くじや競馬の賞金だけで自分だけの帝国を築いていた。
そんな中、兵士に囲まれ、国家の処刑対象となった阿知波毒男とドーブズ・マクフライは無念の心で溢れていた。

輸送される車の中で兵士から、こう説明された。

「お前らはこれから処刑される」

車からはタネオ・ビフの巨大な城が見えた。
和風の形をした城で、西洋の色は全くない。

あっという間にドーブズ達は、城の中へと招かれた。
地下駐車場を通り、車用のエレベーターで天守まで登った。

「ほっほほっ、待っておったぞ。タイムトラベラーよ」

偉そうに話すタネオは、少し老けて中年になっていた。
まるで殿様のように畳に座り、上から彼らを見ていた。

「こんにゃろう!お前が時間泥棒の正体か!!」

「いやいや、オイラはそんな泥棒なんてしてないさ。泥棒して有名になったのは、お前らの子孫たちだろ」

「だが、お前のしたことは正義ではない。征服だ!」

「ははっはっ!よく言うよ、無能科学者さんよぉ」

「いいか、正直に言ってマクフライ家の子孫の存亡など、私には関係ない。私の目的は時空の秩序を守ることだ」

「だが、それは反則だよ、マッドサイエンティストさん。時間を変えることで歴史を書き換えるなど、許されるべきではない」

「許されるかどうかは時の流れに委ねられている。しかし、私の手によって歴史が変えられることには変わりはない」

「なら余計に、オイラはあんたらの行為を止める。この時空の安定を守るために」

「くっ、くそっ、この手錠を外せ!今すぐに」

「こいつらを霊柩車に運び込め」

ドーブズ達の目の前には、不気味な棺桶が現れた。その中に身動きの取れないよう四肢を縛られたまま、無理矢理押し込められた。ドーブズの心臓は激しく鼓動し、息が詰まるような恐怖が胸を突き上げた。
叫ぼうとするも、口をふさがれ、叫べなかった。

そして、更なる恐怖が訪れた。棺桶が持ち上げられ、霊柩車の中に運ばれたのだ。ドーブズ達は自らの生命の危機を悟った。このままでは死ぬ運命にあるのだと。
しかし、二人の叫び声は暗闇の中に消えていった。

こうして、ドーブズ達は生きたまま棺に詰め込まれ、霊柩車へと運び込まれた。
さぁ、いかにして抜け出すか。

それはだれにも分からない。


つづく→


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