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MtG ヒストリック イゼットウィザード調整記録(23/6/11・12 予選ウィークエンド)

■背景・前提

'23/06/11〜12 mtgアリーナ予選ウィークエンドに向けて約半月間にわたってヒストリック イゼットウィザードの調整を行った為、振り返りを兼ねて記録を残す。

尚、本時記事で使用したカード画像は全て下記から引用した。

https://gatherer.wizards.com/Pages/Default.aspx

■結果

●使用デッキ

イゼットウィザード

●結果

5-2 Day1敗退
R1 対イゼットフェニックス P WLW
R2 対WUソプター P WW
R3 対WUGハンマー D WW
R4 対WB人間 D WW
R5 対URコントロール D LWL
R6 対WBRリアニメイト P WW
R7 対5cニヴ=ミゼット D LWL
詳細な対戦の内容は"■評価"項参照.。

●その他

予選ウィークエンドというトーナメントの性質上、メタゲームや勝ち組のアーキタイプ、構成を正確に把握することは難しいが、SNSで調べられた範囲の情報では、DAY2ではケシスコンボ・イゼットウィザード・5cニヴが多かったようである。

■環境認識・分析

●メタゲームの変遷

ヒストリックのメタゲームは、(1)'23/03/18~19に行われた<アリーナ・チャンピオンシップ2>を起点に、(2)<イニストラードを覆う影・リマスター>リリース(3/21)、<機械兵団の進軍>リリース(4/18)<機械兵団の進軍:決戦の後に>リリース(5/12)を経て形成された。また、試行回数増加による(3)既存リストの洗練も進行した。

(1)アリーナ・チャンピオンシップ2
予選ウィークエンドを突破した32名によるMtgアリーナで行われる最もレベルの高い大会。フォーマットはドラフト+ヒストリックで行われた。

最大勢力は環境屈指のパワーカードである《波の巨人、クルシアス/Crucias, Titan of the Waves》《鏡割りの寓話/Fable of the Mirror-Breaker》を中核に据えたBRx系ミッドレンジ。BR純正型と、《波の巨人、クルシアス/Crucias, Titan of the Waves》に次ぐパワーカードである《暗黒時代の後継、ジャーシル/Jarsyl, Dark Age Scion》を取ったジャンド(BRg)型、対ミッドレンジのゴールとして圧倒的な性能を誇る《偉大なる統一者、アトラクサ/Atraxa, Grand Unifier》をリアニメイトする戦略をとったマルドゥ(BRw)型が存在。

アリーナ専用カードの画像は公式探しても全然出てこない

BRミッドレンジ(純正型)

【概要】
高効率の手札破壊、除去呪文で1対1交換を繰り返し、1枚1枚のカードの質の差で優位を付ける古典的ミッドレンジ。《致命的な一押し/Fatal Push》《思考囲い/Thoughtseize》《波の巨人、クルシアス/Crucias, Titan of the Waves》《鏡割りの寓話/Fable of the Mirror-Breaker》がほぼ固定枠でメタゲームや戦略に合わせてその他の部分を変更可能。

【強み】
・《波の巨人、クルシアス/Crucias, Titan of the Waves》《鏡割りの寓話/Fable of the Mirror-Breaker》によりほぼ毎ターン不要牌を有効牌に変換できるので、相手に合わせた最適なゲームメイクが可能、極端に苦手なデッキが少ない
・豊富かつ軽量な除去によってクリーチャーデッキに対して全般的に有利
・高効率の手札破壊によってコンボやコントロールに対しても不利にはならない
・純正2色の為ミシュラランド(《バグベアの居住地/Den of the Bugbear》《目玉の暴君の住処/Hive of the Eye Tyrant》)と《ロークスワイン城/Castle Locthwain》を取ることができ、消耗戦に強い

【弱み】
・手札の質を高めることはできても枚数を増やす手段に乏しいので、大きなアドバンテージ差を取られてしまうと取り返せない

ジャンド(BRg)ミッドレンジ

【概要】
純正BRミッドレンジに対して《暗黒時代の後継、ジャーシル/Jarsyl, Dark Age Scion》を加えて手札破壊や除去を使い回し、中盤戦のゲーム支配力を強化したデッキ。
【強み】
・《暗黒時代の後継、ジャーシル/Jarsyl, Dark Age Scion》での手札破壊・除去の使い回しにより相手の有効牌を全て捌いて勝ち切る"ハメパターン"がある
・スペルの使い回しにより上述純正BRの弱みであるアドバンテージ獲得手段の乏しさをカバーできる
【弱み】
・《暗黒時代の後継、ジャーシル/Jarsyl, Dark Age Scion》は《波の巨人、クルシアス/Crucias, Titan of the Waves》と同じくインスタントの除去で対処可能な為、対策への強さは純正BRと変わらない
・墓地依存のカードを他にも取っている場合、サイドボード後の墓地対策がよく刺さる
・《暗黒時代の後継、ジャーシル/Jarsyl, Dark Age Scion》の為に構成に制約が生じ、サイドボード含めた柔軟性が下がる・マナベースに負荷がかかる
・《暗黒時代の後継、ジャーシル/Jarsyl, Dark Age Scion》の効果には制限がある為、有効に使えない状況やハンデス・除去の使い回しを乗り越えられる高いアドバンテージ獲得能力のある相手には優位性が薄い

マルドゥ(BRw)リアニメイト

【概要】
BRの基本構成に加え、勝ち手段として《偉大なる統一者、アトラクサ/Atraxa, Grand Unifier》とリアニメイトパーツを搭載。屋台骨である《波の巨人、クルシアス/Crucias, Titan of the Waves》《鏡割りの寓話/Fable of the Mirror-Breaker》《税血の収穫者/Bloodtithe Harvester》により無理なくディスカードができることから、デッキ構造に最小限の負荷でリアニメイト要素を足すことができる。

【強み】
・《偉大なる統一者、アトラクサ/Atraxa, Grand Unifier》のアドバンテージ獲得能力と本体性能により、出てしまえばワンショット系コンボ以外はほぼ逆転できない
→アドバンテージが重要なミッドレンジ・コントロールに対してはETBでの後続確保
→ライフを詰めるデッキに対しては7/7飛行絆魂警戒で攻守共に盤石
・BRミッドレンジと土台が同じなので軽くて優秀な干渉手段と高い安定性を持つ
・宝物トークンや相棒の《湧き出る源、ジェガンサ/Jegantha, the Wellspring》から《偉大なる統一者、アトラクサ/Atraxa, Grand Unifier》の通常キャストも可能

【弱み】
・デッキ内の3スロットをリアニメートパーツにしているため墓地対策が強く刺さる
・リアニメイトパーツや白タッチのためにデッキの自由度が低くサイドプランが硬直傾向、マナベースにも負荷がかかる

二番手は《完成化した精神、ジェイス/Jace, the Perfected Mind》獲得で弱いパーツが抜け完成度が上がったケシスコンボ。

ケシスコンボ

【概要】
《隠された手、ケシス/Kethis, the Hidden Hand》の能力で伝説のスペルを墓地から使い回し、《完成化した精神、ジェイス/Jace, the Perfected Mind》の−XでLOを決めるデッキ。《完成化した精神、ジェイス/Jace, the Perfected Mind》が墓地肥やしとフィニッシャーを兼ねるのでデッキから弱いコンボパーツが抜け完成度が高まった。

【強み】
・おおよそ4ターンでコンボが決まる為、干渉手段がないデッキ(特にメイン戦)には圧倒的に有利
・メイン戦は3〜4ターン目にインスタントタイミングでタフネス4の《隠された手、ケシス/Kethis, the Hidden Hand》を除去する必要があるため BR系以外ではそもそも対処が難しい
・《耐え抜くもの、母聖樹/Boseiju, Who Endures》《天上都市、大田原/Otawara, Soaring City》が強く使えるので、(比較的)墓地対策対策が容易

・《完成化した精神、ジェイス/Jace, the Perfected Mind》の切削量が多いため、捲れ方によっては主要な墓地対策である《未認可霊柩車/Unlicensed Hearse》では対処しきれない

・ライフを攻めないワンショットコンボなので《偉大なる統一者、アトラクサ/Atraxa, Grand Unifier》に強い
【弱み】
・墓地対策に比較的強いとは言え、オールイン墓地コンボな為どうやっても墓地対策はキツい
・墓地対策以外でもインスタント除去や《真髄の針/Pithing Needle》等も刺さるので、意識していればサイド後の対策は容易

そんな中優勝したのは《導師の導き/Mentor's Guidance》《表現の反復/Expressive Iteration》8枚採用という画期的な構築によってBRx系ミッドレンジ不利との前評判を払拭したイゼットウィザードであった。

イゼットウィザード

【概要】
ウィザード・クリーチャーをコントロールしていることでボーナスのある《魔術師の稲妻/Wizard's Lightning》《導師の導き/Mentor's Guidance》を駆使し、軽いクロックとスペルで盤面を捌きながら速やかにライフを詰めるテンポ・アグロ。従来の《無謀なる突進/Reckless Charge》《静電気の放電/Static Discharge》のような攻めに特化した枠を《導師の導き/Mentor's Guidance》にしたことで除去への耐性が上がり、ロングゲームに対応できるオールマイティデッキに進化した。

【強み】
・1〜2マナの軽量・高打点クロックにより、干渉の薄い相手には速やかにライフを詰めることが可能
・1マナの高効率火力呪文によりクリーチャーデッキに対してはテンポ良く盤面を捌くことが可能、《戦慄衆の秘儀術師/Dreadhorde Arcanist》で火力を使い回すことで盤面を壊滅に追い込む"ハメパターン"もある

・干渉手段が豊富で早いプランが成立しない相手に対しては、8枚採用された《導師の導き/Mentor's Guidance》《表現の反復/Expressive Iteration》でロングレンジのアドバンテージ戦が可能
・豊富なドロー操作により、上記ゲームプランをある程度コントロール可能な為、平均的なパフォーマンスが高い
・バウンスやカウンターを取ることができるので早いコンボや致命的なカードにも最低限の耐性あり
【弱み】
・《対称の賢者/Symmetry Sage》《損魂魔道士/Soul-Scar Mage》《戦闘魔道士の隊長、バルモア/Balmor, Battlemage Captain》の性質上自ターンにアクションを取る必要があり、構える動きが取りにくい・取ろうとすると強みが薄くなる
よって、特にサイドボード後の戦略に制約がある

・土地/クロック/ドロー/火力をバランス良く引く必要があり、ドロー呪文が撃ちやすくなるまでの最初の2ターンはやや初手・ドローの要求値が高い
特に、《無謀な怒り/Reckless Rage》《魔術師の稲妻/Wizard's Lightning》《導師の導き/Mentor's Guidance》は盤面にクリーチャーがいないと機能しないので初手と相手の除去が噛み合うと動きが大きく鈍化する

・《戦慄衆の秘儀術師/Dreadhorde Arcanist》を強く使う為1マナのスペルを多く入れる必要があり、特にサイドボーディングに制約が生じる
・干渉手段を火力に頼っている為、火力の効きにくい脅威(《黙示録、シェオルドレッド/Sheoldred, the Apocalypse》《偉大なる統一者、アトラクサ/Atraxa, Grand Unifier》《縄張り持ちのカヴー/Territorial Kavu》等)の対処が難しい

・軽い非クリーチャースペルを連打する為、《エスパーの歩哨/Esper Sentinel》《スレイベンの守護者、サリア/Thalia, Guardian of Thraben》等のヘイトベアの影響を強く受ける

以降、《波の巨人、クルシアス/Crucias, Titan of the Waves》《鏡割りの寓話/Fable of the Mirror-Breaker》を軸にしたBRxミッドレンジと、アドバンテージカードを満載にした形のイゼットウィザードがヒストリック環境のトップメタとして定着する。

(2) <イニストラードを覆う影・リマスター>リリース(3/21)、<機械兵団の進軍>リリース(4/18)<機械兵団の進軍:決戦の後に>リリース(5/12)
3つのカードセットのリリースに伴い強化された/新しく登場したアーキタイプ、及びメタゲームへの影響について記述する。但し、数が多い為一部を除いて簡潔に記載する。

イゼットウィザード

【変化点】
《瞬唱の魔道士/Snapcaster Mage》《ナヒリの戦争術/Nahiri's Warcrafting》の追加

【効果】
・従来の《海と空のシヴィエルン/Svyelun of Sea and Sky》《厚かましい借り手/Brazen Borrower》のような用途の狭い枠の代わりに《瞬唱の魔道士/Snapcaster Mage》というユーティリティカードが入ることにより柔軟性と粘り強さが伸長

・《魔術師の稲妻/Wizard's Lightning》を使い回せる為、盤面を取られても残り6〜9点を焼き切るプランでの勝ち筋が成立
・《ナヒリの戦争術/Nahiri's Warcrafting》によってこれまで苦手としていた《黙示録、シェオルドレッド/Sheoldred, the Apocalypse》《縄張り持ちのカヴー/Territorial Kavu》を一枚で対処できるようになった
このデッキの場合豊富なドロー操作で積極的に探しに行くことができ、《瞬唱の魔道士/Snapcaster Mage》《戦慄衆の秘儀術師/Dreadhorde Arcanist》により複数回使用することも難しくない
【背反】
・《瞬唱の魔道士/Snapcaster Mage》は序盤に能動的にプレイしにくいので重ね引きや引きが偏った際に早いプランが取りにくい
・墓地利用カードが増えたことで墓地対策に引っかかりやすくなった
【その他副次効果・トピック】
これら2枚の追加により、明確にBRミッドレンジに有利がつき、名実ともに環境の大本命に。しかしそれ故に全てのデッキから厳しいマークがつくことになった。

ケシスコンボ

【変化点】
《侵攻の伝令、ローナ/Rona, Herald of Invasion》追加

【効果】
・コンボルートが増加しデッキの完成度が一段向上、コンボパーツとして意外にも単純に潤滑油として優秀
【背反】
(《侵攻の伝令、ローナ/Rona, Herald of Invasion》加入前からの傾向だが)ケシスコンボ、マルドゥリアニメイトと言う強力なデッキ2種が環境上に存在することで、墓地対策が厚めに取られるようになった。

バント(Wug)ハンマー

《シガルダの助け/Sigarda's Aid》加入により、《ケンバの装具役/Kemba's Outfitter》と合わせて《巨像の鎚/Colossus Hammer》《ベルト・オヴ・ジャイアント・ストレングス/Belt of Giant Strength》を安定的に運用できるようになりデッキとして成立。

この手のデッキの常として軽い単体除去に弱いが、《不可視の忍び寄り/Invisible Stalker》採用によりある程度カバー可能。楽しく勝ち方が爽快なので使用者は多いが初手依存度が高く安定しない印象。

WUxコントロール

《方程式の改変/Change the Equation》という取り回しのいいカウンターが追加になり強化。《神聖な粛清/Divine Purge》が雑多なデッキに強いことが大きな長所。致命的な欠点として、トップメタであるBRxミッドレンジとイゼットウィザードに不利。 イゼットウィザードは2体で十分なクロックになるので《神聖な粛清》を撃たざるを得ないが、復帰が簡単かつ普通に再キャストされるので撃てば撃つほど不利になる。

Wx人間

《エスパーの歩哨/Esper Sentinel》《スレイベンの守護者、サリア/Thalia, Guardian of Thraben》に《銅纏いの先兵/Coppercoat Vanguard》が加わりより妨害に強く、打点も向上した。

《審問官の隊長/Inquisitor Captain》《イーオスのレインジャー長/Ranger-Captain of Eos》によりある程度粘り強く戦える。各種ヘイトベアのお陰でイゼットウィザードをはじめとした、非クリーチャースペルを多用するデッキに有利なのがセールスポイント。但し、ヘイトベアが有効に刺さらない相手に対してはただの愚直な地上アグロなのでマッチアップに勝率を大きく左右される。

(3)既存リストの洗練
時間経過やメタゲームの変化により、直接的なアップデートがなかったデッキもリストが洗練された。

5cニヴ/アトラクサ

【概要】
《縄張り持ちのカヴー/Territorial Kavu》《力線の束縛/Leyline Binding》のような優秀なドメインスペルを採用した低速グッドスタッフ。《ニヴ=ミゼット再誕/Niv-Mizzet Reborn》《偉大なる統一者、アトラクサ/Atraxa, Grand Unifier》がフィニッシャーとアドバンテージエンジンを兼ね、着地してしまえばミッドレンジ以下のデッキをカードパワー・物量双方で締め上げることができる。中盤の潤滑油として《波の巨人、クルシアス/Crucias, Titan of the Waves》や《鏡割りの寓話/Fable of the Mirror-Breaker》を厚く採用する構成が定着し、安定性が向上した。

【強み】
・《ニヴ=ミゼット再誕/Niv-Mizzet Reborn》《偉大なる統一者、アトラクサ/Atraxa, Grand Unifier》はサイズ・アドバンテージ両面で環境最強のフィニッシャー、特に《偉大なる統一者、アトラクサ/Atraxa, Grand Unifier》は絆魂によりアグロの勝ち筋をシャットアウトする
・《力線の束縛/Leyline Binding》をはじめとした5色の優秀な対処札を採用しており環境のほとんどの脅威に対処可能
・《縄張り持ちのカヴー/Territorial Kavu》は環境最高の2マナクリーチャー、除去のない相手には2ターン目にポン出ししてそのまま殴り切る勝ち筋もあり、そうでなくても地上の壁としてフィニッシャー着地まで時間を稼げる
・《稲妻のらせん/Lightning Helix》《轟音のクラリオン/Deafening Clarion》により早いアグロデッキに対してライフ・テンポを取り返す動きが取れる

【弱み】
・タップインが多く、序盤の立ち上がりが遅い
・盤面デッキなのでコントロールやワンショットコンボなどへの対処が難しい

ラクドス(BR)アルカニスト

BRミッドレンジの派生。BRミッドレンジは2マナ域が弱いことが課題だった為、《戦慄衆の秘儀術師/Dreadhorde Arcanist》を採用することでハンデス・除去の使い回しという"ハメパターン"を追加。デッキの構成に制約ができること、《戦慄衆の秘儀術師/Dreadhorde Arcanist》単品では打点が低いことが欠点。

●メタゲームの予測

上記メタゲームの変遷から、予選ウィークエンド本番のメタゲームを下記のように推定した。

(1)DAY1前半〜中盤
トップメタはイゼットウィザード・BRxミッドレンジ。但し、予選ウィークエンドを突破した雑多なデッキが存在しシェア自体はバラバラ。
・バントハンマー/WUコントロール/ソプター/緑単/オーラ/ゴブリン 等
ここから順当に淘汰されデッキパワーの高いデッキが徐々に残り出す。
・イゼットウィザード/ラクドスアルカニスト/マルドゥリアニメイト/ケシスコンボ/5cニヴ・アトラクサ

(2)DAY1後半〜DAY2前半
・残ったデッキの中で強みを活かせないラクドスアルカニストが姿を消す
・墓地対策がサイドに厚く取られている為、残ったデッキの中で墓地対策が有効に刺さるマルドゥリアニメイトが数を減らす
・5cは肉質で利のあるアトラクサに徐々にシフトする

(3)DAY2中盤〜
残り3デッキの三つ巴、標準的な構成であればケシスコンボがやや優勢だが、個別のリストのサイドプランで相性が逆転

●環境の要件定義

上記メタゲームの予測から、使用するデッキ・ゲームプランが満たすべき要件を下記の通り定義した。
・【要件①】(DAY1のみ)雑多なデッキが多いので、特定のマッチアップのみに強いデッキ・戦略は採用不可
・【要件②】イゼットウィザードとBRxの根幹構造に不利なデッキ・戦略は採用不可
・【要件③】墓地・墓地利用手段への干渉必須
・【要件④】《偉大なる統一者、アトラクサ/Atraxa, Grand Unifier》を出させない/出されても無視できる/自分も出す戦略が必要

■デッキ選択・ゲームプラン/構築の狙い

上記環境分析から、イゼットウィザードを選択した。

●採択ゲームプラン

前項の各要件に対し、下記のようなゲームプランを想定した。
・【要件①】→雑多な相手はデッキの地力で対応可能な為、苦手な相手・負け筋を絞ってサイドボードで対応する(【ゲームプラン①】)
・【要件②】→ミラーは意識し過ぎて他マッチアップが下がることを危惧し無理のない範囲で寄せ、五分を許容する(【ゲームプラン②-1】)
・【要件②】→BRは基本構造で有利なので負け筋だけサイドボードで対応する(【ゲームプラン②-2】)
・【要件③】→メインボードでは有効な干渉手段がない為出来るだけショートレンジのゲームを仕掛け、サイド後にしっかり干渉手段を用意する(【ゲームプラン③】)
・【要件④】→《偉大なる統一者、アトラクサ/Atraxa, Grand Unifier》を着地させない為にショートレンジでの差し切りを狙う。サイド後は《偉大なる統一者、アトラクサ/Atraxa, Grand Unifier》/《偉大なる統一者、アトラクサ/Atraxa, Grand Unifier》の着地をサポートするカードを狙い打てる干渉手段を用意する(【ゲームプラン④】)

●構築の狙い

前述ゲームプランを達成するため、下記のような狙いで構築を行った。

[DAY1]
【メインボード】
(1)クリーチャー

4《対称の賢者/Symmetry Sage》
4《損魂魔道士/Soul-Scar Mage》
1《ドラゴンの怒りの媒介者/Dragon's Rage Channeler》
4《戦慄衆の秘儀術師/Dreadhorde Arcanist》
3《瞬唱の魔道士/Snapcaster Mage》
2《戦闘魔道士の隊長、バルモア/Balmor, Battlemage Captain》

標準的なリストに対し、《瞬唱の魔道士/Snapcaster Mage》が一枚少なく、《ドラゴンの怒りの媒介者/Dragon's Rage Channeler》を一枚採用している。これは、
・《瞬唱の魔道士/Snapcaster Mage》は相手の動きに対応してプレイをする受け寄りのカードな為、複数枚引くと能動的にライフを攻める展開で邪魔になることがあること(特にサイドボード後、相手への受け札が増えた際)
・クロックの速さ/高さ/確実さを求められるマッチアップ/展開において、1マナかつ飛行の追加のクロックが欲しいことが多いこと
・ミラーマッチ等《導師の導き/Mentor's Guidance》を早く確実に通すことが求められるマッチアップで1マナのウィザード/シャーマンが《対称の賢者/Symmetry Sage》《損魂魔道士/Soul-Scar Mage》だけでは足りないと感じたこと
による。主に早くクロックをかけるプランの補強である。《瞬唱の魔道士/Snapcaster Mage》は確かに強力なカードだが、フル投入はデッキの強さの大前提であるクロックの速さを阻害しうると判断した。
デッキの大元の強みの補強なので個別のゲームプランへの貢献は評価しにくいが強いて言うなら【ゲームプラン③④】のショートレンジ戦略に寄与する。

(2)火力・除去呪文
4《絞殺/Strangle》
2《無謀な怒り/Reckless Rage》
4《魔術師の稲妻/Wizard's Lightning》

標準的なリストに対し《無謀な怒り/Reckless Rage》が一枚《絞殺/Strangle》にシフト。この狙いは、
・ミラーマッチで後手《無謀な怒り/Reckless Rage》が撃てないことが多いのに対し、《絞殺/Strangle》であれば相手のウィザードを処理できるので《導師の導き/Mentor's Guidance》《魔術師の稲妻/Wizard's Lightning》《無謀な怒り/Reckless Rage》がアクティブにならずワンサイドゲームを防げる可能性が上がる為→【ゲームプラン②-1】
・火力が腐る対WU系コントロールにおいて《絞殺/Strangle》はプレインズウォーカーに当たるので比較的腐りにくい→【ゲームプラン①】
である。背反として《隠された手、ケシス/Kethis, the Hidden Hand》への干渉手段が少なくなるが、ケシスコンボについてはサイドボード後に個別戦略を用意すること、メタゲーム上の絶対数でイゼットウィザードの方が多いと考えた為許容した。

(3)ドロー操作呪文
4《考慮/Consider》
4《導師の導き/Mentor's Guidance》
4《表現の反復/Expressive Iteration》

標準的なリストから特に変更なし。

(4)土地
1《島/Island》
1《ストーム・ジャイアントの聖堂/Hall of Storm Giants》
1《天上都市、大田原/Otawara, Soaring City》
1《山/Mountain》
2《バグベアの居住地/Den of the Bugbear》
4《蒸気孔/Steam Vents》
4《尖塔断の運河/Spirebluff Canal》
4《河川滑りの小道/Riverglide Pathway》
2《シヴの浅瀬/Shivan Reef》

特殊な部分はないが、《ストーム・ジャイアントの聖堂/Hall of Storm Giants》は対ミッドレンジ・同型で消耗戦後に勝負を決める存在として意識して採用→【ゲームプラン②-1】

【サイドボード】
3《兄弟仲の終焉/Brotherhood's End》
2《溶鉄の衝撃/Molten Impact》

《エスパーの歩哨/Esper Sentinel》を使うアーティファクトデッキや人間アグロをはじめ、軽量アグロに序盤テンポ良く動かれてアドバンテージカードが腐って負ける展開がそれなりにあり、DAY1でもそれらのデッキの存在が想定されたことから専用のサイド枠を確保→【ゲームプラン①】
《兄弟仲の終焉/Brotherhood's End》は普通のアグロ相手にサイドインしてもほぼ確実に腐るのでアーティファクトデッキ専用。対人間やエルフの後手なら1枚入れてもいい程度。ソプター系デッキは4/4以上のサイズに育つことが多く回られると対処できない感触だったので取りこぼしの無いように3枚採用。
《溶鉄の衝撃/Molten Impact》はタフネス2以下が並ぶデッキに劇的に刺さり、主に対人間を想定して採用。横並びアグロに対しては《戦慄衆の秘儀術師/Dreadhorde Arcanist》から除去を連打するのが勝ち筋だが、対処された時や弾けなかった展開でかなり苦戦を強いられる為、《戦慄衆の秘儀術師/Dreadhorde Arcanist》に依存しない盤面処理が必要と判断した。一度撃っておくことでドロー呪文で手を整える余裕が生まれたり、《瞬唱の魔道士/Snapcaster Mage》で使い回すとほぼ盤面を一掃でき、ゲームが一気に楽になる。《損魂魔道士/Soul-Scar Mage》とのアンチシナジーだけはいただけないが、目を瞑って採用するバリューがあると判断した。

2《ナヒリの戦争術/Nahiri's Warcrafting》

主に《黙示録、シェオルドレッド/Sheoldred, the Apocalypse》《縄張り持ちのカヴー/Territorial Kavu》などメインの除去で退かしにくい苦手なクリーチャーを弾く枠→【ゲームプラン②-2】
ドロー操作が多い為中盤にはアクセスしやすく、《瞬唱の魔道士/Snapcaster Mage》で使い回すこともできる為2枚の採用、これ以上は重ね引いた際にショートレンジプランを阻害すると判断。
他にも、プレインズウォーカーにも飛ぶことからWUコントロールにもサイドイン(但し、抜くカードに対して他に入れるカードが足りていれば入れない)、アドバンテージの取れる除去なので中速の盤面デッキには大抵サイドイン可能→【ゲームプラン①】
これも《損魂魔道士/Soul-Scar Mage》と相性が悪いが、対処したいカードは大抵タフネス5なのであまり気にならない。

1《呪文貫き/Spell Pierce》
2《魔術師の反駁/Wizard's Retort》

中低速コンボや《偉大なる統一者、アトラクサ/Atraxa, Grand Unifier》等、"通したら終わり"系のターゲットがある場合やコントロール・非クリーチャー主体の中低速デッキ等、除去の効果が薄い雑多なデッキにサイドイン→【ゲームプラン①④】
但し、メインプランはあくまで能動的に動いて軽いクロックでライフを積めることなので、あまり構えるプランは噛み合わず、枚数は3枚程度が限界の印象。先に軽いクロックを置いておき、中盤以降の致命的な脅威に的を絞って撃ちにいくイメージ。2〜3枚あれば中盤までに1枚は手に入り、《瞬唱の魔道士/Snapcaster Mage》で使い回すこともできる。

1《魂標ランタン/Soul-Guide Lantern》
2《未認可霊柩車/Unlicensed Hearse》

墓地対策枠。ケシスコンボとマルドゥリアニメイトの存在から合計で3枚必要と判断。基本的には《未認可霊柩車/Unlicensed Hearse》の方が強いが、重ね引きした時の弱さ、相手の墓地対策対策への耐性、ケシスコンボのブン周りには全追放でないと間に合わないことから、一枚《魂標ランタン/Soul-Guide Lantern》に散らした。なお、イゼットウィザードミラーは刺さるケースもあるが裏目も多い為基本サイドインしない。5cアトラクサに対しては《掘葬の儀式/Unburial Rites》から《偉大なる統一者、アトラクサ/Atraxa, Grand Unifier》を防ぐ為に数枚入れざるを得ない。→【ゲームプラン③】

1《鏡割りの寓話/Fable of the Mirror-Breaker》

消耗戦、アドバンテージ戦となるマッチアップでサイドインする追加の脅威。出てくるトークンや裏面もシャーマンなので《導師の導き/Mentor's Guidance》と噛み合うのも加点要素。但し、基本的にはゲームが長くなるカードなので《偉大なる統一者、アトラクサ/Atraxa, Grand Unifier》デッキにはサイドインせず、主にミラー・BRと雑多な低速デッキがターゲット→【ゲームプラン①②】

1《領事の旗艦、スカイソブリン/Skysovereign, Consul Flagship》

対ミラーのフィニッシャー。着地ターンに即、そして継続的に盤面に干渉でき、火力で対処されず、打点も高い為採用。狙ったわけではないがBRやPWを多用する中速盤面デッキにも有効。搭乗コストが重いのがネックだが一度殴れれば十分と判断。他の枠でミラーに対して決定的な差がつかない為、一枠だけ劇的な(可能性のある)カードを採用。

[DAY2]
DAY1敗退してしまったが、DAY2に向けてどのような戦略を考えていたか記載する。
【ゲームプラン①】に対応する必要がなくなる為、その枠をより上位メタデッキに標準を合わせたカードに変更する。

【メインボード】

DAY1と同じ
【サイドボード】
3→0《兄弟仲の終焉/Brotherhood's End》
2→0《溶鉄の衝撃/Molten Impact》
雑多なアーティファクトやクリーチャーデッキは淘汰されると考え廃止。

2→2《ナヒリの戦争術/Nahiri's Warcrafting》
純正BRは数を減らすが多少は居るであろうこと、《縄張り持ちのカヴー/Territorial Kavu》への対処が必要であろうことから変更なし。

1→0《呪文貫き/Spell Pierce》
2→2《魔術師の反駁/Wizard's Retort》
《呪文貫き/Spell Pierce》が強いデッキはBRや5cに淘汰されていると考え廃止。《魔術師の反駁/Wizard's Retort》はより範囲が広く、《偉大なる統一者、アトラクサ/Atraxa, Grand Unifier》に当てる役割がある為継続。

1→2《魂標ランタン/Soul-Guide Lantern》
2→1《未認可霊柩車/Unlicensed Hearse》
墓地対策は枚数を増やしすぎるとメインプランが弱くなる為数はキープ。内訳をよりケシスコンボに強い《魂標ランタン/Soul-Guide Lantern》にシフト。

1→0《鏡割りの寓話/Fable of the Mirror-Breaker》
1→1 《領事の旗艦、スカイソブリン/Skysovereign, Consul Flagship》
《鏡割りの寓話/Fable of the Mirror-Breaker》はBRが少なくなることによって有効な相手が減る為廃止。《領事の旗艦、スカイソブリン/Skysovereign, Consul Flagship》は重いので2枚目の採用はしない。

0→1《湧き出る源、ジェガンサ/Jegantha, the Wellspring》(相棒)

対ミラーで消耗戦後に着地させる目的で採用。相棒であればメイン構造に負担をかけない為、空いた枠を利用。

0→2《引き裂く流弾/Rending Volley》

対《隠された手、ケシス/Kethis, the Hidden Hand》専用サイド。墓地対策枠は3枚が限界だが火力枠であればもう少し取れると判断。

0→2《霊気の疾風/Aether Gust》

対5cニヴ/アトラクサ専用サイド。《ニヴ=ミゼット再誕/Niv-Mizzet Reborn》《偉大なる統一者、アトラクサ/Atraxa, Grand Unifier》本体だけでなく、そこにつながる《波の巨人、クルシアス/Crucias, Titan of the Waves》《鏡割りの寓話/Fable of the Mirror-Breaker》や、盤面が止まる要因である《縄張り持ちのカヴー/Territorial Kavu》《轟音のクラリオン/Deafening Clarion》全てに触れるユーティリティカード。カウンターと違い常に構えておく必要がないのも能動的に動きたいこのデッキにマッチしている。

0→2《帳簿裂き/Ledger Shredder》

ミラーマッチ及びその他打点が求められるマッチアップでも入れられる追加クロック。相手がサイドにとってくるであろう《魔女の復讐/Witch's Vengeance》や《轟音のクラリオン/Deafening Clarion》に強く、墓地に依存しないシステムであることがポイント。受けカードが多くなるサイドボード後において、ルーティングで必要な受け札を探しに行ける/浮いている受け札を変換できるのも強み。同型戦でも火力で対処しにくい飛行クロックかつ、相手のアクション数が多い為謀議しやすいことも利点と考えた。

■評価

対戦結果・戦績、大会のメタゲーム及び結果に基づき、前述のメタゲーム予測・要件定義・採択ゲームプラン・構築の狙いを評価する。また、詳細戦績を記載する。

●メタゲーム予測/要件定義 の評価

・メタゲーム
予測:雑多なデッキの中からイゼットウィザード/ラクドスアルカニスト/マルドゥリアニメイト/ケシスコンボ/5cニヴ・アトラクサがDAY1を生き残り、最終的にイゼットウィザード/ケシスコンボ/5cアトラクサの三つ巴になる
評価:○?
予選ウィークエンドの性質上正確なメタゲームはわからない為、自分の当たりとSNSで確認できた結果から推測する。
DAY1前半については予測通り様々なデッキがいたようである。自分でもイゼットフェニックス/ソプター/ハンマー/人間 と当たっている。
DAY1後半についてもマルドゥリアニメイト/5cニヴという当たりで、SNSで確認できたDAY2出場者も殆ど予測していたアーキタイプと合致していた。
DAY2についてはそもそも出場者があまり観測できず、4勝以上については1人しか見つからなかった。少ない情報から推測すると最大勢力はケシスコンボ、次いでイゼットウィザード・5cニヴのようである。
情報の信頼性は低いが、概ね予想と合致していたと思われる。予想とのズレは、
・ラクドスアルカニストがDAY1であまり勝ち残っていない
・5cはアトラクサよりもニヴの方が多そうだった
ことである。ラクドスアルカニストは雑多なデッキには強いが、主要デッキの中で最も強みが薄いので中盤で淘汰されてしまったのかもしれない。
5cニヴについては知見が少なくアトラクサに対する利点があまりわかっていないが、墓地対策が蔓延る中で《掘葬の儀式/Unburial Rites》プランがはまらず、素キャストが容易な《ニヴ=ミゼット再誕/Niv-Mizzet Reborn》に軍配が上がったのではないかと推測する。

・要件定義
【要件①】
(DAY1のみ)雑多なデッキが多いので、特定のマッチアップのみに強いデッキ・戦略は採用不可

【要件②】イゼットウィザードとBRxの根幹構造に不利なデッキ・戦略は採用不可

【要件③】墓地・墓地利用手段への干渉必須

【要件④】《偉大なる統一者、アトラクサ/Atraxa, Grand Unifier》を出させない/出されても無視できる/自分も出す戦略が必要

→評価:○
メタゲーム予測が概ねあっており、またそれに対する基本的な考え方も外していなかったので、要件定義も特に過不足なかったと考える。

●採択ゲームプラン/構築の狙い の評価

・ゲームプラン
想定した各ゲームプランについて、使用感に基づき対応する各要件を満たせていたかを評価する。

【ゲームプラン①】雑多な相手はデッキの地力で対応可能な為、苦手な相手・負け筋を絞ってサイドボードで対応する
→評価:○
前半は雑多なデッキにあたり、デッキの地力で勝った。用意したサイドプランはクリティカルに作用した。

【ゲームプラン②-1】ミラーは意識し過ぎて他マッチアップが下がることを危惧し無理のない範囲で寄せ、五分を許容する
→評価:- ミラーマッチ発生しなかったので評価不能

【ゲームプラン②-2】BRは基本構造で有利なので負け筋だけサイドボードで対応する
→評価:- BRとのマッチ発生しなかったので評価不能

【ゲームプラン③】メインボードでは有効な干渉手段がない為出来るだけショートレンジのゲームを仕掛け、サイド後にしっかり干渉手段を用意する
→評価:○
サイドカードがしっかり噛み合った。

【ゲームプラン④】《偉大なる統一者、アトラクサ/Atraxa, Grand Unifier》を着地させない為にショートレンジでの差し切りを狙う。サイド後は《偉大なる統一者、アトラクサ/Atraxa, Grand Unifier》/《偉大なる統一者、アトラクサ/Atraxa, Grand Unifier》の着地をサポートするカードを狙い打てる干渉手段を用意する
→評価:△
サイドボード後の干渉手段は強く作用した。ショートレンジの差し切り狙いは有効だが、相手の妨害もあり、上手くいくとは限らないと感じた。

総合して、用意した戦略はどれもうまく作用したと感じた。しかし、それでも上位メタとはデッキパワーの差が小さく、うまくいかない時もある為、もっと劇的なプランがあるのかもしれない。

・構築の狙い
採択した各カード・構築の狙いに対し、使用感に基づき対応する各ゲームプランを満たせていたかを評価する。

1《ドラゴンの怒りの媒介者/Dragon's Rage Channeler》
3《瞬唱の魔道士/Snapcaster Mage》
ショートレンジのゲームプランを強化する為、一般的なリストに対して《瞬唱の魔道士/Snapcaster Mage》を一枚《ドラゴンの怒りの媒介者/Dragon's Rage Channeler》に変更
→評価:○
1枚なので誤差範囲かもしれないが、1マナで展開することが求められることが多く、《ドラゴンの怒りの媒介者/Dragon's Rage Channeler》自体強く感じた。また、リソースカードが手で嵩張ることが多く、《瞬唱の魔道士/Snapcaster Mage》4は事故要因になりうると感じた。但し、これはマッチアップに左右される部分もあるので、使用続ければ結論は変わるかもしれない。

4《絞殺/Strangle》
2《無謀な怒り/Reckless Rage》
ミラーマッチの後手番を考え、一般的なリストに対して《無謀な怒り/Reckless Rage》1枚を《絞殺/Strangle》に変更
→評価:-
《絞殺/Strangle》を撃ちたいイゼットウィザードにも、《無謀な怒り/Reckless Rage》を撃ちたいケシスコンボにも当たらなかったので評価不能。当たった各デッキに対しては取り回しの良さでやや《絞殺/Strangle》が強かった程度。

3《兄弟仲の終焉/Brotherhood's End》
2《溶鉄の衝撃/Molten Impact》
《エスパーの歩哨/Esper Sentinel》から負けるパターンのあるアーティファクト系デッキ、白アグロに対して負け筋を潰す枠
→評価:○
ソプター、ハンマー、人間相手にそれぞれきっちり仕事をした。ただ、《兄弟仲の終焉/Brotherhood's End》3はやや過剰に感じた。

2《ナヒリの戦争術/Nahiri's Warcrafting》
→評価:○
BRには当たらなかったが、対5cニヴの《縄張り持ちのカヴー/Territorial Kavu》を対処するのに活躍した。《瞬唱の魔道士/Snapcaster Mage》で使い回す場面もあり、有効に働いた。

1《呪文貫き/Spell Pierce》
対コントロールや非クリーチャーコンボ用に採用。
→評価:×
有効な幅が少なく、折角サイドインしてもうまく使えることが少なかった。コントロール系には入れるが、結局ロングゲームになるので腐ることが多い。

2《魔術師の反駁/Wizard's Retort》
中速デッキ全般、特に《偉大なる統一者、アトラクサ/Atraxa, Grand Unifier》デッキに致命的なスペルを弾くために採用。
→評価:○
クロックを掛けた後蓋になる展開が多い。2枚までなら手で貯まることも少なく、必要に応じて《瞬唱の魔道士/Snapcaster Mage》で使いまわせるので不足と感じることもなかった。特に5cでは構えられると安心感がある。

1《魂標ランタン/Soul-Guide Lantern》
2《未認可霊柩車/Unlicensed Hearse》
マルドゥリアニメイト、ケシスコンボ用に採用した墓地対策。
→評価:○
3枚であれば手で嵩張ることもないし中盤までに引き込めると感じた。カウンターと合わせて枚数は適正。

1《鏡割りの寓話/Fable of the Mirror-Breaker》
ミラーマッチや対コントロール、ミッドレンジの追加の脅威として採用。
→評価:○
後半手に無駄牌が溜まった際にルーティングが強かった。特筆すべき点もないが、ユーティリティカードなので予想通り強かった。

1《領事の旗艦、スカイソブリン/Skysovereign, Consul Flagship》
対ミラー用フィニッシャー。
→評価:- ミラーマッチなかった為評価不能。

●詳細戦績

本番の詳細な戦績及びゲーム内容を記載する。

【R1 対イゼットフェニックス P WLW】
・G1 W
先手でダブルマリガンだったが相手の動きが鈍く、《帳簿裂き/Ledger Shredder》を除去して殴り勝ち。
・G2 L
後手7枚キープ。初手からクリーチャーしか引かず、他のスペルを引き込む前に《弧光のフェニックス/Arclight Phoenix》《アゴナスの雄牛/Ox of Agonas》が墓地から走ってきて負け。

・G3 W
先手7枚キープ。相手もいい動きだったが、《魂標ランタン/Soul-Guide Lantern》が睨みを効かせている間にアドバンテージがついて勝ち。
・雑感
イゼットフェニックスも粘り強いデッキだが、墓地対策の刺さりやすさの差でやや部がある印象。

【R2 対WUソプター P WW】
・G1 W
先手7枚キープ。相手の《魅知子の真理の支配/Michiko's Reign of Truth》×2の攻勢を1マナ火力で捌きつつ切り返してテンポ勝ち。
・G2 W
後手7枚キープ。《対称の賢者/Symmetry Sage》《ドラゴンの怒りの媒介者/Dragon's Rage Channeler》でプレッシャーを掛け盤面を固めさせたところに《兄弟仲の終焉/Brotherhood's End》が突き刺さって勝ち。
・雑感
《改良式鋳造所/Retrofitter Foundry》が触りにくいため早いターンにシステムが構築されると辛いマッチアップだがそれ以外は全て有利。《兄弟仲の終焉/Brotherhood's End》がしっかり取れていれば基本的には負けないと感じた。

【R3 対Wugハンマー D WW】
・G1 W
後手7枚キープ。相手1ランドキープで土地引けずそのまま勝ち。
・G2 W
後手7枚キープ。1ターン目に《改良式鋳造所/Retrofitter Foundry》+《羽ばたき飛行機械/Ornithopter》されるも相手1ランドで止まり勝ち。

・雑感
強い動きをされると対処できないが、やはり根本的な安定性で差が出る印象。さすがにこのマッチは相手のキープ判断が攻めすぎだったとは思うが…。

【R4 対WB人間 D WW】
・G1 W
後手6枚キープ。相手に干渉手段が無く、《戦慄衆の秘儀術師/Dreadhorde Arcanist》が除去を使いまわし続けて盤面空にして勝ち。
・G2 W
後手7枚キープ。相手の土地が2で止まりアクション数が伸び悩んでいる内に《戦慄衆の秘儀術師/Dreadhorde Arcanist》が定着して勝ち。
・雑感
《戦慄衆の秘儀術師/Dreadhorde Arcanist》を引けて定着すると一気にワンサイドゲームになる。また、デッキの安定性にも1段以上の差があると感じるため、そこま不利とは感じない。ただ、人間側がちゃんと回った時はヘイトベアにかなり苦しめられる、二面性のあるマッチアップだと感じる。

【R5 対URコントロール D LWL】
・G1 L
後手5枚キープ。マリガン後の手札にドローがかみ合わず、相手の《ストーム・ジャイアントの聖堂/Hall of Storm Giants》がアクティブになるターンまで盤面構築できず負け。
・G2 W
先手7枚キープ。相手の動きが悪く、《氷の中の存在/Thing in the Ice》以外に大したアクションが無く負け。

・G3 L
先手7枚キープ。こちらの動きは悪くなかったが、相手の《氷の中の存在/Thing in the Ice》に触れるカードを引けずそのまま変身して負け。
・雑感
メタゲーム上で認知していなかったマッチアップ。おそらく、BR系以外の上位メタ(イゼットウィザード+5c+ケシスコンボ)を強く意識したデッキと思われる。若干ついていない部分はあったが、デッキ構造の時点で相性差あり、相手の狙いがきれいにはまった結果と言える。

【R6 対マルドゥ(WBR)リアニメイト P WW】
・G1 W
先手7枚キープ。除去が多い初手に相手のハンデスが噛み合い、序盤は能動的なアクションが取れなかったが、相手のアクションも弱く後から引いた《表現の反復/Expressive Iteration》を起点に展開に差が付き勝ち。
・G2 W
後手7枚キープ。初手の《未認可霊柩車/Unlicensed Hearse》をハンデスで落とされた後はお互いアクションの薄いターンが続いたが、ドロースペルで引き込んだ《魂標ランタン/Soul-Guide Lantern》《魔術師の反駁/Wizard's Retort》が相手の《掘葬の儀式/Unburial Rites》《偉大なる統一者、アトラクサ/Atraxa, Grand Unifier》に間に合い勝ち。
・雑感
ハンデスで安全確認されるのが厄介だが、リアニメイト以外のアクションがあまりインパクト無く、ゆっくり手を整えられる点で5cの出してくる《偉大なる統一者、アトラクサ/Atraxa, Grand Unifier》と決定的な差を感じた。リアニメイト以外のプランが弱いので墓地対策が劇的に効くのもマイナス要素。墓地対策さえ十分な枚数とれていれば怖くない相手に感じる。

【R7 対5cニヴ D LWL】
・G1 L
後手5枚キープ。ハンデスも噛み合い能動的なアクション取れないターンが続いたが《表現の反復/Expressive Iteration》を起点にリソース取り返し、ダメージレースに。《対称の賢者/Symmetry Sage》×2の状態であと3点まで追い詰めたが土地3連続トップしている間に《ニヴ=ミゼット再誕/Niv-Mizzet Reborn》着地→《稲妻のらせん/Lightning Helix》引き込まれて負け。
・G2 W
先手7枚キープ。最序盤の展開は《轟音のクラリオン/Deafening Clarion》で流されたものの、《導師の導き/Mentor's Guidance》で引き込んだクロックを再展開、壁として出てきた《縄張り持ちのカヴー/Territorial Kavu》を《ナヒリの戦争術/Nahiri's Warcrafting》で処理して殴り勝ち。
・G3 L
後手7枚キープ。好調な展開であと1点まで詰めるも、土地を連続トップしている間に《波の巨人、クルシアス/Crucias, Titan of the Waves》《縄張り持ちのカヴー/Territorial Kavu》が定着して負け。序盤の《表現の反復/Expressive Iteration》のめくれがかみ合わず、《轟音のクラリオン/Deafening Clarion》のターンに横並べをせざるを得なかったところが敗因。
・雑感
相手のデッキパワーが高かったため、下振れしたところをしっかり咎められた。あと1枚・1点なので普通の周りをできていれば不利ということはないと考えるが、《轟音のクラリオン/Deafening Clarion》への意識が低かったのは確か。5cはアトラクサが優勢と予測しており、一般的に5cアトラクサは《轟音のクラリオン/Deafening Clarion》がサイドに2枚程度しかとられていない為警戒しきれていなかった。

全体を通して、デッキパワーが高く雑多なデッキには地力の部分で勝てる一方、上位メタデッキには噛み合い・ブレで負けてしまうという予想通りの結果だった。苦手なデッキ・強いデッキでのマッチアップに下振れが重なってしまったのは少し不運だったとは思うが、感触的には順当と感じた。

■総評・まとめ

●デッキについて
デッキの感触はすこぶるよく、早いクロックとテンポのいい干渉手段を持ちながら長期戦への対応ができ、ゲームレンジをコントロールできるという強いデッキの条件を見たいしていると感じた。
半面、なまじ器用で長期戦ができるばかりに、特にサイドボード後にデッキを弱くしてしまうことが多く、調整中に何度も失敗をした。デッキのバランスはかなり繊細で、あくまでクロックをかけているからこその強さだと気づくまではなかなか勝たなかった。
例えば、
・一見弱そうな《損魂魔道士/Soul-Scar Mage》を減らすと、共連れで《無謀な怒り/Reckless Rage》《魔術師の稲妻/Wizard's Lightning》《導師の導き/Mentor's Guidance》も弱くなってしまう
・役割の薄い《考慮/Consider》を抜いてリアクションスペルを増やすと、ほぼすべてのクリーチャーが能動的に動けなくなってしまう
・除去の効果が薄い相手だからと言って《絞殺/Strangle》《無謀な怒り/Reckless Rage》をすべて抜くと《戦慄衆の秘儀術師/Dreadhorde Arcanist》がほとんどただの2/1/3バニラになってしまう
・長期戦になる相手だからと言って打点要員や火力を減らすと、相手に時間的猶予を与えてしまい《導師の導き/Mentor's Guidance》《表現の反復/Expressive Iteration》のアドバンテージが活きない
等である。過剰サイドでデッキの大枠を崩してしまうと上記が連鎖的に起きてデッキのランクが2段ほど落ちてしまう。
そこさえ気を付けていれば、サイド後も強く戦えると感じた。しばらくヒストリックに取り組むことはないが、<指輪物語:中つ国の伝承>で《
アノールの焔/Flame of Anor》という大幅な強化もあるので、今後も折を見て使っていきたい。

●取り組みについて
ヒストリックは直近で大きな競技大会が無く、強いメタデッキの構成をトーナメント結果に基づいて調べる方法が無かったため、ランク戦で使用されたリストを掲載しているサイトを情報源として利用したが、これは大きな失敗であった。リストの強さが保証されておらず、実際ほとんどのリストに欠陥がありアーキタイプの強さを正しく評価することを妨げてしまった(5cニヴの強さを見落とした原因はコレ)。情報収集は難しいが、このようなサイト参考にするにしても判断基準にしてはならないと感じた。アリーナ専用フォーマットについては、有料サービスを利用するか、ラダーでの対戦の感触を信じて考えるしかないのかもしれない。
また、今回は本記事のメタゲーム予想や各デッキの強み・弱みを事前にある程度書き出すことで自分の考えをブラッシュアップする方法をとった。これは多くの面で精度向上に役立ったので今後も続けていきたい。ただ、やはり情報収集には時間がかかり、文章を作るのもそれなりに労力があるので、時間的な制約とどう向き合うかが課題。環境認識・分析までについては、トーナメント本番前に投稿できれば面白いかもしれない(その場合体裁・クオリティはかなり下げることになるが)。

以上

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