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20240615劇的なるものら感想

6月15日土曜日、池袋音処手刀にて開催された「劇的なるものら」に行ってきました。こちらのライブはVTuber小宵さんがVocalを務めるロックバンド、貝と蜃気楼企画となっており、VSinger✕生バンド演奏をコンセプトとしています。

私のお目当ては今回もはくゆさん。しかも生バンド演奏で歌が聴けるということで、普段と一味違う音楽を聴けることを楽しみにしていました。

本稿では各演者さんに対する感想と今回のライブで感じたことを、簡潔に記していきたいと思います。


◯JOHNNY HENRY

普段はVR(VRChat)で活躍しながらリアルバンドとしても精力的にライブ出演されている方々。
私は今回が初見でしたが、鮮烈な印象を刻み込まれました。リアルでの出演ということもあるのですが、ちゃんと普通にロックバンドでした(当たり前
あと海老でした(おい

ふざけるのはここまでにして、普段VTuberの歌唱をよく見る私が感じたのは、普段見るものと180°違うものを見ているという感覚でした。見ているというより体感しているというのが正しい気がします。
まず現地で大音量で聴く生演奏。イヤホン越しに聴く普段の音と比べたときに、「音を浴びる」という表現が本当にぴったりだなと。
そしてパフォーマンス。目の前に観客がいること前提の音楽を普段からやっていることの経験値を見せつけられた気がします。観客に音を楽しませる・視覚的に楽しませるだけではない、会場にいることを楽しませるパフォーマンスというのは、ライブをメインコンテンツにしていなければなせない技のように思いました。

リアルとVR、2つの姿で音楽を届けるJOHNNY HENRYさんのスタイル、私はすごく好意的に受け止めました。
生演奏の迫力、これはバーチャルには出せないものだと思います。ですが、それを届けるためには現地に来てもらわないといけない。そこには距離や時間、様々な障壁があります。
ですがバーチャルにはそれがない。なんなら自分たちも各地に赴くことなく、全国、全世界に自分たちの音楽を届けることができる。
それぞれに強みがあり、どちらの形態でも活動ができるというのは強みであり魅力であると思います。

奇しくもここ最近、リアル体も出しながら活動するVTuber増えはじめ、今まで禁忌のようにされていた”中身を出す”ことに対する風潮に変化の兆しがあります。
このあたりまだセンシティブな話題かと思いますが、私はありだと思っています。
自分がやりたいこと・表現したいことを考えたときに、リアルでしかできないこと、バーチャルでしかできないこと、その両方をやりたいとなったら、両方やるしかないじゃないですか。自分のための活動を第一に考えたら、それくらい自由でいいと思うんですよね。
それが今あまり理解を得られないとしても、本当にいいものを出し続けていけば否定的な意見というのはいつの間にかなくなっていると思います。
今回のJOHNNY HENRYさんのパフォーマンスと、それを見て沸いている観客がそれを裏付けるなぁと。

今回のライブのトップバッターに相応しいパフォーマンスでした。

◯はくゆ

推しなので長めに語ります。ご容赦ください。

今回のライブへの参加が発表された時からそれはもう楽しみにしていました。様々なジャンルを歌いこなせるのがはくゆさんの魅力だと思いますが、その中でもやはりロックの適性は抜群で、その歌声とバンド演奏との相性は最高に違いない。現地で聴かない手はありません。

そんな期待に胸躍らせたはくゆさんのプレイリストがこちら。

1.Border less
2.Way to U
3.Proudest
4.スポットライト(生演奏)
5.Cryner(生演奏)

個人的予想で個別曲4曲は固いと思っていたのでそらそうだよねでしたが、もう一曲が願望であった私の最押し曲で歓喜しました。
Way to U、本当に大好きで、最近のドライブはもっぱらこの曲エンドレスリピートなんですが、ライブで聴けたのは本当に幸せでした。
はくゆさんの作詞する曲は、藻掻きながらも前に進む、苦しさも見せながら強く前を向くような曲が多い印象です。
その中でもこの曲はそうした影を置き去りにするほど前に突き進む力をくれる曲だと感じています。曲のテンポ、そしてひときわ力強い歌声が、そう思わせてくれます。

本当に最高で、このとき目茶苦茶ハイになってたんですが、ここでまさかの大事件が……

はくゆの霊圧が……消えた……?

正確には、お姿を映していた機材にトラブルがあり、はくゆさんが消えてしまいました……
歌唱中ということもあり歌いきった後に一時中断に。不具合解消まではくゆさんがトークで繋ぐことになりました。

こういうトラブルが起きると、観客心理として当然のように不安になるわけです。ですが、その不安を吹き飛ばすようにはくゆさんが必死にトークを繰り広げてくれるわけですよ。後だから言うけど泣きそうになりましたよね。
本人だって不安なはずです。それでもその場を楽しませようとする姿は本当に頼もしかったです。姿見えてなかったけど……

ただ不幸中の幸いは、トラブル対応を通してはくゆさんのエンターテイナーとしての素晴らしさが観客の目に留まることになったことかと。
自身の名前に絡めてトークを繰り広げたりちぃかわになったり。そうした対応力やトーク力はVTuberならでは、ひいてははくゆさんの芸人魂が生きた形となりました。

なんとか復旧した後、しっかり持ち直してProudestを歌い上げると、遂にバンドコラボへ。
1曲目はスポットライト。爽快感ある曲調にバンド演奏が合わないはずもなく……
曲も歌詞もはくゆさんの歌声も、全部がバンド演奏にあっているし、バンド演奏によって良さが際立っていました。特にはくゆさんのパワフルな歌声、これがバンド演奏のパワーに全く負けておらず、むしろ均衡が取れることで生み出される相乗効果がヤバかったです。本当に相性がいい。

そして最後は代表曲Cryner。これを生演奏で聴くために来たと言っても過言ではないくらい、それくらいに楽しみだった曲です。そして現地で聴いた後でも、やはり過言ではなかったと思えるくらいのパフォーマンスでした。
オリジナルの音源も音がバリバリにいいんですが、今、この場でかき鳴らされている音の躍動感、爆音を全身にぶつけられる壮大感、そういったものが付加されたときにこれほどまでに輝きを増すものかと。本当に気持ちが高ぶりました。
何度も聴いた曲ですが、何度聴いても最高と思える。それは今回が生演奏だったからだけではなく、はくゆさんが毎回魂を込めて歌っているからだと思います。
本当に素晴らしかったです。

◯小夜セレネ

セレネさんも初めましての方でした。
自分は歌枠リレーやライブではじめましての方と出会うとき、あえて深くは予習せずに臨みます。ぶっつけ本番で第一声を聞くまで、見た目のイメージからどんな方なのか、どんな声なのか、どんな歌を歌うのかを想像しながら、ドキドキするのが楽しいのです。

セレネさんのことは、見た目と少しだけ得た情報から、少しダークで自身の世界観がある方かなと想像していました。
1曲目でその想像の上をいかれて感服しましたね。あまりにも感情がデカい。
歌と感情って切っても切り離せないものだと思っていて、それこそ前の出番のはくゆさんなんかは歌声にバチバチに感情を乗せるタイプです。
ただセレネさんの歌を聴いて感じたのは、歌声に感情が乗っているのではなく、感情そのものが歌になっているようなそんな感覚でした。自己紹介でも言っていた”バーチャル表現者”という肩書きがまさに相応しいなと。

ここまでゴリゴリの喧騒の中にあった会場が、静まり返ったような錯覚に陥りました。音は変わらず鳴り続けているのにです。重く苦しくも激情を掻き立てられる音楽に、観客全員が聴き入ることによる静寂がそこには有りました。

バンド演奏パートに入ってもその世界観は崩れることはなく、それさえも取り込んでより激しくなっていきました。
他の誰でもない、小夜セレネの世界。魅了される人が多いことも、ファンメイドのイメージソングが作られることも、素直に頷けます。

ある意味で、最も激しく、最も静かな時間でした。

◯メルシュ-Malstrøm-

メルシュさんは以前から何度か拝見しており、お歌の実力は既知ではありました。ただこの方の魅力というのは歌の巧さというより、歌に限らぬ引き出しの多さかなと思います。

かっこいい曲、おしゃれな曲、楽しい曲もあり、音楽ジャンルも問わない、雑談、ゲーム、企画何でもござれ。その自由さがたまらないし、いつも違う味を楽しめる良さがあります。

今回メルシュさんがこのライブに出ると知ってから楽しみにしていたことがありまして、それはもちろんバンドアレンジをしたらどうなるのか、ということです。
持ち曲が非常に多いため全てを把握できているわけではないのですが、ロック調の曲が多い印象ではなかったので、かなりアレンジで変わるんじゃないかと楽しみにしていました。
まさにその通りでしたね。

バンド演奏1曲目は「BARtual COCKTAIL」という企画で生まれた「エル・ディアブロ」、私が好きな曲の1つです。
本人から紹介があった通り、元はBARとお酒をイメージした、おしゃれな感じが際立つ曲なのですが、見事なアレンジでした。というか、これをアレンジで歌おうというそのセンスの良さよ。
元々テンポがいい曲なのでロックアレンジ向けではありますが、それをしっかりチョイスしてくるのは本当にさすがです。

2曲目、そしてメルシュさんラストの曲は「Glass World」は、こちらも私が好きな一曲でした。俺得か?
これもバンドサウンドでロックアレンジて提供されたことに衝撃を受けましたよ。ホントにセンスがいい。

全曲通してバラエティに富んだセトリで、メルシュさんの良さが際立っていました。これだけの曲を歌える歌唱力は本当にすごいと思います。

◯貝と蜃気楼(Vo.小宵)

トリは企画主催の貝と蜃気楼さん。VTuberの小宵さんをボーカルに据えたバンドさんで、JOHNNY HENRYさん以外の出演者のバンド演奏も彼らが担当していました。

先にそのことに触れますけど、マジで演奏が良い。音がいい。
しかも、自分たちの持ち歌ではない曲をこの日のために数曲演奏できるようにしてるわけじゃないですか。元の曲と出演者のイメージを大事にしながら。本当に頭が下がりますよね。

そんな素敵なバンドさんの、自分たちの音楽が良くないわけがない。そう思っているうちに始まった1曲目で、想像を飛び越されました。

VTuberがボーカルのバンド、どんな感じなのかと開演前から期待していましたが、いやもうゴリゴリのロックバンドでしたね。リアルと何も変わらない、良質で荒々しいロックで殴られました。

ぶん殴られた上に最高すぎてハイになったせいで、演奏中の記憶が曖昧なのが本当に悔しいのですが、終演後しばらくまで余韻引きずるほど良かったんですよ。これはガチで。

曖昧な記憶を紐解いていくと、方向性は一貫しているけど曲ごとに放つ色合いが違うし見せ方も違うし、山谷あれどずっと激情が空間を支配していたし、音楽に当てられて無意識に身体動くし、デスボは飛んでくるし、とにかく圧倒された記憶しかないです。

自分たちの音楽ぶつけて、それで場を支配できるってすげぇなぁと思います。本当にいいものを観させていただきました。


全出演者、本当に最高の音楽を届けてくださって、大満足のライブでした。
VTuber✕バンド✕現地、この組み合わせが今後もっと増えると嬉しいなと思わせるそんな企画でした。

企画した貝と蜃気楼様、出演者の方々、手刀のスタッフの方々、本当にありがとうございました。

こういうイベントが今後もっと増えてほしいし、たくさんの人が現地に来るようになればと切に願います。


ここからは私の独り言。

VTuberのリアルライブってまだまだ発展途上で、未来の可能性があるものだと思うのです。
確かに大手の箱のライブなんかを見るとすでに完成されたように見えますけど、あれは例外だと思うんですよ。金銭的にも技術的にも可能だからいきなりどでかいステージを始めてしまっただけで、ライブハウスでの活動すっ飛ばしていきなり武道館に立つようなもんです。
VTuberの数は個人や中小企業が圧倒的に多いのに、活躍の機会は圧倒的に少なくて、特に設備面の問題がデカいと今回のライブを経て思いました。

VTuberが現地ライブするとき、リアルでは必要なかった映像設備と通信設備を増強しなくてはいけなくて、コレってほんとにネックなんだなと思いました。今回も映像トラブルは実際にありましたからね。
はくゆさんがなんとか乗り越えてくれましたが、それなりに中断時間がでてしまうことを考えると、トラブルはないに越したことはありません。セレネさんのような世界観大事にしている方の途中で中断とか挟まってしまうと影響はもっとデカかったと思います。

そうした設備面の話は時間がかかると思いますけど、VTuberがライブするのに適した場所が増えてほしいなぁとは思いますね。

あと今回みたいにVTuberファンとバンドファンが入り混じったときに、お互いに勝手がわからない部分が出てきて大人しめになってしまうのかなぁと、会場をながめていて思いました。
この辺もっと相互の界隈を理解したほうがより一層盛り上がるような気がします。

私もまだまだ勉強不足。自分がより楽しむためにも、多く触れて理解を深めたいと思います。

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