綺譚 一本牙の獅子と共に歩む女
名はジンと言っていたはずだ。
衣子(よりこ)が小さい頃、よく夢に出てきた頭の良い獅子である。
口元から、大きな一本牙を右側に生やしている。
左側の牙は、途中で折れている。
昔、ひどい闘いをして、その時に折れてしまったのだという。
ジンがいる世界は、今は平和だが、その平和は獅子たちの闘いによって保たれてきたのだという。
小さい衣子は「要するにおまわりさんみたいなものかな」と夢の中でジンに聞いた。
ジンは「外から来る侵入者を排除するという意味では正しい」と応えた。
「で