馬力とトルクどう違う?

カタログデータに記載されている数字のうちエンジンの最高出力は何となくわかる気がしますが最大トルクはどうでしょう?

最高出力:

140PS at 6400 rpm(138 bhp) (103 kW)/最大トルクが(18.2 kgm)@ 4800 rpmのクルマと
最高出力:109ps at 9800rpm/最大トルク:28.6kgm/0-2730rpmのクルマではどちらがパワフルなのか?

馬力は前者のほうが4割増し、ですがトルクを見ると後者のほうが圧倒的。だったらどちらがパワフルな車と感じられるのでしょう?

トルクとパワーを時給と年収に置き換えたら判りやすいでしょうか?契約制の場合、単位時間でもらえる報酬が時給(回転トルク)で、その時給の積み重ねが年収になるわけです。時給は安くても年がら年中働き尽くめの日本人は低トルク高回転型。まあ、低収入ですが・・・一方、アメリカでは時給はたっぷり頂いて、必要時間働いたらさっさと帰宅。働く時間は少ないのに意外にリッチ。・・・こんなイメージでトルクと馬力を捉えると面白いでしょう。

最大トルクとは自転車のペダルに例えれば踏みこむ一回当たりの最大の力です。長さ1メートルの(クランク長さ)のペダルがあったとして、そのペダルをどれほどの力で踏む力があるかを比較する尺度、kg・mというのが古い単位で1mの棒の先を何kgで押す(回す)力を発揮できるか?を表した数字です。
(最近の表記では1kgの質量を持つ物体にある単位の加速度を生じさせる『力』=【N(ニュートン)】で表現します。その1Nの力が物体を1m動かす時の『仕事』=【Nm(ニュートン・メートル)】です。)

最高出力(1秒間に1Nmの仕事が行なわれる時の『仕事率』=【W(ワット)】)とは出力トルクの数字に回転数を掛け合わせたもの。

一回ごとの回転トルクを積分するとその回転時の出力になる・・・・そして出力の値は大体その時の回転数に比例する関係にあります。エンジンがどこまでも回転数を上げられるなら、回したもん勝ちです。あなたが人の倍の速さでペダルを漕げるのなら出力アップも簡単!

だから高回転で回せるようにDOHCやショートストローク化など様々な技術が盛り込まれました。

ホンダのS800が最高70PS/8,000rpm 最大トルク 6.7kgf·m/6,000rpmを発揮できるとしても、それは回転を上げたときの話で、VWワーゲン(かぶと虫)の1200 ccでも(40.6 PS/29.8 kW) at 3900 rpm/88 Nm (65 lbft/9 kgm) @2400 なら・・・
つまり2400回転も回っていれば、その回転数での 出力はS800をはるかに上回っていることになります。

最高出力が真価を発揮できるのは例えば最高速度のデータ。70年代初頭まではカタログにこの数字が並び、性能を競いましたが、それ以降はカタログ表示されなくなったばかりかリミッターで180㎞以上出ないように行政から指導されています。古いカタログを繰ってみるとカローラ・スプリンター1100は60馬力で145km/h。サニー・クーペ1200GXは83馬力で160km/h。ファミリア・ロータリークーペは100馬力で180km/hと記載されています。

同じくカタログデータでMAX150馬力だと200㎞近く出せます。このあたりが60年代の5ナンバー国産車の上限で、トヨタ2000GTもGT-Rも数少ない200km/h組。一方、ツイン・キャブ装備のスポーティーな軽自動車の36馬力エンジンでも120km以上は出せたものです。この差は何なのかというと、高速走行ほど空気抵抗が加速度的に高まるからなのです。大雑把に言って速度を2倍にするには出力を4倍にしなければならない勘定です。ま、空気抵抗を減らせれば手っ取り早いわけですが。

一般的な空気抵抗のクルマの場合は40馬力も出ていれば100km巡航が可能だとされ、法定速度を守っている限りポルシェだってカタログの何%かの出力でしか走っていないわけです。平地では・・・

ただし道路の勾配がきつくなってくると高出力のエンジンの真価が発揮できるので、たとえ箱根の上り坂でも急加速したいのなら、やはり400馬力・カーを買うだけの価値はあるでしょう。

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