教室　異臭　鼻散る

　午後の授業中。なんか教室が臭い。教室の扇風機の風が自分に来るたびに匂う悪臭。かなり下水臭い。クラスメイトはマスクをつけているからか気づいていない。聞いてみても何のことだが分かっていないし。だがいくらなんでも臭すぎる。

　こういう時の原因は大体自分にあるはず。漏らしている訳がないと思うが、もしかしたら汗や服から匂っている可能性がある。そう思った瞬間。眠気を誘う退屈な教室が一気に戦場と化したような気がした。場の空気と頭が冷えるような感じがする。周りは前を向いてペンを走らせている。このあまりにも普通な行動が、むしろ気づかぬ振りしているようですごく不安になる。自分だとしたら気を使わせていることになるし、もし自分なら絶対後で皆の話のネタになる。できるのであれば早急に解決しないといけなかった。

　まずは匂いの出所の調査。授業中に皆にばれないよう、自然な感じで自分の服を嗅いでみた。嗅ぎなれた洗剤の匂い。いつもは嫌な匂いなのだけど、この場においては一番いい匂いだ。情報量の少なさで鼻が休まるので普通に嗅いでいたい。脇辺りも嗅いだけどビックリするぐらい何もない。いつもたまに来る異臭は大体脇だったので、違うとなると最後は自分の下半身なのだが、やはり鼻からは何も情報が来ない。少なくとも自分が原因ではなかった。

　となると周りの誰かが漏らしていることに。なので自分も素知らぬ顔をしていたが、扇風機の風が直に鼻にあたり、匂いが強制的に送り込まれる。吐こうと思えば吐けてしまえるほどひどい。口で呼吸すればいい話なのだがこの匂いを感知しないで肺に通すのはどうしても嫌で、手で顔を覆ってその場を切り抜けていた。途中から鼻が痛くなり始めた。なんでみんなは気づいていないんだ。

　授業が終わっても原因は分からず。仕方なく次の授業の準備をしようと廊下にでると一気に鼻に刺激が。この匂いは確定でうんこだ。そうとしか言えないそれが直送されている。自分の鼻がおかしいとか、服の匂いからという範疇を超えている。100%うんこ。それで初めて原因がトイレだと分かった。

　自分の教室の隣に男子トイレがある。自分の学校のトイレは死ぬほど衛生環境が終わっている。水は自分で流せない。虫は平気で湧く。明らかにやばいティッシュが散乱する上、洋式和式の便器からは入らなくても分かるほどの異臭。今までトイレの匂いが教室にまで届くような事態は一回も無かったので、トイレが原因だと考えもしなかった。実際後で他の人からの話で便器が詰まっていると聞いた。自分が原因じゃなくてすごく安心した。来週からマスクでもつけようかな。

　しかしこれは人間の嗅覚にも非があるんだ。やたらと排泄物の匂いに敏感だし、全く匂いが慣れてくれない。いい匂いも自分は嫌で、服の洗剤が濃い時とかは、匂いが慣れずにずっと鼻に伝わる。鼻の酷使で塩酸でもかけたかのような痛みがしてかなりつらい。

　どうせこれからもずっとどこであろうと糞の匂いを嗅ぎ続けることになるんだと思うと人間であることに嫌気がさしてくる。ああ、鬱だ氏のう。