ずっとモーターが必要だった

自動車部品の中には実にたくさんのモーターが含まれています。たとえガソリン車でマニュアルミッション車でも・・・・

電動リクライニング,シート・スライドは言うに及ばず,パワー・ウィンドウ,リモコン・ミラーにロール・スロイスのマスコット=フライング・レディ だって今や電動格納式です。

昔は窓ガラスを下げるハンドルをくるくる回し,シートもチルト・ステアリングも手動で微調整。リモコン・ミラーはワイヤーで操作されるばかりか、トランクリッド・オープナーも電気の要らないワイヤー式が始祖でした。それどころか旧式のサンルーフなど、ハンドルをクルクル回す手動式でワイパー・ウォッシャーも手押しのポンプ.VWカブト虫に至ってはスペア・タイヤの空気圧で洗浄液を圧送するというアイデアものだったりします。

数ある自動車用モーターの中でも最大の最重要パーツといえばやっぱりセル・モーター(スターター・モーター)でしょう。これがあるおかげで、重いクランク棒を力任せにグイッとまわし、何度かの失敗を経てようやくエンジンがかかる、という儀式が終焉を向かえ、自動車は女性でも乗りこなせる乗り物になったのです。いまや原付バイクですら必須の装備。でもその消費量もとりわけ甚大なので、こまめに信号ストップで停止、始動を繰り返したらあっという間にバッテリーは昇天。最近のアイドリングストップ仕様のクルマは特別に高価なバッテリーを必要としており、家計への影響を問題視する向きもあるようです。

古くからモーターが大役を果たしてきたのがワイパー。今では左右平行に動くものが一般的ですが、これにも流行廃りがありました。今では輸出仕向け地毎に左右で作り分けていたワイパーの配置も昔は左右対称にして部品を共有していました。だから旧式のベンツに見られるように二本のワイパーは互いがお辞儀しあうように開いたり閉じたりを繰り返します。

ウィンドウの傾斜が大きくなって縦横比が1:2に近づくと一本のワイパーで左右の端まで拭う車が現れます。超高速走行などでは水滴の流れる方向に逆らわないようにワイパーが動くので、レーシングカーなどは今もで採用しています。ベンツなどでは偏心カムを使って回転しながら伸び縮みもする複雑な動きを内蔵して拭き残しを少なくした機構もありました。現代のワイパーで運転席側が極端に長いのはガラスの縦横比が1:1に近づき奥行きが伸びた為で、長い運転席側のアームだけで大部分の面積を受け持ちます。もう偏心カムのような複雑な動きも見られなくなりました。

ワイパーモーターの動きを止めるにはスィッチのほかにもうひとつ、アーム側にも断続スイッチがあって、収納位置以外では電気が流れる仕組みになっています。だから、どこでOFFにしても収納位置までワイパーは動き続けます。いうまでもありませんが二本のワイパーアームはひとつのモーターで駆動されます。ある電気自動車などはあまりに車室の騒音が低くなったために、このワイパーのモーターも音の静かな専用のものを開発したほどでした。

近年電装部品の中で急に頭角を現してきた部品がドア・ミラーで、左右上下調整用のモーターとそれをコントロールする正、逆の各配線、格納式なら専用のモーターと配線、内蔵されたウィンカーを点灯させる配線もあれば後方からの接近車をレーダーで知らせるインジケーター点灯用の配線もあります。さらには各ドアにはパワーウィンドウ、電磁ドアロック用の配線もオーディオ用スピーカーの配線も!これらの膨大なリード線の束がドアの開閉のたびに曲げたり伸ばされたりを繰り返すのですから、相応の柔軟性と耐久性が求められます。

こうした用途に広く使われる小型モーター、実は日本の会社=マブチ・モーターが世界シェアでトップを快走しています。子供の頃プラモデル作りに興じた人なら少なからず目にしているはずのブランド、オトナになった今でも知らないうちに愛用者になっていたのです。

他方で消え去ったモーターも少なからず存在します。初代日産レパード等に採用されたフェンダーミラー・ワイパー。発売当時左右のフェンダーに屹立していたミラーの鏡面に小さなワイパーが備わり、水滴を落としてくれた贅沢装備です。確かに便利そうですがドア・ミラーがデファクトになった現代、車内からでも手が届くためなのか、撥水剤が性能向上したためなのか、最近あまりお目にかかっていません。

ライトが上下して格納されるリトラクタブルライトも大流行しましたが、国によっては禁じる動きもあり、ランプ自体の小型化もあって存在意義は薄れてしまいました。

ホンダCR-Xデルソルという、タルガトップのオープン・ルーフを備えた車がありました。トランク・フードがモーターで上下し、内蔵されたフォークが後ろから伸びてきて屋根を引きずり込んで格納するという大掛かりな仕掛けが話題を呼びました。モーターがひとつでも回らないと機能しないリスクも併せ待ちますが、ボタンを押し続ければ無限の開放感が得られる、画期的なクルマでした。もう、街中でもめったに見かけなくはなりましたが・・・・・・

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