ウナギとミミズ?ボディ構造の大きな違い

地球上のあらゆる生き物には脊椎動物と背骨を持たない生き物がいるように、クルマにも大別すると乗用車のようなモノコック構造と軽トラのようなフレーム構造の二つがあります。

生き物の世界ではあとから登場した脊椎動物でしたが、クルマの世界では脊椎を持ったフレーム構造の方が先輩でした。昭和のクラウンやフェアレディ2000などはフレームを持った数少ない乗用系と言えるでしょう。

現在、乗用車のほぼ全てはモノコック構造と言って飛行機やテントウ虫やエビと同じように脊椎にあたるものがありません。いっぽう軽トラックから大型トレーラー迄ほとんどのトラックやスズキジムニー・ジープ等は脊椎にあたる前後に長いはしご形の骨格=フレームを持っています。

左右二本の梁のような柱を左右で繋いでいるのが一般的で、ラダー・フレームと呼ばれたりもします。スズキのジムニーは代々このフレームを持っていて、強固なフレームの上にボディが載っている構造。

ですが、ライバルのパジェロ・ミニはフレームを持たないモノコック構造。メリットは頑丈なフレームが無いだけ車体を軽くできること。反面フレーム付きはトラックなどの過酷な使い方にも丈夫で長持ちするほか、ボディの改造が自由に出来るという利点があります。

乗用車で長い間、このフレームを捨てられなかったのが昭和の終わりまでのクラウン(~130系)で、乗り心地や振動・騒音などの利点から敢えて採用を続けていました。クラウンを改造した霊柩車が多かったのも、優勝パレードでオープン・カーに改造されたクラウンが多かったのも、強度が保ちやすくモノコック構造より改造申請、登録が容易だったからでした。

いっぽう、VWかぶと虫には戦前の試作車からこのフレームがなく、ボディ全体で強度を保っています。実は薄い鉄板を溶接しただけのパネルの組み合わせ(ホワイト・ボディ)そのものの強度は意外にも柔らかいもので、古い車を片側だけジャッキで持ち上げたりすると、ドアがきっちり閉まらなくなる位ボディは捻じれていたものです。屋根を切ってオープン化するなんて論外、イギリスの古いスポーツカーは大抵がフレーム付きの小さな車を土台としていました。
最近は国産車でも捻じれにくい剛性の高いボディを売り文句にしているようですが、ボディ全体で強度を受け持っているので、やたらに屋根ををあけたり切り刻んでは強度が保てなくなってしまいます。

ドアやトランクを全て外して裸になったボディの屋根を見るとフロントウィンドウの左右の細い柱でクルマの上半分、前後をつないでいることがわかります。試しにここを切断するとボディは大きく前後に曲がりやすくなってしまい、そのままではオープンカーへの改造は叶いません。カタログを見ると屋根なしカブリオレの車重は大概セダンよりも数十kg重くなってますが、これは床板そのほかで失った強度を補っているからなのです。
大きなアメリカ車のほとんどやダイハツの最初の乗用車コンパーノ・ベルリーナには頑丈なフレームがあったので簡単にオープン化できたものでした。

人気のSUVも最初はフレーム付きのものが多数派でしたが、軽量化や価格を考えてフレームの無いモノコックを採用する車種が過半となりました。強度面でのハンデはフレームの形を模した凸凹を床板に埋め込むことで補っています。その点、軽トラやジムニーでは頑丈なフレームのメリットを捨てず、敢えて採用しているので多少の錆ちょろボディでも耐久性で心配する必要はまずありません。

デビュー以来長年フレーム付だったトヨタのセンチュリーも現行モデルからはレクサスと同じようにフレームなしのモノコック構造に取って代わられました。だからトヨタでフレーム付を死守しているのはトラック群とまもなく70年の節目を迎えるランド・クルーザーのみ、と言うことになります。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?