先頭打者はツライいよ

ハイブリッドカーではプリウスが、燃料電池者ではミライが先陣を切っているトヨタですが、意外やほかにも先陣を切ったパイオニアがいました。

先頭打者を送り出すよりは、売れ筋を追って二番バッターを送り出すのが得意なトヨタ。レガシィが売れりゃカルディナで、エルグランドが売れりゃあアルファードで、ロードスターが人気ならMR-Sで追撃と、売れ筋を見逃さない名監督ぶりは見事です。でも、その裏では一発屋に終わった意欲作も少なからず・・・・エスティマがそうでしたし、プログレの目指すところもOPAが提案したレイアウトの多彩さも優れたコンセプトです。ウィル・サイファでは2003年に課金システムの前身ともいえる料金設定を試みたり・・・・社内ベンチャー=Willという試みも画期的なトライでしたが実を結ばずに終わります。

欧州では温暖化ガスの排出が真剣に問題視され、ディーゼルエンジンも含めて単位走行距離あたりのCO2排出ガスのグラム数が厳しく制限されるようになると、トヨタもこの対策として小さな小さな4人乗りマイクロ・カーを開発しました。それが世に出た1kmあたり99g​ のCO2ガスに抑え込んたIQです。メルセデスならスマートが有名ですが、あちらは2シーター。

最初に断っておけば、ハイブリッド・カーが売れた影でひっそりと一代限りで消えてゆきました。しかも格下のヴィッツよりも高価でサイズは小さめ。小さいながら高級感は上、という下克上の考えはまだまだ日本のマーケットには馴染まなかったようです。

この革新的なマイクロカー,IQのどこが凄いのか?それは全長3mに満たない寸法の中でしっかりと4人を座らせるスペースを確保したレイアウトの妙です。エンジンルームは極限まで前後に圧縮、するだけでなく配置を工夫して助手席足元のスペースを稼ぎ出しています。そうして後席の住人も無理なく乗り込める。さすがに運転席側の背後は余裕綽々とは言い切れませんが、このクルマに大人4人が乗車する機会やその移動距離を考えれば、子供が長時間座れるだけ良しとしましょう。ラゲッジ・スペースは後席を折りたたむことで得られます。二名乗車で成田までスーツケース持参で出かけるには充分でしょう。

全幅は軽自動車よりも遥かに余裕の5ナンバーサイズ、ここが自動車税を普通に払う所以で排気量もリッターカーより余裕を持った1300が選べました。

でも、何故こんな志の高い車が売れなかったのか?ひとつは価格の設定もありますが、もうひとつの最大の難点は2ドアであったこと。韓国や日本のマーケットと欧米のそれを比較すると簡単に理解できますが日本では圧倒的に4ドア天国です。2ドアはトラックかスポーツ車に限られ、マーチやヴィッツに用意されていた2ドアバージョンも早々に姿を消しました。ドイツ本国では買えるゴルフの2ドアも日本国内にはかなり前から未導入です。
同様のマイクロカーにはメルセデスが開発した4人乗り・スマートがありますが、こちらはルノーにも供給され4人のりのリア・エンジン車・トウィンゴとして存続しています。が、スズキのツインは消滅・・・

その昔アストンマーチンを買うとおまけにIQがついてくる(と噂の)シグネット・モデルが話題をさらいましたが、トヨタ2000GTにすら及ばぬ生産台数で終わっています。

大きい車のほうが絶対的に上級と妄信しているわが国のマーケットではこうしたクルマが開発されても望みは少なく,EVも高価なSUVばかりが優先されるのは残念な状況です。

また一台,貴重な2ドアが姿を消そうとしています。ホンダが生産していたS660がこのほど生産終了をアナウンスし、すでに完売してしまいました。あとはダイハツ・コペンの存続を願うばかりに・・・・・・

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