あのタイヤと消えた?粉塵

雪道走行ではタイヤのグリップを如何に確保するか?昔はそのもっともポピュラーな答えがスパイク・タイヤでした。
今でも冬季のラリー・イベントなどではタイヤの接地面にたくさんの鋲を打ち込んだスパイク・タイヤを目にすることができます。雪国では昭和の終わりごろまで、冬の入り口にはこんなスパイクタイヤに履き替えていたものです。

白鳥の飛来がニュースで伝えられ、里にも初雪の便りが届くころになると、タイヤショップに駆け込むか、物置の中からホイールに組まれたスパイク・タイヤを四本、車の傍まで転がしてジャッキ・アップする作業が始まります。
雪国では路上であわててチェーンを巻く人の姿をほとんど見かけません。チェーンの巻き方などは、東京で練習を重ねた私のほうがよほど素早いくらいで、たいていの雪国ドライバーは冬タイヤの着脱に二度だけ手を煩わすのが殆どです。

街中では積雪の翌々日にはしっかり除雪も終わり、アスファルト路面が顔を出します。近所の大型ホームセンターの駐車場も同様、スパイク・タイヤを履いていても本当に雪道を走行するは実はスキー場の近辺とか、自宅から表通りまでなどごく限られたシーンでしかなかったのです。

春先になると花粉の襲来を前に、街中はスパイクが引っ掻くアスファルトの粉塵で一杯。これが社会問題となって昭和のうちにスパイク・タイヤの装着は禁止となりました。スタッドレス・タイヤへの全面移行です。ほかのタイヤよりもはるかに柔らかいゴム質(コンパウンド)で出来ており、ギザギザに刻まれたサイプ(切れ込み)が加減速やコーナリングの力を受けることで、ブロックが斜めに傾いて、エッジが路面を捉える、というのがスタッドレス・タイヤの理屈。

そうはいっても、スパイクの性能には簡単には追いつきません。各メーカーごとにコンパウンドの硬さや特性、サイプのデザインも異なるうえ、地方によって雪質のほうもザラメ雪あり、粉雪あり、アイスバーンがあったりとそれぞれに向き不向きがあって、なかなかベストのマッチングを見つけるのは難しいようです。

概して言えば、欧州メーカーのほうがコンパウンドが硬めで、北東北より北の日本の風土には国産銘柄の柔らか目のコンパウンドが向いているようです。高速道路での安定感は流石欧州製に一歩、分があるようで使い方に合わせて銘柄を選ぶとよいでしょう。地元のタクシー運転手の評判も聞き逃せない評価指標の一つです。

スパイクタイヤを履いて雪を蹴散らす空冷911やFRアルファを日本の雪国で見かけたのも昭和の遠い思い出となってしまいました。リアエンジン車のエンジン・ブレーキが雪道の下り坂でことのほか信頼に足る、強力な武器だったことは今も変わりないでしょう・・・・

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?