見出し画像

「アトミックハートとかいうパズルゲーム」という評価が好き

どんなゲーム?

1950年代のソ連を舞台にしたゲームだが、史実よりだいぶ技術発展が進んでおり、ソ連はロボットに溢れる理想郷となっている。しかしある時、何者かの手によって制御の効かなくなったロボット達が突然人々を襲いだし……。
理想の共産主義国家でイカれたロボットたちを破壊するFPS作品。とにかくアートワークが特徴的で、音響や演出含めた美術は、気持ち悪くて素晴らしい。

筆者はFallout好きにオススメ!の文句に惹かれたが、世界観に共通項はあるものの、期待していたようなオープンワールドRPGではなく、FPSの探索アクションといった手触りで、バイオハザードに近いのでは?と思った。
セミオープンワールド的なマップもあるが、FTなし・マーカーなし・監視カメラの処理が面倒…などの理由から探索には向かない(一応車移動ができるし、探索前提の実績もある)。
有識者の意見ではバイオショックに近いらしいが未プレイなので断言はできない。

適度に散策しつつ25時間程度でストーリーを終えた。RPGを期待すると物足りないが、ゲームジャンルを念頭に置くと適切なボリュームだ。


ここがオススメ!

・他では味わえない特徴的なビジュアル
→生体強化周りのポリマーの設定はすべてが薄気味悪く、登場するロボットたちも「カッコイイ!」というよりは不気味なデザインをしている。共産主義が下地にある各種テキストやプロパガンダもいい。セーブ地帯で見ることができるアニメーションもバリエーション豊富、死亡アニメも敵ごとどころか敵の攻撃ごとにあって妥協がない。

・パズルが好きなら楽しめる
→鍵のロック解除だけで5種類ある。細かいものからフロア全体を巻き込んだものまで多様。特に武器の設計図が手に入る「試験場」は、通常ダンジョンのパズルを強化した構成になっており「俺たちが作りたかったのはこういうゲームだ!!!」という熱を感じて好感触

・成長要素はかなり親切
→スキルツリーを伸ばしたりパーツを使って武器改造を行っていくが、ノーコストで振り直しができる。とりあえずいろいろ試せるので非常に良い。ボス戦で詰まったらスキルを振りなおして突破…みたいな試行錯誤が出来る。

・武器攻撃+ショック攻撃+2種のサブスキルを使いこなす戦闘が楽しい
→貧乏性ゆえ弾薬の代わりにエネルギーを消費するエレクトロという銃を愛用していたが、人気がないことを後から知った。めちゃくちゃ弾は余るし作るのも容易なので好きな戦闘スタイルでやればいいと思う。
2つ装備できるサブスキルがいずれも個性的で、再チャージも早いので、これにより戦闘スタイルが大きく変わる。広範囲を持ち上げて叩き落すことによりザコを一掃でき、ボス相手にも隙を作れるマステレキネシスが好き。

・最高にイカす武器、ズヴェズドーチカ
→近接武器は「振りが早いが威力が控えめ」「威力は高いが振りが遅め」で棲み分けされており、ズヴェズドーチカは後者に該当する。ちなみにグリップを改良すれば振りの遅さは気にならない。

まず見た目がイカす

更に素晴らしいことにこの武器、スペシャルアタックでブレードを飛ばすことができる。近接なのに遠距離の相手を攻撃することができる。ホーミングが優秀なのでエイムもいらない。本作のボスは動きが素早く銃を当てるのが難しいが、ズヴェズドーチカなら手軽に遠距離からダメージを与えられる。
みんなもズヴェズドーチカでソ連の大地を粉々にしよう!

試してないが、実はほかの武器もめちゃ強いのかもしれない。

・人は死に絶えたが寂しくはない
民間人は早々にロボットに襲われ死に絶えたため、NPCとの会話は期待できない…と思いきや、導入されているポリマーが生前の記憶を再生している、喋る死体がそこらに存在する。
設定の気持ち悪さといい、死んでいる人間特有の奇妙な応答といい、本作の特徴の一つだろう。
また、主人公・主人公の相棒の手袋デバイスともによく喋る。エロい自販機もいる。そのため、道中を寂しく感じることはない


・ロボセクシュアルは一般性癖
パッケージデザインを見て「なんかセクシーなロボットがいるな…」と感じたことだろう。この通称双子と呼ばれるノーフェイスのロボットは、本作のセックスシンボルとして確固たる地位を築いており、作中ではフェティッシュなムービーが散りばめられている。設定上、人間の男性がロボットに対して性的興奮を抱くことは用語とともに認知されている。
その他前述のエロい発言を繰り返す自販機に、ダッチワイフのような質感のテレシコヴァなどロボセクシュアルへのサポートは強固だ。安心して臨んでほしい


ここがオススメできない!

・パズルが嫌いならやめたほうがいい
→施設をダイナミックに活かしたパズルはともかく、ピッキングのミニゲームなど細々したものはわざわざこういうゲームでやりたくないと思うのが一般的だろう

・ジャンプアクションがひどい
→主人公のジャンプ力は未就学児並みで、ちょっとした段差も超えることができない。ハマり防止のための措置だと思うのだが、その割に簡単に地形にハマって詰む。
一方でアスレチック能力は高いのだが、こちらもこちらでカメラや操作性に難が残る。
書いてて「この不満は今Fallout76を遊んでいる影響もあるかもな…」と思った。有袋類に変異せよ

・主人公は常にイライラしている
→上記のパズルやアスレチックに加え、常にイライラしている主人公はストレスになりうる。プレイヤー以上にギミックにキレており、すぐ声を荒げる。「焦げカス」という口癖も寒く、見た目にそぐわぬ幼稚な印象を受ける

・セーブが不自由
セーブポイントは頻繁にあるものの、好きな時にセーブすることは出来ない

・マップ機能が酷く探索が厳しい
→(PS5環境)マーカーとFTがないため、シナリオ外の目的地を目指すのに何度も地図を見ることになるが、レスポンスが悪く主人公の位置が表示されないことがあり、地図として機能しない。
オープンフィールドはあるものの、前述のジャンプ能力の低さと合わせて探索は楽しくない

・屋外マップでの戦闘は厳しい
→監視カメラに見つかったが最後、ロボットを修復するロボットの増援を呼ばれ続け、収拾がつかない事態になる。
カメラは音が大きく発見自体は容易だが(監視カメラの意味をなしてない!)、カメラ自体がロボであるためいつの間にか修復されたり、空を飛んでいる奴がいたり、気を付けているつもりでもすぐ通報される。
幸い追跡は甘いため目的地まで駆け抜けて進行させることは可能だが、屋外戦闘を真面目にやっている人はいるんだろうか?と思うくらい屋外をスニーキングして戦闘するのは厳しい。
(そもそもサプレッサーないよスニークは少佐の性分に合わないだろ?みたいなアドバイスがある。)

・ボス戦は苦しい
ほとんどのボスが動きが激しく、FPSカメラで動きをとらえるのが難しい。そのうえロボットが多いため、距離を取れても遠隔武器で的確に攻めてくる。近接ぶんぶんが手軽に強いので面白味がないかもしれない


さて、現代市場にはゲームが溢れており、社会人が遊べるゲームは限られている。そんな中で、気になっているが購入を迷っている人の後押しになれればいいと思い書いた。イカす武器でロボットを殴り、クラシック音楽を聴きながらミュータントたちを地面に叩きつけてたいそこの同志諸君、アトミックハートしようぜ!


(まあこのタイトル気になっている人はすでに買っていると思うが…)



以下既プレイ者向けのネタバレを含む雑感







アトミック・真実

「主人公と双子の片割れとかいう謎パッケージ」「ボスの秘書ロボットに執心を見せる主人公」「焦げカスとかいうよくわからない口癖」「常にイライラしている主人公」
プレイ中ネタにしていたり、嫌だな…と思っていたことがすべて伏線だった構成にやられた。

「そんな設定凝らなくていいよ!」という部分にこだわりのある作劇が好きなので、外見ロリで可愛い~と思っていたヒロインの容姿が虐待による成長阻害の成果だった、と明かされた瞬間のような、脳を殴られるような衝撃があって非常によかった。
ここが好きだったので、薄々バッドエンドを覚悟しながらもサチノフに勝っても負けても100点だな…と思っていたところで最後に明かされたチャー・ルズ真実に唖然とするほかなく、評価に困っている。

というか低得点にせざるを得ないので、ゲームに採点するとかバカな真似はやめていいところの話だけしましょうよ~と食い下がっている。

汝の手袋を愛せよ

クリア後に見て笑った

プレイ中チャー・ルズのことを信用しきれずにおり、こいつが時々サチノフを疑うように誘導するのは、主人公の味方だからなのか?サチノフのしもべとして主人公の思想チェックをしているのか?と慎重に接していた。
終盤で正体が判明(このフェイントでチャー・ルズの謎がすべて解けたと感じてしまった)、疑問に思っていた部分が氷解し、改めて真の仲間としてラスボスに挑む王道展開……だと思っていたので厳しい。

ただ、人間でなくなったがゆえにサチノフの「世界を支配したい」よりも更に破滅的な目的を抱えることになったという設定や、ラストシーン(ノイズ入りの映像)の見せ方は好き。

何が嫌って、直前まで「チャー・ルズはザカロフだったのか!じゃあ2周目はザカロフ周りのログに注目しよう!」と思っていたのが、2周目はいいか…になってしまったところ。
なまじチャー・ルズを好きだっただけに、グローブとのやりとりで白けてしまうと思う。逆にチャー・ルズの言動を「答え合わせ」として楽しめるかもしれないが。

別エンディングでは「チャー・ルズの行動に矛盾を感じてグローブを破壊する主人公」が見られるらしく、ストーリーを注視していれば「突拍子もないエンディング」ではなかったのかもしれない。(灯台~分岐前のセーブデータが消されたので回収は気が向いたらやります)
ペトロフの「農作業用ロボに武装装備がなされているのがそもそもおかしいだろ!」みたいな指摘にたしかに…と納得したり、ストーリーは変に作り込まれていると感じた。

アトミックハートとかいうパズルゲーム

筆者はこの手のゲームでやらされるパズルゲームが超好きなので楽しめたが、万人受けする要素ではなく、実際批判されている。
そこらへんは本当にプレイヤーの好みで、筆者もカーチェイスを強要されると100%愚痴を言うので、仕方がないと思う。

本編パズルの複合・強化版である試験場を見る限り、制作側が真に力を入れたのはこっちでは?と疑ってしまう。本当は本編でこれくらいやりたかったけどパズルゲームが苦手な人もいるから遠慮しました…という奥ゆかしさすら感じる。それほどまでにこのゲームではパズルを強要される。
パズルを解くor戦闘をする(パズルを解くとボス戦が楽になる?)など攻略方法を選べれば、もう少し万人受けしたんじゃないかと思う。

バレリーナのパズル、ビジュアルや世界観との噛み合いも非常に良かった。

磁力操作と部屋回転も好きだが、主人公のアスレチック能力の酷さがストレスになってる。

色合わせと、ビームを揃えるやつは理詰めで解けるので楽しかった。色合わせは挑戦するたびに出題が変わるので、解く直前でやり直すと無限に楽しめる!ただフロアギミックと違ってこちらは「アトミックハートである意味がない」ので、興味がない人にとって延々やらされるのはキツイだろう。

そんな筆者でも脳が焼き切れるかと思ったのが、半球を傾けることによりボールを転がす迷路で、操作が難しい!微調整が難しい!ジオラマが邪魔で回転しないと全貌が見えない!救済措置がなくゴール手前で手が滑ってはるか遠方に飛ぶ!そもそも視点が斜め上からで元から傾斜があり傾斜のコントロールが困難!とまあ酷い設計だった。
迷路はマップのジオラマになっておりビジュアル的には最高なんだけど…。

展示場・劇場・病院…

メインで向かう施設が、いずれも探索しがいのある施設で楽しかった。足を止めて舞台を見ることで、楽しく世界観に入りこめた。特に展示場はポリマー化されたクジラの模型や宇宙空間の投影など、見ていて楽しいものが多い。散々戦ってきたロボットやポリマーに関する展示が見れるのが興味深い。

ラスト、サチノフの執務室に向かうまでの通路にもロボットの展示があり、最初こそ「もう散々読んだからいいよ…」と思っていたが、内容がすべて軍事用、殺人性能に書き換わっていることに気付きテンションが上がった。時間単位で何人殺せるみたいなことが書かれており、非常にクソアホでいい。
(クロックタワー3の推定懲役がバカゲー要素扱いされてたみたいな味わいを感じた)

全体的にビジュアルは最高なのだが、主人公の幻覚パートだけは安っぽさを感じた。あのキモイ猫は何?(人間含む実験動物の状態を記録する研究ログでなぜか1匹紛れ込んだ猫だけが手厚く保護されていたのと関係があるのか?)
よく分からなかったので考察を参照したい。

最強ボス:ヘッジー

記憶する限り(大型ミュータントとかいうボスと呼んでいいのかわからない存在を除く)最初のボス…なのだが……。

巨体からは想像できない高速移動の隙のなさもさることながら、ダッシュアクションでも負ける吸い込みからの衝撃波がいやらしく、避ける余地がない。
また基本フェーズが無敵でそもそも攻撃チャンスが限られているボスもこいつだけ。他のボスはゴリ押しが効くので「そもそもダメージを与えられない」のは異質。武器改造もスキルも定まっていない最序盤に出てくるため工夫の余地も薄い。

突破後に攻略を見たところ「柱にぶつけよう!」みたいなアドバイスが書かれていたが、動画を見てほしい。相手の行動を防げるような柱があるか?
拓けたステージで全くその発想に至らなかったし、本当にそういう解放なら誘導が不十分だと感じた。
双子よりキツい、ぶっちぎり最強のボスだった。


共産主義という理想

………

Falloutですら濁せたのに、ファットマンはアメリカすぎる!!
と思ったらファットボーイだったのでセーフ…いやリトルボーイをビッグボーイに変えてセーフ!してるFallout仕草だろ!!!!
アトミックハート計画、原子力を核とするアメリカへの対抗カードとして描かれているが このネーミングはどういう意図なのか。

筆者の拙い政治認識では「共産主義は現実に成立し得ない理想国家で、現実的なレベルで実現された共産主義が社会主義」と捉えている。
※1950年代は社会主義と共産主義がキッチリ別個のものとして認識されていた時代らしいがもうよく分からん

ポリマーによる能力の平等化は、共産主義の理想を実現させる革新的ツールだったのだろう。
実際にはポリマー化の進んだ未来はサチノフの独裁社会※であり、チャー・ルズが勝利する未来はもはや国家の体をなしてはいない。どちらも国民は平等だが、絶対的なトップがいる構造からは逃れられない。

ここら辺はFalloutにおいて民主主義というかリバティプライムが皮肉的たっぷりに描かれているような、「理想の共産主義」に対する思考実験なのだろうと感じた。

※サチノフ、独裁したいわけじゃなかった!?
最強の共産主義国家の理想を純粋に追い求めていただけなのか…?確かに権力や富への固執は感じないが、全ての人間がある一人の「息子」になるのは どれだけその親がすべての息子を愛していようとそれは独裁なのでは…と親子の権力勾配に想いを馳せてしまう
食えない野郎じゃなくて本気で共産主義の理想と向き合っていたのだとしたら、各種スピーチは紛れもない本心からくるものだとしたら 凄い男だな…

急ぎこちらのエンディングも回収した

サチノフのこと全然分かってなかったかもしれない…。

バグ報告とか

シャトルランをはじめたベルヤッシュくん

文字デカバグ

メニュー開くたび解説文の文字がデカくなる意味不明のバグ。ロードで直ったけどこれと同時にマップ暗転が発生してて詰んだかと思った。

これはバグ?演出?

エンディング直前、双子に手を伸ばすシーンでUIが復活して、ここから戦闘すんの!?と構えたが、そんなことはなかった

何で…?

筆者が動物の死体探さなかったら嘘だろ、と思って攻略を解禁し獣の親友の取得をしようとしたが、一頭目に話しかけた瞬間トロフィー取得になった。
難易度が段違いとはいえネクロマンサーが0.4%なのを加味するとこの実績もフラグがバグってるんじゃないかな…

パズルが好きなので試験場制覇まで遊ぼうと思うが、試験場8の鍵開けに必要なダンデライオンを破壊してしまい挑戦権を失っていたのでダメかもしれない。ロードで直ってるといいな…。

そんな感じ。
アトミックハートに火をつけて

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?