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「愛の伝説」〜ミシェル・ポルナレフの記憶

2歳年上の姉の影響で中学生になる頃には洋楽(欧米のポップ音楽)ばかり聴いていた。当時は1970年代前半、好きだったのはエルトン・ジョン(現役で活躍中だが、いま思えば当時が全盛)、ジョン・レノンやポール・マッカートニー。残念だがビートルズは解散したばかりでリアルタイムでは知らなかった。

AMラジオやテレビで音楽番組を視聴し、気に入った曲をFMでエアチェック(死語?)してカセットテープに録音し、繰り返し聴いていた。英語は聴き取れず、歌詞の意味はわからず、純粋に音として聴いていた。ジョン・レノンの「イマジン」も当時流行っていたが、曲のすごさを知るのはずっと後年のことだ。
当時自分の周りでは吉田拓郎、井上陽水、かぐや姫といったフォーク音楽の面々の人気がすごく、友人たちの何人かはギターを買ってもらいコピーに励んでいた。そんな片田舎の中学生の中で私の音楽の趣味は異質だったようだ。

当時の人気歌手にミシェル・ポルナレフというフランス人がいた。大きなサングラスで顔の2/3を隠し、ちりちりの金髪カーリーヘアに上半身裸という珍妙なファッション。代表曲は「シェリーにくちづけ」。日本でも大ヒットし、1998年ワールドカップサッカーフランス大会日本代表の応援ソングになり、CMでも耳にしている方も多いはず。
他にも「愛の休日」、「愛の願い」などメロディーの美しい曲をたくさん作っている。「愛の・・」で始まる安っぽい邦題の曲が多いが、それは本人のせいではない。40年以上たった今でも十分素晴らしく聴き応えのある曲ばかりだ。

ポルナレフの数ある名曲の中で一番好きだったのが「愛の伝説」。これまた仰々しい邦題だが原題は「I love you because」。他のほとんどの曲タイトルはフランス語だがこれは英語で、アメリカ市場を意識したものらしい。
生ギターのイントロから静かに始まり「I love you because ・・・」というフレーズが何度もくり返され、盛り上がっていく。I love you becauseのあとはフランス語なので何を言ってるのかさっぱりわからないが、極上のバラードで私の人生好きな曲ベスト10に入る曲だ。
しかしこの曲は本人の米国進出の失敗の時期と重なり、それほどのヒットにはならなかった。版権の関係からか、2004年に日本で発売されたポルナレフのベスト盤にこの曲は含まれず、輸入盤CDを探してもみつからなかった。2005年日本でダウンロード購入中心のiTunesストアが始まってもこの曲は含まれず入手できなかった。

その後アマゾンのホームページでポルナレフの名前を見つけ、検索したら長年探していた海外CD中の「愛の伝説」にたどり着いた。30年以上会えなかった昔の彼女を見つけたようなうれしさで、すぐに注文した。最初からアマゾンで検索すればもっと早く見つかったのだろうが、その頃はアマゾンで本しか買ったことがなく思い浮かばなかった。愚かだった。
CDはアマゾンにしては長くかかり、3週間ほどして届いた。はるばる海を渡って来たのだろう。すぐにMacパソコンのiTunesからiPodに取り込み、何度も聴いた。今では音楽配信で簡単に聴けるのだが。

「キミが好きだ。なぜなら・・・」・・・に入る言葉はいったい何だろう。屁理屈や誇張、ウソ八百の美辞麗句が並べられているのだろう。恋の絶頂期らしいし。CDに歌詞カードはなく、おまけにフランス語なのでお手上げだ。美しい音楽を浴び、想像をふくらませてはニヤついてる自分に気づき、自己嫌悪に陥るのである。

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