『福増』ものがたり3

このnoteでは『福増』とその母牛『かつき5』を血統的な観点で解説し、和牛の育種の方法を考察します。そしてこの育種の方法を応用して各地の固有の系統を改良され、多様性が保たれることで、100年先も和牛肉が世界最高に美味しいお肉であり続けることを期待して公開することにしました。

『かつき』との出会い! 

就農当時、乳牛の搾乳20頭、育成10頭、和牛繁殖10頭、(和牛と乳牛の)交雑と和牛の肥育20頭、子牛10頭位いました。
乳牛は減らして和牛の繁殖を増やす予定でしたので、研修終わった平成10年の6月、鳥取の市場で繁殖牛を3頭買いました。

そして同年12月にも鳥取の子牛市場に繁殖牛を買いに行きました。師匠と子牛を見て廻った市です。
繁殖牛を1・2頭目星を付けてセリに挑みました。確か『北国7の8』の子でした。1頭目は競り負け、2頭目、ドキドキしながら最後までセリボタンを押し続け「やった!セリ落とした!!」と思った瞬間、セリ場の掲示板を見ると競り落とし番号が別の番号でした。
「えっ???」セリカードが刺さっていませんでした。
自分にしては高値の牛をドキドキしながら手に汗握り押し続けセリ落としたと思ったので、悔しくて悔しくてたまりませんでした。
終わってから師匠に
「どうだった。繁殖牛買えたか?」と言われましたが、
「セリ落としたと思ったら、セリカードが刺さってなくて買えませんでした。」「悔しいです。残念です。」
と何度も言っていたら、(東伯農協は沖縄に肥育素牛を買いに行っていたので)
「1月の沖縄の子牛市で1・2頭なら繁殖牛買ってきてやるがな。沖縄には鳥取にいない血統がいるから、もう諦めろ。」と言われました。どんな血統にするかとなったとき
「『安福165の9』は60万以上するから、『福栄』は同じ『安福』の子だし、肥育成績は出始めでまだ安いから『福栄』にしとけ。」となり、『北国7の8』と2頭を2代祖・3代祖や体型、価格はお任せして(当時)東伯農協の職員のSY さんに買って来てもらうことになりました。

やってきた牛の血統は『福栄×第8糸晴×安浪土井』の但馬系×糸系×但馬系のサンドイッチで良く霜降りになる組み合わせでした。但馬系が強い牛にしては大きな牛でした。
この牛が後に『福増』のお祖母さんになり、『北福波』の同い年で二従兄弟の『かつき』でした。

もし12月の鳥取の子牛市で繁殖牛が買えていたのなら、もし私に資金があり『安福165の9』の子牛が買えたのなら、『かつき』が繁殖牛としては鳥取に来ることはなく、『福増』は誕生することはありませんでした。

続く