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ドブス・フィクション

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哀を死る、全醜類に捧ぐ
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#短編小説

Chapter 1「地獄への環状線」

2019年 7月 11日。 モトヤはユウキを乗せ、車で名古屋から静岡まで、早朝の霧に包まれガランとした高速道路の上を、颯爽に走り抜けていた。 「いやぁ、こりゃすッげぇ霧だなぁ…」 「本当だ... モトヤ君、くれぐれも運転には気を付けてくれよ。」 「あぁ、そうだな…」 「アッ、そういえばさ、なぁ、ユウキ。今更だけどさ、なんで俺はお前をこんな田舎まで送ってかなきゃいけなかったんだっけな?」 「そんなことは言うまでもないことだよ。」 「はぁん?言うまでもねぇだって?

Chapter 2 「夢魔」 前編

「痛ッ。」 私は、下腹部に耐えがたい激痛を感じ、目を覚ました。 失禁していた。 気が付くと、そこは病室だった。 いつ、ここに来たのかは思い出せないが、昨夜のことはよく覚えている。 多分一生忘れないだろう。 はぁ… 頼むからあの出来事は夢であってほしい...  そう願った。 昨日、つまりは2019年の7月10日。私は、強姦され、全身に打撲傷を負った。 あの日、あの夜、自分があんなことになるなんて思いもしなかった。 しかも、相手が例のアイツだなんて、尚更だ。

Chapter 3 「夢魔」 後編

車の中は清潔そうだった。少なくとも、目で見る分には。 男は、私を家まで送り返してくれると言ったが、車は私の家とは逆の方向へとドンドン進んでいった。 嫌な予感がしたが、私にもう、そこまで色々考える気力は無かった。 それどころか、あわよくば男の家で一晩寝てみてもいい... とまで思っていた。  馬鹿だった。 いつの間にか、車は高速道路の中へと入り、看板には "静岡" の文字が見えた。 流石に不審に思った私は、男にこう尋ねた。 「すみません、一体どこに向かってるんで