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真後ろのドア

松原みきの最大のヒット曲、真夜中のドアが今頃脚光を浴びていますが、当時はてっきり,リトナーかカールトンがバックでギター弾いているんだろうと思うくらい、垢抜けた洗練されたサウンドに聴こえました。

あの当時…5ドアハッチバックは日本では売れない・・・・永らく業界ではそう信じられていたものです。乗用車といえばタクシーやパトカー同様セダン・タイプが定石。トランクのない2ボックス・スタイルが定着したのは60年代も終わり頃。ホンダの軽N360の大ヒット以降の話です。が、後に続く最初期のシビックにしろ、ハッチバックはまだなく、普通のトランク・リッドを備える2ドアだけでした。

ハッチバックという後部ドアと、ライトバンのようなバック・ドアには構造上の明確な区別はありません。ハッチ・バックの始祖とも呼ぶべきものはトヨタ2000GTやホンダS600クーペにも備わっていました。

他方、ライトバンとは違う、ファミリー向けの5ドア・セダンを3世代目のコロナが早々と導入しています。その頃、アメリカでファミリーカーといえばステーションワゴンと呼ばれる、ワゴンボディが人気でした。欧州ではルノー16が大人気,で4ドアにハッチバックを加えたレイアウトはコロナ5ドアセダンにかなり近い構成です。

5ドアに先んじて日本に定着したのは3ドア・ハッチバックの方ですした。スズキ・アルトが2BOX3ドア軽自動車のスタイルを浸透させ、シビックや赤いファミリアことFFファミリアが5ナンバー小型車の2ボックス化を促進しました。

・・・が、この頃から各社とも5ドア・モデルにも力を注ぐ様になります。典型的な例は日産サニーに加わったカリフォルニアというワゴン・ボディ。ライトバンとは別にルーフの低いスタイリッシュな専用5ドアボディを与え、主にアメリカ西海岸での需要を喚起するようなイメージ広告が展開されました。この頃にはコロナにも5ドアセダンが復活し、軒並み4ドアセダンと5ドア・ハッチバックが揃う展開となっています。

平成へと年号が変わり,スバルからレガシィという新型車種がデビューします。実に半分以上がワゴンで占められ、日本のワゴン・ブームを牽引しました。ライバル・メーカーも軒並み刺客を送り込みます。ステージアにカルディナ、カロゴン(カローラワゴン)にRV風味のカリブやシビック・シャトル・・・・・

もう日本で5ドアが売れないなどと口にする人はいません。93年のワゴンRに続き、翌年登場のホンダ・オデッセイは日本で本格的にヒットしたミニバンの例に挙げられます。この頃にはもう3ドア・ハッチバックも少数派に転落し、日本で5ドアが売れないと信じる業界人も見当たらなくなりました。

今日ではミニバンをはじめSUVのほとんども5ドア、韓国もそうですが街を行く車がこんなにも5ドア車で溢れている国というのは実は稀有な存在でもあるのです。トランクスペースのある3ボックスこそは乗用車という考え方は中国ではまだ根強いものの、日本の路上で真後ろにハッチバックやバックドアを持たないクルマを探すことはこれからさらに難しくなりそうです。


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