【書き起こし】荻上チキ・Session上脇教授へのインタビュー
【解説】裏金事件で安倍派の池田議員を起訴/国会が異例の開幕(上脇博之)
2024年1月26日放送の荻上チキ・Sessionで、裏金事件を刑事告発した上脇教授へのインタビューがありました。
裏金事件で安倍派の池田議員を起訴
(南部広美)自民党の派閥の政治資金パーティーの裏金事件をめぐり、東京地検特捜部は政治資金規正法違反の罪で安倍派の池田佳隆衆議院議員と政策秘書を起訴しました。
特捜部などによりますと、池田被告らはおととしまでの5年間で安倍派から総額およそ4800万円のキックバックを受けたにもかかわらず、政治資金収支報告書に記載しなかった罪に問われています。
池田被告の事務所が特捜部の家宅捜索を受ける前、事務所のパソコンがドライバーで破壊された疑いがあり、関係者によりますと、池田被告が秘書に指示して証拠隠滅を図った可能性があるということです。
一方、裏金事件で東京地検特捜部は、神戸学院大学の上脇博之教授に刑事告発を受けていた安倍派幹部議員7人や森元総理を嫌疑なしとして今日付で不起訴処分としました。
通常国会が異例の開幕。来週月曜には集中審議
(南部広美)今日午後1時から通常国会が開幕しました。会期は6月23日までの150日間、能登半島地震への対応や、賃上げをはじめとした経済対策などが議論されるほか、自民党の派閥の裏金事件を受けた政治と金の問題が最大の焦点となります。
来週火曜の30日に行われる、岸田総理の施政方針演説に先立ち、前日の月曜には政治とカネをテーマに、衆参の予算委員会で集中審議が開かれる予定で、通常国会は極めて異例の幕開けとなりました。
また、政治とカネ問題を受けて、谷垣元総裁を中心に結成された谷垣グループは、今日幹部会合を開き、政治団体を解散することを正式に決定。谷垣元総裁らは2012年にグループを結成し、岸田派とも関係が深かったということです。
(荻上チキ)それでは元自民池田議員政治資金規正法違反の罪で起訴、これらのニュースについて政治と金の問題について長年取り組んでこられた神戸学院大学教授の上脇博之さんに伺います。上脇さんこんばんは。
(上脇博之)こんばんは。
(荻上チキ)お願いします。
(南部広美)お願いいたします。
(上脇博之)よろしくお願いします。
(荻上チキ)さて裏金事件について長年調査をされて、東京地検にも刑事告発をなさっていますが、上脇さん、この検察の捜査の動きや各党の動きはどう見られてますか。
(上脇博之)中途半端といいますかね、本丸というか主犯をですね、立件してないと。これはですね、やっぱり最大の問題だと思いますね。
(荻上チキ)どういった点が主な焦点、主な主犯だというふうにお感じでしょうか。
(上脇博之)これね、裏金を作ってそれをさらに所属の議員さんにキックバックという形で寄付したと言われてるんですが、これをね、事務方の会計責任者の方だけで判断してやれるはずがないんですよね。
どう考えても派閥の役員の方々、特に2022年については安倍派については、安倍会長が亡くなった後にですね、一旦はもうキックバックやめるという判断をしたにも関わらず再び再開してるわけですよね。この判断を会計責任者が独断でできるはずがないですよね。
となると、やはり安倍派の当時世話人だった7人の方々中心に再開を決めたはずなのに、これをですねあえて立件しないというのは、忖度をして立件しないのか、家宅捜索したけれども証拠がない、だけど役員の方々の携帯電話とか押収してないですから、捜査を尽くしていないかどちらかだと思うんですよね。
(荻上チキ)捜査を尽くしていないとなると、やはり調査として不十分だったのではないかという疑義も残りますし、一方で例えば池田議員などは起訴されるなど線引きをめぐっても疑問が浮かびます。この点いかがでしょうか。
(上脇博之)池田議員については独自に派閥の方の訂正がなされる前に訂正をしたということで私が今年1月の9日付で刑事告発をしたんですね。これは受け取った側なんですよね。要するにキックバックを決めた側ではなく受け取った側ですから、これを立件すること自体はいいんですけれども、どうもですね、そこで止まっちゃってると。幹部の方はどうなったんですか、ってやっぱり疑問ですよね。
(荻上チキ)そうこうしているうちに自民党では刷新本部というものを作って各派閥の解散というのがアピールされています。こうした動きについてはいかがでしょうか。
(上脇博之)刷新になってないんですよ。というのは、もともとやっぱり裏金問題が出てきた去年の12月に、本来だったら派閥が記者会見をして説明をすると、で記者の質問にちゃんと答えると。さらに裏金を作った人たち、幹部さらには受け取った側、これは刑事責任とは別に政治責任として議員辞職しないとダメなんですよ。
そういうのがあって残った人たちで刷新本部を作って、本当に自民党としては出直しです、って言うんだったらまだ分かるんだけど、裏金を受け取った人たちや派閥の長の人たちが刷新本部に入っているわけでしょ。
(荻上チキ)ずらりと。
(上脇博之)刷新されないといけない人たちが入っているわけだから。これどう考えても刷新できるはずがないですよね。
(荻上チキ)そうですね。実際に出されたペーパーなどを見ても何か派閥の解消であるとかそれからいろんなルール、ガバナンス守りますと書かれているんですが、法改正であるとかルールをどうしますということが書かれていません。
(荻上チキ)通常国会が始まりますが、論点それから法改正などはどこに注目されますか。
(上脇博之)僕はどう考えてもこれ、政治資金パーティーで裏金が作られたわけですから、もう政治資金パーティーをなくさないとダメなんですよ。禁止しないとダメなんですよ。で、なんかね、透明度を上げたら良くなるように勘違いする向きがありますが、実はね、会社、企業がパーティー券を買ったのはこれ誰もチェックできないんですよ。
私が告発できたのはあの政治団体が収支報告書に記載があったからチェックできたんですよね。ということはいくら透明度を高めても企業に買ってもらうものを裏金にしちゃえば簡単に裏金が作れちゃうんですよ。
(荻上チキ)あーなるほど。
(上脇博之)で、ということは、これ企業献金も、企業献金についてもこれ禁止しないといけない。1994年の時に本来は禁止するはずだったのに、これ禁止してないわけだから、禁止しないといけないし。94年の政治改革では正当交付金を導入すれば綺麗な政治になるって言ったけど、裏金作ってたわけだから。税金をね、もうなんか泥棒に上げるようなことは、やめるべきなんですよ。
(荻上チキ)確かに。そうするとパーティーの禁止、あるいはそれでももらっていた政党なのに、じゃあこれから政党交付金など上げ続けることの正当性を裏付けるものがないわけですから、そこに対してじゃあペナルティはどうなのか、この辺りを議論するのがまずは筋ということでしょうか。
(上脇博之)おっしゃる通りで、もうね、国民のための改革にしないと。もうね、派閥の論理とか党の論理でなんか中途半端な政治改革をやられたらですね、納税者、主権者国民はたまったもんじゃないですよ。踏んだり蹴ったりですよ。
(荻上チキ)そうですね。これ35年前の自民党の中での具体的なその委員会で出されたペーパーにおいては、実際に国会で議論をする際には先に採択をして、その上で第三者などに回答を出してもらってそれに従うという、そうした方式もやろうかというようなことが書かれていたわけですが、今回の議論の進め方、確かに政治家たちに立法を任せても限度があるのではないかと感じますが、この点どうでしょうか。
(上脇博之)おっしゃる通りでね、なんか泥棒にいい刑法を作ってくださいと言ってもなかなかいい刑法を作らないですよね。
(荻上チキ)そうですね。
(上脇博之)それと同じでやはり裏金を作った人たちがこれを進めたってね、いいものができるわけがないと。僕はちゃんと専門家の意見を聞いた上で本当に国民の側に立った改革、特に今でもですね、合法的に裏金が作られている仕組みが残ってるんですよ。これは政治資金パーティーとか企業献金以外で、例えば政党が自民党の幹事長らの国会議員に寄付すること自体は合法なんですよ。
ところが受け取ったね、議員は収支報告制度がないので何に使ったか分かんない、いわゆる政策活動費という寄付が行われてるんですよ。これを禁止しないといけないんですよ。これね、本部だけじゃなくて支部連合会とか各支部でも同じようにですね、名称は違うけれども例えば組織活動費だったり、単なる活動費名目で寄付が出てて。これがね一、使途不明金、裏金になってるんですよ。これを禁止しないと裏金はずっと続きますよ。
(荻上チキ)確かに今の一円単位でのちゃんとしたお金の管理しようっていうことを民間から呼びかけてる一方で、政治の文化ではそれはなかなか現実的なのだという不思議なレスが返ってくるというところもありますが、このあたりはいかがでしょうか。
(上脇博之)もうね、政治家の論理はもうやめてくれと。もう国民の常識でやってくださいと。で特にね、自民党はね、あの総裁選をするから裏金が必要なんですよ。総裁選ってね、公職選挙法の適用がないから買収し放題なんですよ。
(荻上チキ)ははぁ。
(上脇博之)公職選挙法っていうのはあくまでも国会議員を決めたりね、地方の議員を決めたりする方なので、自民党という一つの政党の総裁を決める選挙には適用がないので、買収いくらでもしても罪に問われないんですよ。だから裏金が作られるんですよ。
(荻上チキ)そういったことで飛び交うわけですね。
(上脇博之)だからおそらく派閥をなくしてもですね、今までのような自民党の総裁選をやり続ければおそらく裏金は作られ続けると思います。
(荻上チキ)自民党は党内での改革をするならばそちらの方をやり、一方で党の限界がある場合においてはやはり立法で対処をし、しかし政治家だけでは議論ができないので専門家もね、とやると、ここまでやってようやく本気の一歩目が見出せるということになるわけですか。
(上脇博之)おっしゃる通りですね。
(荻上チキ)なるほど。そのあたりも含めて今国会まずは見つつ、政権としての価値があるのか見ていきたいと思います。上脇さん、ありがとうございました。
(上脇博之)ありがとうございました。
(荻上チキ)神戸学院大学教授の上脇博之さんに伺いました。
<書き起こし終わり>
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