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わかりにくくてわかりやすい優しさ

9月頃かなぁ。
秋口から仕事が忙しくなる理由で友達との約束を詰め込みまくられわたしから何度誘っても空振り。 
彼からは誘わない。わたしから誘わせるように誘導する。

拗ねたわたしが軽い気持ちで言った、
「もうそっちから空いてる日提案してよ」
そしたら
「誘うのが面倒なら無理して声掛けなくていいよ。お互い自然体の方がいいよ」
と返事。
「空振り続きは多少なりとも落ち込むんだよ。でも、今の言葉で傷つけたならごめんね」

このやりとりから山田、完全に既読スルー。
けどわたしもこのときの山田にすっかり呆れた。

そこから連絡しなかったんですよ。一切。
完全に終わったと、わたしも気持ちを切り替え始めてたの。

10月の半ばにわたし、怪我をしまして。
人生初の骨折。全治3ヶ月。医師の診断で休職。
傷病手当は微々たるもの、それも全ての治療終了後申請して、手元にくるのは更に先。

これからどうやって生きてこう、お金どうしよう、復職できるんだろうか。
不安でパニックでどうしようもなくて、がっかりとか既読スルーとか気まずいとかそんな小さいこと飛び越えて山田にLINE。すぐに既読がつき、理由をきかれ、こちとら怪我してめちゃくちゃ凹んでるところに「テンポ良く調子乗るとボロ出るタイプに見えるからもう少し自分の性格を理解しないと」などと傷に塩を塗る。「大丈夫?」とか一言もない。
ほんと、お前、鬼か…


って最初は思ったんですよ。

いや、これ、パッと見優しくない感じするけど、これさぁ、大丈夫じゃないの明らか分かってるけどなんて言ったらいいかわからんときのその場しのぎの「大丈夫?」よりも遥かに優しくないか?優しいっていうか、今後同じことを繰り返さないためのアドバイス?聡い優しさというか。
山田の優しさって甘辛い。ヤンニョム感ある。

(ちなみに怪我報告して“大丈夫?”と言わなかったのは山田とうちの母の2名のみでした)

そして最後に
「今は美味しいもの食べて楽しいことして英気を養うんだ」とともに、いつものふざけたスタンプ。


このとき、少し分かった。
気のせいなのかもだけど。そう思いたいだけなのかもだけど。

わたしは山田に“人間”として扱われている。
この人はちゃんと、わたしを“ひとりの人間”として扱っている。

関係を結んだ日に交わした「セフレである前に人間として扱う」をこの人はしっかり守っていた。

そう思ったら、やっぱりこの人は、セフレである以前にとても自立していて尊敬できる、尊敬してしまう人だと。

そこから必死に回復に努め、担当医もドン引きするほどの驚異の回復で全治3ヶ月を2ヶ月に縮めた頃、山田から「骨折どう?」と。
治療の様子と順調に回復している事、体力低下させないように筋トレや散歩、鬱っぽくならないようできるだけ外に出るようにしている話等してるうちに、わたしはふわっと気がつく。
既読とレスポンスが秒。

山田、さてはわたしに会いたいんだな?
山田は、わかりにくくてわかりやすい。

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