マガジンのカバー画像

ドブス・フィクション

11
哀を死る、全醜類に捧ぐ
運営しているクリエイター

2021年7月の記事一覧

Chapter 2 「夢魔」 前編

「痛ッ。」 私は、下腹部に耐えがたい激痛を感じ、目を覚ました。 失禁していた。 気が付くと、そこは病室だった。 いつ、ここに来たのかは思い出せないが、昨夜のことはよく覚えている。 多分一生忘れないだろう。 はぁ… 頼むからあの出来事は夢であってほしい...  そう願った。 昨日、つまりは2019年の7月10日。私は、強姦され、全身に打撲傷を負った。 あの日、あの夜、自分があんなことになるなんて思いもしなかった。 しかも、相手が例のアイツだなんて、尚更だ。

Chapter 3 「夢魔」 後編

車の中は清潔そうだった。少なくとも、目で見る分には。 男は、私を家まで送り返してくれると言ったが、車は私の家とは逆の方向へとドンドン進んでいった。 嫌な予感がしたが、私にもう、そこまで色々考える気力は無かった。 それどころか、あわよくば男の家で一晩寝てみてもいい... とまで思っていた。  馬鹿だった。 いつの間にか、車は高速道路の中へと入り、看板には "静岡" の文字が見えた。 流石に不審に思った私は、男にこう尋ねた。 「すみません、一体どこに向かってるんで

Chapter 4 「イタブリ」

そこは、一面霧の中から突如現れた不気味な廃屋敷。 辺り一面ツタで囲まれ、窓からは不穏な青白い光が漏れていた。 ユウキは、内心恐る恐る、しかし表面上では堂々と、屋敷のインターホンを押した。 返事は無い。 玄関のドアノブに手を伸ばしてみると、そこに鍵は掛かっていなかった。 静かに、音を立てずに、ゆっくりとドアを開ける。 すると、玄関先には、見慣れない小柄な男が立っていた。 小男はスーツを着ていて、髪はスキンヘッド、年齢は50半ばに見えた。 穏やかそうな眼つきでこち

Chapter 5 「海中世界の王」

ここはどこだ… モトヤはそう思った。 目の前には、蒼く光る巨大な水槽が見え、その中には二匹のシャチが不気味にコチラを覗いていた。 すると、 フッ、ハッハッ… 「御目覚かなぁ…モトヤちゃん♪」 物陰から1人の人影が見えた。 男の背は高く、何にやら気味の悪い微笑みを浮かべていた。 男の方まで近付こうとしたが、足には足枷が着いており、身体は椅子に固定され動くことはできなかった。 「んんもォオ…焦んないでヨ、ゆっくりやんましょうよ。」 その声を、その奇声を聴き、

Chapter 6 「学園の先で...」

あれは確か、二年前の夏。 いや、明確には2017年の6月。梅雨の時期だった。 俺は当時高2で、自分の進路について先の見えない恐怖から焦りだし、また帰宅部故に、この退屈な学校生活に耐えがたい孤独を感じていた。 梅雨の時期特有のあの腐ったような雨傘の臭いと、濡れた制服から少し透けて見える女子の下着。その幻想的かつ汚らしい空気を纏った校内の空気は、まるで白昼夢のようだった。 その理性を失わせる梅雨の陰鬱とした空気と、7月の中間試験に対する途方もない不安。当時の俺は、正直言っ

Chapter 7「異端者・孤立者・沈黙者」

ド・ブーズ 最初のメンバーは、全部で4人。 俺と、ユウキと、ナガヤマと、ヤマネだ。 俺たちは全員同い年で、それでもって全員ドブスでもあった。 ドブスってのは、つまりは他人を寄せ付けないレベルの不細工ってことだ。 言っちゃ悪いんだが、そん中でも正直ナガヤマはズバ抜けたブスだった。 これ以上ない程のブスで、臭かった。 デブのブスで、年中脂汗を垂らした不潔な奴。俺からするとアイツのことは、ずっとそういう認識でいた。 俺はそんなナガヤマのことが、嫌いだった。一緒にいるの