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陰キャに外は厳しい

 金曜と言えば塾、塾と言えば金曜と水曜。週2の最悪の目覚め。今日も行かなければいかないのだ。だって父親が金払ってんだもん。いつものように朝2時にワイヤレスのイヤホンを探す。エアコンはいまだ変わらぬファンの音を出しているけどもう3日は連続で回していた。流石に可愛そうなので一分だけ消してあげた。それにしても付けたPCの光が目にはちと眩しかった。

 昼の塾を頭の中から逃がしてあげるかのように青い光に釘付けになる。朝5時くらいまではYoutubeやニコニコで昔の動画を漁りまくっていた。自分が人と関わる時のキャラはネット古参マウントを取るゴミ。しかも大して古参ではない。自分に嘘をついてまで懐かしいと思い込んでいる。でもその思考が生み出す脳のドーパミンにハマってしまったのだから仕方ない。まあ全部が全部嘘ではなくて、ちゃんと懐かしいな思う物もあるけど。実際、割合で言うなら30%ぐらい。以外と少ないけど、本当に知らないものは懐かしむフリすらできないからね。

 朝6時を過ぎてから急に時間の進みが早くなる。気づいたら8時。シャワーに入って作ってくれた卵焼きを食べる。わさびのふりかけがかかっているご飯と一緒に食べると死ぬほどうまい。何もかけずに食うと味がしない。もう普通には戻れなくなってしまった。

 気づいた頃には昼。勉強をしなければと頭が考えるせいで、ゲームに没頭することができず、ただ画面の前でぼーっとする。11時半なのに眠気が襲ってきた。

 塾に行く時間の直前までどう休もうかと考えていた。家族は自分の塾の予定なんか頭には入っていない、別に休んでも気づかれないのだ。塾の先生にも、「勉強を夜遅くまでしていたら、昼まで寝ちゃってましたー。」的な言い訳で乗り切れそうだなーと気づいたら考えてしまう。ギリギリまで決断せずに、最後の最後で逃げるのはサウナみたいで少しだけ気持ちがいい。行ったことないけど。

 実は水曜の塾は普通に休んでいた。金曜は流石に行かないといけないため体はしっかりと動いてくれる。ちゃんと自転車にも跨がれた。しかし2週間ほど外に出ていなかった。ただただ体が焼けるように熱い。外に出るたびに暑くなっているだろ。よく人間はこんな環境で生きているものだ。早く足の感覚がなくなるあの冬になってほしい。というか一年中冬でいいよ。いつだって雪は綺麗だ。

 エアコンで楽々暮らしていた自分が、負っていた借金を返すかのようにだらだらと汗をかく。ヘルメットなんてものを律儀にかぶっているから、さらさらの髪も少しずつ湿り気を帯びる。時間が余るので中古屋に入る。体を覆う涼しい空気。それでも止まらない汗がうざい。

 並べられている本やゲームはずっと眺めていられる。2週間もたてば少しはラインナップが変わっているわけで。PCゲームのショーケースに終のステラの初回限定版が1万ちょっとで置いてあった。いまはお金がないから一年後もあったら絶対に自分が買ってやる。それにしても店にいる同類共が気味悪くて不快だ。チー牛の絵みたいな顔の奴らを最近見るようになった。でも大体みんな笑顔で早口。やっぱどんな人間もどこかで感情を押し付けないと生きていけないんだね。

 急いで塾に向かうとやっぱりいつも通り。夏休みはほとんど人がいない。自習している人を除けば一人だった。塾は自分には向いていない。ここで成長できる条件の一つとしてコミュ力があるからだ。先生とどれだけうまく付き合えるかどうかで結果が大きくかわる。今日も会話をしたが自分の頭で想定していた答えを出す機会は訪れない。結局何も進展しないまま塾は始まった。それにしても問題文の内容が全く分からない。でも聞けるわけもないため、隙を見つけて答えを事前に見ておく。そんなことをしているから頭がいいと思われるんだ。

 急にゲームの事を聞かれた。頭に思い浮かぶのはBrotatoとnoita。あとエロゲ。知らないゲームを言われ、疑問符を浮かべる展開は見飽きたのだ。とりあえずセールで安く買ったゲームをしていると答えた。実際嘘ではないからね。自分は人と話す時はずっと敬語。でも今日は少しテンションが高くなって、少しだけ口調が崩れた。自分でも想定外のセリフで、相手がどう思っているのかを想像して少し口が止まった。相手の出した会話デッキにまんまと乗せられてしまう。ギャルゲのヒロイン顔負けの好反応。少し恥ずかしくなった。

 別に勉強面はなにも変わらずに塾が終わる。久しぶりの外はそこそこ新鮮だったので少し楽しかった。でも毎日は嫌だ。常に相手に監視されながら、人間と接する辛さは自分が一番わかってる。やっぱり疲れがひどいので少し早めに昼寝した。来週は学校だー。ほんと最悪。


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