愛されるの・・

まだ黎明期にあった昭和30年前後の日本の自動車産業。そのお手本となったのは海外、とりわけ英仏の自動車メーカーで、ノックダウン方式という現地生産で日野ルノー、いすゞヒルマン、日産オースチン(ケンブリッジ)、三菱(米・ウィリス)ジープなどのメイドインジャパン欧米車を街で頻繁に見かけたものです。
中でも小型でタクシー用としても重用されたルノー4cvでしたが、日本で見かけたのは一世代限り。後継車は日野が独自に開発したコンテッサでした。
4cvから多くを学び,直列四気筒水冷エンジンを後輪の後ろに置くところはルノーと同一。クラシックカーのような風貌の4cvと違い、車格もアップしたモダンな印象のボディを纏っていました。

一方、本家の4cvはどうなったのか?事実上の後継車=R4(キャトル)ではリアにあったエンジンをギアボックス、車軸もろともそのまま前に平行移動して、ハッチバックドアを備えた前輪駆動の2BOXカーに大変身していました。もっとも日本に紹介されるのはかなり後になってからですが、フランスでは好敵手、2cvと販売合戦を演じ、1990年代まで生産され2cvよりもホンの少し長生きしました。

フロントグリルもろともガバッと大きく開くフロントフードを手前に開くと,前からバンパー,ラジエーター,変速機,エンジンの順に並んでいて,クルマを横から眺めると前輪とフロントドアの間が異様に長いのがわかります。つまり厳密に言えばフロント・ミッドシップ、シフトレバーの操作用の棒がエンジンを飛び越えるように長く伸びているところが他には無い特徴で、全車ダッシュボード下からシフトレバーが生えている(ダッシュタイプ)フロアシフト。というかダッシュ・シフトは後にホンダN360や現在の軽自動車の多くが倣うスタイルともなりました。

この配置はさらに後続の大ヒット商品、ルノー5(サンク)にも引き継がれ、これまたフランスを代表する人気車に成長しています。ところが・・・・・

いったん前に移したエンジン,変速機を今度は180度向きを変えて後輪の前に移動,ちょうどリアシートの下あたりです。おまけにターボ・チャージャーで武装してリアタイヤも幅広のワイド・タイヤに換装。運転席のすぐ後ろがエンジン、ミッション、そして後輪というF1さながらのミッドシップ・レーシングカー=サンク(5)・ターボが誕生します。これは日本でも007映画でもおなじみ。そのワイルドなルックスはホンダ・シティーターボⅡ/シティ・カブリオレにも取り入れられ、人気のファッションともなりました。

現在、日本では本国をしのぐ突出した人気のルノーカングーですが、カングーのルーツをたどると、キャトルの商用版、フルゴネットに行き当たります。もしもあの時代に日本に導入されていたら今日のような人気車に成長していたのかどうか・・・・・・いや4cvの生まれ変わりとして日本に再来したのがカングーだった・・・のかもしれません。

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