右往左往上意下達?

80年代以前に普通車免許を取得した人なら合格にはシフトチェンジ操作が必須でした。半クラッチや坂道発進も同様。

今では教習所でマニュアルミッションの教習車を買おうにも国産車では数えるばかりになってしまいました。これからのEV時代を見据えるとAT限定の文字もなくなり、ギア変速の知識など無くてもずっとカーライフを楽しめそうです。

それって本当に楽しい運転?とマニアは訝るかもしれません。
ではシフト操作のない運転はつまらない単純作業なのでしょうか?

アイルトン・セナが運転していた頃のF1マシンは、まだ運転席右脇のシフト・レバーをコキコキ動かしながら一つ一つのコーナーを曲がっていました。が、これは程なくセミ・オートマチック化されて今やハミルトンもフェルスタッペンもハンドルから片手を離すことなく指先だけでギアチェンジを済ませています。

昔シフト・レバーがあったセンターコンソールの場所に今あるのはマウスの様なスイッチだったり、色分けされたプッシュボタンだったり。一部の欧州車ではハンドル脇に長く伸びたワイパー操作レバーと紛らわしいレバーがシフトレバーになっている車種があります。
左ハンドルを選べば特に問題は無いのに右ハンドルを選ぶとちょっと厄介な事が起きます。それは…

古くから左ハンドル車を生産するメーカーが日本のような左側通行の仕向地向けにハンドルを右に移した仕様を送り出してくれています。この時ウインカーレバーが右に,ワイパーレバーが左についていれば国産車から乗り換えても当たり前のように操作できますが…

ところがメーカーにしてみれば世界的には少数派の右ハンドルの為にわざわざレバー位置を取り替えるより、レバーごと左にあったハンドルを右に移した方が(多少は)簡単です。だから輸入車の右ハンドルにはふた通りのレバーの向きがあって,乗り慣れない車だとついつい交差点で雨も降っていないのに無駄にワイパーを動かしたりして恥ずかしい思いを強いられます。

これはヨーロッパ大陸と英国の間でも起こる問題のようで、ある時期から左右ハンドル位置を問わず、レバーの位置は統一される様になります。

そうなると右ハンドルでは変速用のレバーが車体中心寄りでは無く、ドアに近い方のワイパー・レバーの下に位置することになります。AT車でもあまり頻繁に変速操作をしなければ、それで良いのかもしれませんが、複数所有していてたまに乗り換えるクルマがこの手の右ハンドルだと戸惑います。減速のつもりが無意味にワイパーを動かしてしまったり。左折のつもりがリバースに入れてしまい…と言った誤動作は絶対避けなければならず、安全機構も備わる筈ですが、使い慣れるまではどうも馴染めません。

これとよく似た不統一がごく一部のAT車のシフト・パターンにも見られます。
アメリカ車でいち早く普及した時代からオートマチック車のシフトポジションはほぼ例外なく,右又は前,上から
P=パーキング
R=リバース(後退)
N=ニュートラル
D=ドライブ(前進)
L=ローギア・ロックアップ
と並んでいるのが基本で、これに
2やSと言ったセカンド
OD=オーバードライブ
と言ったポジションが追加されても順序が逆転することはありません。

ところが,電子制御でマニュアル操作によりギア変速を積極的に増減できる車種が生まれるとDポジションの左か右にMのポジションが追加されるようになり、そこからさらに上下(前後)方向にワンステップづつ動かせばギアが変速される仕組みが出来ました。

ここで問題がありました!
オートマに慣れている人ならシフト・ダウンして下の段に変えたければシフト・レバーを引く(下、後ろ方向)に動かすのが自然です。
一方でマニュアル車に慣れていれば普通の4速車なら3速にシフトダウンする動作はシフト・レバーを前(上)に押す方向です。そこでいくつかのメーカーではオートマ車のマニュアル操作の場合、前(押す)がシフトダウン。引く(後ろ)方向がシフトアップという正反対の操作パターンが生まれました。

これはあくまでもドライブ・レンジの走行中,マニュアル変速操作したい場合に限られるのですが紛らわしいことに変わりはありません。

この動作をハンドル脇の小さなパドル・スイッチに委ねる場合も増えてきましたが、これも千差万別。概ね右側にシフトアップ、シフトダウンは左側に割り振るケースが多いようですが、一部にはハンドルの表裏にスイッチを設けて裏側から押すと増速方向、表のボタンは左右ともシフトダウン。計器盤に表示された数字を確認しながら身体で覚えてしまうまでは、Dレンジ任せにしておく方が無難かも知れません。

こんな面倒くさい動作でもマニアにとってはドライビングプレジャーのひとつとして認知されるかもしれないので、人の好みというものはわからないものです。


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