飯島三智氏の手腕


放送作家でコラムニストの山田美保子氏が独自の視点で最新芸能ニュースを深掘りする連載「芸能耳年増」。今回は、「新しい地図」の3人の活躍が続く背景について。

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 女優の酒井美紀が『不二家』の社外取締役に就任するとのニュースがネットを駆け回った10日、株式会社CULENの代表取締役社長、飯島三智氏がネットショップのサポートなどを手掛ける『BASE』の社外取締役候補に…とのニュースが出た。3月の決算に向け、各企業が発表する決算・人事情報を新聞各紙が報じたからだ。専門家によれば、企業が社外取締役として欲しがるのは「企業価値を高めるために必要なスキルや経験をもっている人」とのこと。まさに飯島氏はこれに当てはまる。ちなみに現在、同社のCMキャラクターを務めているのは香取慎吾。デーブ・スペクターやMattと共演する「BASE1つもあってない聞き間違いデーブ篇」と「同Matt篇」は大人気CMだ。

 御存知の方も多いと思うが、株式会社CULENは、稲垣吾郎、草なぎ剛、香取慎吾の「新しい地図」3人の所属事務所。SMAP時代、長年チーフマネージャーを務め、マスコミでは度々「I女史」との呼ばれ方で、あることないこと…、いや、ないことないこと書かれ続けたのが飯島氏である。

 私が知る限り、仕事を共にしてきた人たちに彼女を悪く言う人はいない。その細やかな仕事ぶりと鮮やかな采配、さらに“先見の明”によって、多くの案件を成功に導いてきた。

 私もそうだが、業界女性には“飯島さんファン”が多い。SMAPに最大の危機が及んだ際、彼女のキャリアがプツッと切れてしまいそうな瞬間があった。そのとき、自分のことのように傷つき、ショックを受け、「なぜ、こんなことに?」「なんとかならないものか」と声を挙げていた女性は少なくない。各テレビ局に「女子会」ならぬ「女史会」というのが存在することを聞いたのもその頃だ。が、当時は“想い”はあっても、なかなか行動に移せなかったのではないか。

 そんな飯島氏に関する「やっぱり、すごい」という記事をやっと見かけるようになった。後出しジャンケンのようだが、私はこれまで何度か記事を書こうとしたが、それがかえって飯島氏の迷惑になってしまうのかもしれないと思い留まっていた。

 業界の超有名人だし、その功績も多いに認められるが、本人は「私が、私が」というタイプではない。いや、担当するアーティストのために言わなければいけないことはハッキリと言ってきた人。だからこそ、男性スタッフの中には苦手意識をもっていた人もいたように思う。まぁ、その大半が直接仕事をしたことがない人たちであって、又聞きのウワサを元になんとなく悪口を言っていただけと思われる。

草なぎ『ミッドナイトスワン』に「出会った」

 実は私は昨年初めて「飯島さん」について某週刊誌の連載でコラムを書いた。草なぎ剛が自身の“代表作”を新たに塗り替えたと言ってもいい『ミッドナイトスワン』に関連したインタビューをしたときのことだ。

 2019年公開の『台風家族』と2020年公開の『ミッドナイトスワン』が共にオリジナル作品であるという下りになったとき、草なぎは「オリジナルなら、どんな作品でもやる」と言っていて、「出会った」と説明してくれた。どのような経緯で出会ったのかを聞いたとき、彼は何とも言えない幸せそうな笑みを浮かべて「飯島さんがもってきた話なんだよね」と。私が飯島氏をリスペクトしていることもよく知っている草なぎは、サラリと、しかし、飯島氏との絶大な信頼関係の元で自分の現在が成り立っているのだということを短い言葉で表したのだった。

 2月14日スタートのNHK大河ドラマ『青天を衝け』のファーストシーンで「徳川慶喜」のテロップと共に草なぎのアップが映し出された瞬間、「思わず涙した」というファンは多かったようだ。くしくも、香取慎吾主演の『アノニマス~警視庁“指殺人”対策室~』(テレビ東京系)と共に、特に香取がこだわっていた“地上波”のドラマに揃って出演できたからだ。

 その香取と飯島氏の関係は、これまで度々取沙汰されてきた。もっとも多く目にしたのはSMAP結成時、11歳だった香取の“母親代わり”…というものではなかったか。「新しい地図」が立ち上がった頃、香取は、これからも仕事を共にしたい人として、名前こそ出さなかったものの飯島氏と再びタッグを組んだと明言。稲垣や草なぎも同様だったと明かしている。

 これまで私は3人の中で稲垣にインタビューをした回数がもっとも多いので、彼から飯島氏の素顔を聞く機会がよくあった。SMAP時代、ツアーの後の食事を「何にするか」「どこに行くか」という話を飯島氏は稲垣に訊ね、稲垣がメンバーに聞いていたそうだ。SMAPの中間管理職というだけでなく、話しやすさが稲垣にはあったのだろう。

萩本欽一が香取慎吾の天性の才能を絶賛

 10年前、東日本大震災の直後、ジャニーズ事務所が「Marching J」というチャリティーイベントを行った際、飯島氏がいわゆるファンの“はがし”を見事にやっているのを見て驚いたことがある。、ファンの中には飯島氏の姿を見つけて号泣する女性もいたのだが、彼女の話をちゃんと聞いてあげていた。それを稲垣に話したときのこと。彼は「あの人、そういうの好きだよ、」と微笑んだ。思えば、その微笑みこそ、草なぎが「飯島さんが持ってきた話なんだよね」と言ったときと同じものだった。稲垣は飯島氏の人柄や、見えないところでどれほど心配りをしているのかをちゃんとわかっていた。彼らと飯島氏の信頼関係は、長きにわたって培われてきたものなのである。

 彼らにまつわる“いいニュース”も後を絶たない。草なぎは『ミッドナイトスワン』の演技が高く評価され、主演男優として複数の映画祭で名前が挙がっている。映画祭と言えば、稲垣と二階堂ふみのW主演の映画『ばるぼら』は、イタリアの『ファンタ・フェスティバル』で最優秀作品賞を受賞。香取主演の『誰かが、見ている』(Amazon Prime Video)配信のタイミングでは、萩本欽一をはじめとする大物が彼の天性の才能を絶賛している。

 さて、私が飯島氏と初めて仕事で会ったのは、稲垣がMCに名を連ねていた『WIN』(日本テレビ系)で、飯島氏も私も40歳前の頃だった。スタジオ隅のモニターを共に囲んでいたとき、「こういう番組に女性の(放送)作家さんが居てくださるのは、すごくいいわよね」と言ってくれたことは、私が長年仕事を続ける大きな原動力になった。

 同時期、SMAPのあるメンバーに女性誌でインタビューをした際、私が持参した差し入れを「ありがとうございます」とすぐに開封し、スタッフに配っていたのも飯島氏。編集者やカメラマンからのリクエストを休憩中のメンバーの前でひざまずいて説明をしていたのも飯島氏だったことに、私は心から驚いた。ここまで担当アーティストへのリスペクトと気遣いをする人なのだ…と…。

 さらに飯島氏は「私、女性が出世するの大好き」と言い、懇意にしている女性記者の昇進祝いを開いてくれるような人でもある。だからだろう、飯島氏の周りには、常にキチンとしていてカッコイイ女性スタッフがたくさん居る。

 こうした人柄と、稲垣、草なぎ、香取、三者三様の持ち味に新たな輝きを加え、「俳優」として「アーティスト」として見事に育て上げただけでなく、彼らが夢見た個展やソロコンサート、飲食店やアパレルのプロデュースなどをカタチにする傍らに居たのも飯島三智氏。女性が憧れ、女性が惚れる、本当にカッコイイ女性なのである。

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