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【Vol.17】歯髄由来幹細胞培養上清液の特性と可能性

*幹細胞培養上清液・エクソソームは医薬品ではありません。
本記事は、幹細胞培養上清液やエクソソーム・サイトカイン・成長因子のことを正しくご理解いただくために記載しています。

はじめに


幹細胞治療が再生医療分野で注目される中、近年では歯髄由来の幹細胞(Dental Pulp Stem Cells, DPSCs)から抽出された培養上清液が新たな治療手段として期待されています。
特に、成人の親知らず(智歯)から採取された歯髄由来幹細胞の培養上清液は、その豊富な成長因子と細胞外マトリクスにより、多様な再生能力を持つことが示されています。
本記事では、親知らず由来のDPSCsから培養された幹細胞培養上清液の特性と、その再生医療への応用可能性について詳しく見ていきます。

歯髄由来幹細胞(DPSCs)とは?


歯髄由来の幹細胞(Dental Pulp Stem Cells)DPSCsは、歯髄という歯の内部にある軟組織から採取される成体幹細胞です。
成体幹細胞は、胚性幹細胞とは異なり、倫理的な問題が少ない点が特徴であり、親知らずなどの抜歯後の廃棄物を活用できるため、入手が比較的容易です。
DPSCsは多分化能を持ち、骨・軟骨・神経・血管などのさまざまな細胞に分化する能力があります。

成人の親知らず由来のDPSCsの利点


成人の親知らず由来(第三大臼歯——歯科でいうところの8番)のDPSCsは、特に若年層の親知らずから採取されたものが多く、採取時点での細胞の潜在的な分化能が高いことが知られています。
(隆聖会ラボでは、10代後半から20代前半の日本人の健康な男女の第三大臼歯——歯科でいうところの8番の歯髄を利用して幹細胞培養上清液を培養しています。)

さらに、歯髄の内部は外部環境から隔離されており、他の成体組織と比較して細胞の老化や損傷が少ない点も特徴的です。
そのため、歯髄由来幹細胞は、健康で機能的な幹細胞を提供できる可能性が高く、再生医療の新たな材料として注目されています。

(第三大臼歯——歯科でいうところの8番)親知らず由来DPSCsの幹細胞培養上清液の特性

親知らず由来のDPSCsから得られる幹細胞培養上清液には、さまざまな成長因子やサイトカインが豊富に含まれています。
これらの分子は、組織再生・抗炎症・細胞保護といった多様な作用を発揮し、以下の特性が確認されています。

1.成長因子の多様性 

DPSCs培養上清液には、特にFGF(線維芽細胞成長因子)・VEGF(血管内皮成長因子)・TGF-β(トランスフォーミング成長因子)などの成長因子が含まれており、これらは細胞の増殖、血管新生、組織修復に寄与します。
特に、VEGFは血管形成を促進することで、傷ついた組織への血液供給を改善し、再生を促進します。

2.抗炎症作用 

親知らず由来のDPSCs培養上清液には、IL-10(インターロイキン-10)やTGF-βなどの抗炎症サイトカインが含まれており、炎症性疾患の治療にも有効です。
これにより、組織の炎症反応を抑制し、組織の回復を促進する効果が期待されています。

3.抗酸化作用 

培養上清液に含まれるSOD(スーパーオキシドジスムターゼ)やカタラーゼなどの抗酸化酵素は、酸化ストレスによる細胞損傷を防ぐ役割を果たします。
これにより、組織修復過程での細胞の保護や、老化防止に寄与すると考えられています。

4.神経保護作用 

神経再生の可能性を示す研究も進んでおり、特に神経成長因子(NGF)や脳由来神経栄養因子(BDNF)がDPSCs培養上清液に含まれていることが報告されています。
これらの因子は、神経損傷の修復や神経細胞の保護に寄与し、脳神経疾患や脊髄損傷の治療にも応用が期待されています。

再生医療への応用可能性

親知らず由来の幹細胞培養上清液は、再生医療における広範な応用が期待されています。
例えば、皮膚や骨・神経などの損傷を受けた組織の修復や、心血管疾患の治療、さらには慢性炎症性疾患の治療にも役立つ可能性があります。
従来の幹細胞治療とは異なり、細胞そのものを移植するリスクがないため、拒絶反応や腫瘍形成のリスクを低減できるというメリットもあります。

美容医療への応用

また、DPSCs由来の培養上清液は美容医療分野でも注目を集めています。
特に、抗老化や皮膚再生において、その再生能力を活用した治療が進められています。
例えば、シワやたるみ、肌のハリを改善するための治療に応用され、肌の若返り効果が期待されています。


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