日本vsタイ
もうずいぶん昔、パスポートの表紙が青から赤に変わる前の時代です。タイ、バンコクに旅した時の最初の驚きはタクシーが皆日本のブルーバードだったこと。それも本国では時代遅れになった410型、通称尻下がりと呼ばれる旧型車でした。市内のホテルに泊まっても終夜聞こえてくるのは3輪トラックのビービーという虫のような音。初代ダイハツ・ミゼットを使った三輪車タクシー(トゥクトゥク )たちの走り回る音でした。
車社会での上下格差は実に明白で,窓にはすべて黒いフィルムを貼った外国製の新車か使い古した日本製のピックアップ・トラックのどちらか。自国に自動車メーカーを持たなかった当時のタイでは日本の様に日本車天国だったのを思い出します。
ピニンファリナ・デザインが今頃になって評価される410系ブルーバードの足回りは元々板バネに固定軸の組み合わせ。プロペラシャフトの長さが大体合えば他社の似たような部品流用も簡単です。リゾート地でタクシー代わりに走っていた小型トラックのファミリア・ピックアップのマフラーは錆びて脱落した部分から先、洗濯機か掃除機のホースが継ぎ足されており、排気効率は抜群!サウンドも勇ましいものでしたが・・・・・
早起きして水上マーケットに出かけると木製の小型のボートには廃車した車から手に入れた中古エンジンを船の上に置きプロペラ・シャフトを直につけて、スクリューをつけた先端は水の中。エンジンを土台もろとも左右に首振りできるようになっているので、右手にバイクのようなスロットルを握った働き盛りのおじさんは、その右手を左右に振ることで舵取りもできたのでした。元々は水冷エンジンじゃないか!ラジエーターはどこ?と思えば、ウォーターホースの先は喫水の先まで伸びて水面下に。これ船外機と同じでしょうか?
新車の輸入車には飛び抜けて高い関税がかかるため、日本からの中古車が重宝したようです。右ハンドルがそのまま通用するのも好都合。タイのモータリングってワイルドだけど実用本位で合理的だなあ,と思った少年時代の思い出です。
今,タイの街中には海外版カローラのタクシーが走り回り,いすゞやホンダなどが現地工場で小型車やトラックを生産しています。現在、日産の店頭に飾られるキックス 、三菱のミラージュはタイ工場で生まれたもの。また、インドネシアから海を越えてくるのはトヨタのタウン・エースにマツダのボンゴ、・・・・・・昔はワンボックスの代名詞ともなったボンゴ(韓国でもノックダウン生産を経て、独自に進化中)の名跡もトヨタからのOEM供給となり、海外で生産されてくる・・・・・意外な場所で馴染みの帰国子女に出会ったような気分です。
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