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ドブス・フィクション

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哀を死る、全醜類に捧ぐ
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2021年9月の記事一覧

Chapter 9 「知と暴慾の世界」

アチワはギラついた眼で、こちらを見ていた。 あの小汚い薄ら笑い。その全てが憎たらしい。どうにかならないものなのか。 「ウヒィッ、 ユミちゃんたら、なんて顔をしてるんだ。」 アチワは私のしかめ面を見て笑った。奴のその笑いは、とにかく不気味だ。粘り気があって、鼻が捻じ曲がりそうになる異臭が醸し出ているような、そんな笑いだ。 はっきり言って、気味が悪い。 「もう私の方からお前に話すことは何も無いの。ね? お願いだから早く死んで。」 「え? いきなり、ヒドくない、ヒドくな

Chapter 10 「眠れぬ哉、前夜」

2017年8月14日。 あの日、俺はナゴヤから見える、あの大きな煙突を夕暮れ時に眺めていた。ただただ、じっと電車を待ちながら、これから起こる惨事についての想いを馳せていた。 水族館までは電車で20分ほどだ。考える時間はまだ割とある。その間に俺はどうやってヤマネを調理するのかを考えなくちゃならなかった。 これからのことはきっとユウキ達がなんとかやってくれるだろうと、内心甘く考えてはいたが、正直、これまでの流れから言って俺には汚れ仕事を任せてくるんじゃないだろうか。と、そん