推しへ。
推しへ。
貴方のファン辞めて少し時間が経ちました。
理由はもう分かってると思いますが、それでも経緯を言わせてください。
貴方と初めて会ったのは1年前、Twitterでした。
トレンド入りしたハッシュタグを眺めていて、突然現れた貴方のビジュアルに惚れました。
でもオタク歴の長い私はすぐに飛びつきませんでした。
炎上するような発言を繰り返していたり、軽率にメンヘラ化してお気持ち長文を毎週出したり、毎日見えないアンチとバトルしたり、政治系の話題に手を出したりしていたら100年の恋も一瞬で冷めます。
イラストレーターやLive2Dの製作者が可哀想、と思うかもしれませんがこの手のはごまんといるんですね。見てて辛いです。
でも貴方はTwitterの使い方がすごく上手でした。
1日にツイートする回数は数回。
起床の挨拶、配信の告知、配信終了後、就寝。
配信がない日は今日あったことを140字以内で教えてくれましたね。
ツイート数が片手の数くらいあるとオタク(私)は声を掛けやすいので非常に助かってました。
「人に見られてることを意識できる」、まさに理想のタイプでした。
ドキドキしながら迎えたデビュー日。
どこか緊張しながら一生懸命に喋っていて、それでいてたまにドジで面白くて。
とても応援したくなりました。
私に出来ることは切り抜き、イラスト、サイト作りくらいでしたが、
活動のモチベーション維持や布教といったお役に立てるのではないかと思い頑張りました。
今だからぶっちゃけますがたまに職権乱用してました。
ただこれだけファンアートを創っても、貴方の為にならないのではないか。執心してるみたいで気持ち悪い奴だ。と思われているのではないかという不安は常に付き纏いました。
推しと付き合いたいなんて恐れ多い願望は抱けませんし抱くつもりもありません。
でも、心の中の真実って相手に伝わらないんですよね。
だからこそ、いつか重荷になってしまうのではないかと怖かったんです。
話を戻します。
貴方は毎週必ず配信されてましたね。
配信告知がたまに当日の3時間前、なんてことがありましたがそれも今では良い思い出です。
ゲーム、歌、雑談。
時にはコラボもして、とても楽しそうでした。
耐久配信では辛い、と泣きそうになりながらも完走して朝4時に私も泣きました。
そんな頑張る貴方が、
まっすぐな貴方が大好きだったんです。
憧れだったんですよ。
でもある日を境に変わりましたね。
以前コラボしてよく絡んでいた推しの友人さんがプチバズってあっという間に収益化を果たしてましたね。
「自分らしさを好きだと思わせてくれた、自信を持たせてくれたファンのおかげ」。
あの時の友人さんのツイートをRTして、貴方はこう言いました。
「自分もこんな風になりたい」。
当時はこの人のようにクオリティの高いものを出したい、という意味で解釈していました。
けど、違ったんですね。
ただ動画作ってバズりたい、って意味だったんですね。
でも誰しも承認欲求は持ち合わせていますから、それはおかしなことではありません。
ただ、貴方は方向性を「バズるため」に完全シフトしておかしな道に進んでしまいましたね。
初めて出したシチュボ。
今だから言いますけど、何だったんですか?
誰に向けてるんですか?
そのストーリーなんなんですか?
リテイクをしなかったのがバレバレの噛み噛みですけど、なんでこれで良いと思ったんですか?
他のシチュボ聴いたことありましたか?
平均同接1桁なのにわざわざプレミア公開した理由は?
とはいえ誰しも初挑戦はこんなものですよね。
ここまでボロクソに考えず、きっと次良くなるだろうと信じて感想を投げました。
あとこの界隈、自己満足を根幹に活動されてる方が多いので個人的にはクオリティの良し悪しは二の次だったんですよ。
推しが楽しんでくれればそれでいい、と。
自分は推しの趣味を賞賛するだけなんだ、と。
1週間経っても増えない再生数の桁。
貴方はいつしかシチュボの宣伝をしなくなりました。
次に出したのはゲームの実況動画でした。
えぇ、初めて配信を1週間お休みして完成した動画です。
散々でしたね。
問題点はまずゲーム実況動画なのに字幕が約2分に1回。
再生時間は20分。
売りが貴方の面白さなのか、ゲームの上手さなのかイマイチ分からない。
この辺から透けて見えるんですよ。
「テキトー」さが。
とりあえずこれで良いだろう。
とりあえずこうすればウケるだろう。
とりあえず視聴者は動画を全部見てくれるだろう。
人間の興味の持続は3秒未満、って言われてる世の中ですよ。
20分、しかも編集箇所の少ないゲーム実況なんて誰が見るんですか?
……なんだか風俗説教おじさんみたいになっちゃいました。
でもぐっと我慢して付き合いましたよ。
今回はプレミア公開じゃなかったのが幸いでしたが、
それでも全部見ましたよ。
やっぱり楽しそうな貴方が好きだって思いました。
ただこの辺から無性に嫌な予感がして貴方にこう言いました。
「楽しそうに頑張ってる貴方が好き」と。
時には第三者を装って感想マロを送ったりもしました。
「自分もこのゲームやりたくなりました」。
貴方は喜んでくれましたね。
私も嬉しかったです。
嬉しかったんですよ。
貴方という人間性に惚れた私には、貴方がそうしてくれるだけで舞い上がって、なんでも許せてしまうんです。
恋ではないけど、異種の好意がそうさせてしまったんです。
もしあの時、ハッキリ感想を伝えていたら何か結果は変わったのでしょうか。
なんて、変わるわけありませんね。
だって貴方は頑固でしたから。
頑固だったから、どんなことでも最後まで頑張る精神でやり遂げられたんでしょうね。
それから3つ目の動画も、4つ目の動画も不作でした。
クオリティはちょっとずつ上がってますが、やっぱりなんか違うんです。
確かに楽しそうだし面白そうではある。
なのに「これでいいか」という慢心。
競合他者(正しくは他社ですがあえて他者にしてます)のこと何も調べてない。
って、動画見るとすぐ分かっちゃうんですよね。
4作目なのにクオリティの上がり方がミクロレベルで、微々。
一体何を参考にされたのでしょう。
本気で頑張りたい、動画に集中するから配信が出来なくなる、と言って回数はどんどん減っちゃいましたね。
寂しかったけど仕方ないって、思ってました。
強請ると厄介リスナーとして炎上しかねないし、重いと思われたくなかったんです。
この時期に同業の方がこんなツイートしていましたね。
「推しにリプを送ると喜ぶ。
コメントするともっと喜ぶ。
チャンネル登録するとものすごーく喜ぶ。
もっと活動したくなる」
全部やりました。
ここにはないファンアートも、切り抜きも、マロも、グッズ購入も、その他も。
全部やったんですよ。
貴方の配信が好きだったから。
これをモチベーションにして、動画いっぱい出して、ついでに配信もしちゃう! ……くらいになって欲しかったんです。
でも貴方は無償で何かを得たい、という気持ちが満たされるばかりで何も変わりませんでした。
動画の投稿頻度も徐々に落ちて、最後はひっそり引退してましたね。
教訓なんですが、
相手が頑張りたいって思ってくれないと、
何が足りなくてどうしたらいいのか自覚してくれないと、
意味のない行為を繰り返しいてるだけ。
本気で頑張りたい、伸びたい、と言っておきながら努力を放棄した相手に出来ることってあと何があるんですか?
しかもファンが「どうした方がいい」って言ったらプロデューサー気取りと後ろ指指される界隈で。
動画がメインになって滅多に配信しなくなったから、どんどん人が離れましたね。
久々に足を運んだ配信は、私一人だけでした。
コメント欄が私一人で埋まって、
私のアイコンで染まってました。
対価を払ってないのに、1時間ほど1:1でずっと喋ってましたね。
そして配信終了した翌日。
貴方は「動画勢になります」と宣言しました。
動画勢。
動画投稿者になるということ。
リアルタイムの配信は気が向いたらする。
気が向いたらで気が向く瞬間なんて皆無です。
行けたら行く、のような言葉です。
反応は私以外に殆どありませんでした。
伸びた貴方の友人ですらスルーしてました。
もう、誰も見てません。
自分の存在を証明するためには第三者の誰かが必要です。
でももう、私以外誰もいませんでした。
それから少しして、初めて貴方の動画の再生数が3桁を越えました。
3桁、といっても500以上ではありませんが。
動画の内容はゲーム実況でした。
再生時間は5分、
お世辞にもすごいとは言えないもののそこそこ上手いプレイ、
字幕は多すぎるくらいに溢れていてどこを見ればいいのか分かりませんでした。
それでもやっぱり楽しそうな貴方がそこにいました。
気をよくした貴方は〇カ月ぶりに配信してくれましたね。
当時コメントした人数は…いえ、触れないでおきます。
宝くじでも当たったように機嫌が良さそうでしたね。
でも〇カ月ぶりに聴いた貴方の話し方はどこか様子が変わっていました。
二言目には「あ~、バズりて~」
ちょっと褒めると「この勢いならすぐ登録者数1000人行くよな」
「動画の出来が微妙だったのは、自分の能力ではなくゲームのせい」
「そもそもあのゲームは〇〇が微妙で操作性が悪くて~」
「シチュボは恥ずかしいからもう二度とやらない。そもそも向いてなかった」
あぁ、ここで終わりだなと思いました。
数字に憑りつかれてしまった貴方はただただ醜くて、
ゲームが好きな私にとって、
貴方が好きな私にとって、
ただただ辛い雑談配信でした。
何が貴方をそうさせてしまったんでしょう。
伸びたい。
注目されたい。
誰もが夢見る収益化を果たしたい。
えぇ、誰もが抱く理想でしょう。
好きなことしてちょっとオタクに媚びておけばお金が貰えるんですから。
こんな良い生活、私だって羨ましいと思いますよ。
例えゲーム会社・製作者の厚意に甘えさせていただいている立場を忘れていたとしても。
例え歌ってみたの本家の動画を丸っと無断転載していても。
例えアンチに絡まれても正義感丸出しオタクがどうにかしてくれる。
炎上すればあわよくば知名度が手に入る。
そんなこと考えててもお金が貰えるんですから。
でもね、本当に一握りなんですよそんなの。
収益化したとしても必ずスパチャされるわけではない。
毎月の月収が1万円を超えるか超えないかの瀬戸際。
登録者数1000人突破しても同接は1桁のまま。
こんなのザラです。
そうならないようにみんな頑張ってるんです。
人間相手を商売にするって、そういうことなんです。
「これでいっか」を貫いた貴方。
果たして本当に収益化したとして続けられていたのでしょうか。
目先の欲にとらわれて、
オタクだって心を持った一人の人間だってことを、
ちゃんと物を見て面白いか面白くないかを判断する
貴方と同じ人間だってこと、
忘れたまま活動できたんでしょうか。
私がフォロー解除した後。
貴方はツイートの頻度すら億劫になりましたね。
注目度はどんどん下がって
動画の告知には誰も反応しないし、
いいねやRTが0だったこともありました。
動画についたコメントも0のままでしたよ。
あの動画が伸びようとも、0です。
誰の心も動かせないまま。
初心を忘れてしまった貴方。
いつしかひっそりとアカウントを消して。
アカウント名で検索かけましたが、
最後にリプしていたのは「RTした人を~」系の企画の主催者で
「応募してくれてありがとうございました。結果をお待ちください」
でした。
ふと、私が立ち去った後に出した動画を見ました。
再生数はどれも綺麗に2桁前半。
1作目から何も変わらない構成力。
注目されるために言ったであろう暴言や侮辱に近い非難。
カットしない沈黙。咳払い。
自分らしくあること。
果たして本当に良いことだったのでしょうか。
この文章は架空の存在をモチーフにしているのできっとフィクションです
こんなところ読む暇があるなら今すぐヘルシングを読んで下さい。