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合理的配慮と「Reasonable accomodation 」

「合理的配慮」って、英語の訳じゃないですか。もとの英語は、Reasonable accomodation です。合理的がReasonableで、配慮がaccomodation。この訳語が独り歩きしているような気がすることがあります。英語の専門家じゃないんですけど。専門家の人に怒られなければいいなとか思ったりもしてます、けど。

「合理的」配慮

この「合理的」ね。日本語だと、「理にかなった」という意味もあるとはいえ、「コスパがいい」の意味に捉えられがちかなとか。「合理的なシステム」というと、みんな労力をかけずに素敵な結果が得られるシステム、もっといえば、以前の古いシステムより、労力は少なく効果は大きいシステム、を指しますよね。合理的。いいことだ。

Reasonable なんですけどね。Reason + able ですよね。able は「可能である」なので、Reason できる、って意味。Reason って英語的にはけっこう大事な言葉で、「人間たるもの、筋道立てて考えれば誰でも同じ結論に至るはずだ」くらいのニュアンスがあるように思うのです。人類普遍の結論! っていうとオオゲサかな。とはいえ、名詞のReason は、理由という意味もあるけど、理性という意味もあり、そして、理性とは、「人間たるもの誰でも備えているはずのもの、かつ、人間と動物を分けるもの」だったりするわけです。コスパじゃない。誰だって、考えれば当然だとわかるだろ、というような意味です。

というわけで、「考えればその必要性が誰だってわかるよね」「考えればその負担が許せる範囲のものであると誰だってわかるよね」って感じでしょうか。関係者だけでなく、外部の人も納得できる必要があります。だって人類普遍だから。もちろん文化の問題はあるけど、文化を差し引けば、あるいは、文化も理性で処理すれば、やっぱり理解納得できるはず。

合理的「配慮」

さて、配慮、です。配慮って、「誰々に」配慮しますよね。目的語は人間。「発達障害の人に配慮して」なんとかかんとか。

accomodation は、accomodate の名詞系です。accomodate とは、「(建物とかが)収容できる、(言語とかが)対応している」です。ちゃちゃっと調べた例文によれば、

the cottages accommodate up to six people
このコテージは6人収容できます。
any language must accommodate new concepts
すべての言語は、新しい概念に対応して、アップデートする必要があります。

web辞書より

超訳なのはご容赦ください。昔から癖なんです。抜けない。

何が言いたいかというと、「誰々に」というニュアンスが薄い言葉だなということです。どっちかというと、ものやシステムが対象で、「調整」が近い。「環境調整」という福祉業界でよく使われる言葉がありますけれども、そのほうがしっくりくるかなとか。なんとかかんとかに対応したシステム作り、というのも、ニュアンスとして近いように思います。

誰もが納得できる環境調整

Reason は、直感ではありません。誰でも「考えれば」わかる、ということです。見てわかるかどうかは、問わない。
ということは、Reasonable な調整のためには、考える必要があるわけです。考えるには材料が要る。こんな障害ですよ、とか、こんなことで困っています、とか、うちの職場ではこういうことが提供できます、とかですね。
また、関係者はみんなで考える必要がある。きちんと考えれば「誰もが」納得できるはず、とはいえ、まずは関係者が納得できないと始まらない。

辞書とニュアンス

いやまあ「合理的配慮」も、辞書的に正しく? とればReasonable accomodation ではあるかもしれないんですけど、でも、日本語のニュアンスってさ、とか、ASDのわたしが言うことなんだろうか、と、ここまで書いて思ったりもしました。

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