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【Vol.14】幹細胞培養上清液——臍帯血由来の細胞の採取方法や培養について

*幹細胞培養上清液・エクソソームは医薬品ではありません。
本記事は、幹細胞培養上清液やエクソソーム・サイトカイン・成長因子のことを正しくご理解いただくために記載しています。

幹細胞培養上清液——臍帯血由来の細胞の採取方法や培養について


臍帯血は、新生児の臍帯および胎盤から採取される血液で、主に造血幹細胞を豊富に含んでいます。この臍帯血由来の幹細胞は、再生医療や細胞治療において、血液や免疫系の疾患治療に利用されることが多く、特に白血病や再生不良性貧血などの治療に応用されています。ここでは、臍帯血からの幹細胞の採取方法と培養、そして上清液の生成までの過程を詳しく説明します。

1. 臍帯血からの幹細胞の採取方法

1.1 採取のタイミング


臍帯血の採取は、出産直後の特定のタイミングで行われます。胎児が出生し、臍帯が切断された直後に、臍帯および胎盤に残っている血液を採取するのが一般的です。
この過程は母体および新生児にとって侵襲がなく、無痛であるため、倫理的な問題も少なく広く受け入れられています。

1.2 採取手順

臍帯血の収集: 出産後、胎盤から臍帯血を採取する際、医師または助産師が無菌状態で専用の採血針を用いて臍帯静脈に刺し、血液を収集します。
この過程では、専用のバッグに臍帯血を採取し、数分で完了します。
臍帯血の量は通常60〜200ml程度ですが、治療に必要な幹細胞量は採取した血液の中に含まれています。

臍帯血バンクへの保存: 採取された臍帯血は、臍帯血バンクに保管されます。保管中は、幹細胞を生存させるために適切な温度管理が行われ、長期間の保存が可能です。
臍帯血バンクは、自己保存(自分または家族の治療に利用するため)や、公共バンク(他者の治療や研究に供給するため)に分けられています。

1.3 幹細胞の分離と品質管理


採取された臍帯血から造血幹細胞や間葉系幹細胞を分離するためには、いくつかの工程が必要です。

分離手法: 臍帯血中の幹細胞は、遠心分離法やフローサイトメトリー(FACS)といった技術を用いて分離されます。
遠心分離によって、血液中の成分を分離し、幹細胞が含まれる部分のみを抽出します。
また、フローサイトメトリーは、細胞の表面マーカーに基づいて幹細胞を精密に選別する手法です。

品質管理: 臍帯血から分離された幹細胞は、その活性や品質が厳密に管理されます。
これは、臍帯血バンクでの長期保存中に、細胞の機能が維持されることを確認するために必要です。
凍結保存技術(クライオプリザベーション)が用いられ、液体窒素で極低温状態に保管されます。

2. 臍帯血幹細胞の培養方法

臍帯血から得られた幹細胞は、しばしば治療目的や研究に利用される前に培養されます。
臍帯血の幹細胞は、主に造血幹細胞と間葉系幹細胞の2種類が存在し、それぞれ異なる培養方法が適用されます。

2.1 造血幹細胞の培養


造血幹細胞(HSC: Hematopoietic Stem Cells)は、血液や免疫系の細胞に分化する能力を持つため、主に血液疾患の治療に使用されます。

培養基の選択: 造血幹細胞の増殖には、特定の成長因子を含む培養基が必要です。
例えば、インターロイキン-3(IL-3)、フルキノプラム(FLK)、グラニュロサイトマクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)などの成長因子が含まれる培養基が使用されます。

培養環境: 造血幹細胞は、体内の骨髄に近い環境が求められ、通常37°Cの温度と5%の二酸化炭素を含む培養インキュベーターで培養されます。
また、血清の補充や酸素濃度の調整により、幹細胞の増殖を最適化します。

2.2 間葉系幹細胞の培養


臍帯血には、間葉系幹細胞(MSC: Mesenchymal Stem Cells)も含まれています。
これらの幹細胞は、骨や軟骨、筋肉などの再生に役立つため、再生医療の研究で重要な役割を果たしています。

培養基の選択: 間葉系幹細胞は、低酸素濃度や特定の成長因子(例:トランスフォーミング成長因子ベータ(TGF-β)やインスリン様成長因子(IGF))を含む培養基を用いて増殖させます。
これにより、幹細胞の未分化状態を維持しつつ、増殖を促進します。

パッセージ処理: 増殖した細胞がプレート上で一定の密度に達すると、パッセージ処理を行い、細胞を分散させて新しいプレートに移します。
この処理を繰り返し行うことで、十分な量の細胞を得ることができます。

3. 幹細胞培養上清液の生成

臍帯血由来の幹細胞を培養する過程で、これらの細胞が分泌する成分を幹細胞培養上清液として収集します。
臍帯血由来の上清液には、成長因子やサイトカインが豊富に含まれており、免疫系の調整や組織再生に関与することが知られています。

成長因子: 臍帯血由来の幹細胞培養上清液には、血管新生を促進する血管内皮細胞成長因子(VEGF)や、細胞の分裂と増殖を促す基本線維芽細胞成長因子(bFGF)が含まれています。
これにより、血液疾患や血管障害、さらには組織修復に効果を発揮します。

サイトカイン: 臍帯血上清液に含まれるサイトカインは、免疫系の調整を担うもので、特に抗炎症作用を持つインターロイキン-10(IL-10)や、免疫応答を調整するインターロイキン-6(IL-6)が重要です。
これらのサイトカインにより、自己免疫疾患や炎症性疾患の治療が期待されています。

エクソソーム: 臍帯血由来のエクソソームは、特に細胞間のシグナル伝達を促進する役割を持っています。これにより、細胞の修復や再生が促進され、様々な再生医療の分野での応用が期待されています。

4. 臍帯血幹細胞培養上清液の応用

臍帯血由来の幹細胞培養上清液は、特に免疫系および血液系疾患の治療において高い効果が期待されています。
また、臍帯血の成分は、神経再生や皮膚再生、血管修復においても効果をを発揮する可能性があります。

免疫系疾患: 臍帯血由来の上清液に含まれる成分は、免疫調整作用を持つため、自己免疫疾患や移植後の拒絶反応の抑制に有用です。
また、臍帯血は、造血幹細胞移植の際のドナー源としても重要な役割を果たします。

血液疾患の治療: 臍帯血の造血幹細胞は、特に白血病や再生不良性貧血の治療において重要な役割を果たしており、臍帯血由来の幹細胞培養上清液もこれに関連する新しい治療法として研究されています。

本記事では幹細胞培養上清液の臍帯血由来に関して細胞の採取方法や培養についての内容をまとめました。
次の記事では、骨髄由来の幹細胞培養上清液の培養に関して細胞の採取方法や培養について記載します。

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