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文系にもやさしいクルマメカ解説・えらいぞ板バネ

クルマのサスペンションには二つの大きな役割があります。ひとつはタイヤを適切に動かすよう、位置決めすること。もうひとつは車体の重さを支えつつ、路面からの上下動を吸収して乗り心地をよくすることです。
サスペンション・アームは前者を、各種のスプリングやダンパーは後者の役割を果たします。そのバネには馬車時代からの板バネに始まり、コイル・スプリング、トーション・バー、果ては空気バネに至るまで様々な方式が考え出されました。

板バネの優れた所は長さの違うリーフ(一枚の長い板)をピラミッド状に重ねて、堅いバネと柔らかなバネの両者の特徴を併せ持つ、プログレッシブな性格を持たせやすいところです。が、重く大きなトラックには向いていても軽量な乗用車には、もっと軽量で柔らかなスプリングが適していました。
1960年代の国産乗用車は大半がまだ、リア・サスにこの板バネを多用していましたが、70年代に入ると、この板バネをコイル・スプリングとアーム類に置き換えるのが盛んになりました。


1970年にトヨタが送り出したセリカ・カリーナを筆頭に4または5リンク式コイル・バネのリア・サスが増加します。板バネではそれ自体が後輪の位置を決める役割も担っていましたが、コイル・スプリングを使うには車軸の動き方を決めるアーム類が必要になります。後輪駆動の車軸はプロペラシャフトと繋がっていますが、そのつなぎ目にはユニバーサル・ジョイントがあるので自由に首を振れる状態にあります。


発進しようとクラッチを繋げば、静止したタイヤの反力で車軸は後輪と逆回転する方向に首をもたげるような動きをします。(物理の作用・反作用の理屈です)板バネには若干この動きも規制する働きがありましたが、リンク式では車軸を上下から挟むように二階建て構造にする必要があります。
今度は車軸を真上から見た場合、やはり板バネでは左右の位置決めを果たしていたことがわかります。これをただ平行するリンクで置き換えただけでは車軸が軸方向(クルマの左右方向)に動き回ることになってしまいます。そこで、上、もしくは下側の二本のリンクはハの字形に配置して、4本のリンクで左右の動きを規制しながらも上下には動けるようにしました。


5リンクはさらに左右の動きを積極的に押さえ込むため、車軸と平行にリンクを一本追加したものです。が、これだと厳密にはバスのワイパーのように扇形の軌跡を描いてしまいます。
そこでサバンナRX-7のようなスポーツカーでは一本棒のリンクの変わりにワッツ・リンクという、車軸の中心が常に車体中心から外れないような特殊なリンクを用いています。これだとリンクの総数は全部で6つから7つ。組み立てもコストもスポーツカーだから許される贅沢でしょうか?

普通は特殊鋼を加工して作られる板バネですが、これをガラス繊維強化プラスチックという、柔軟性に富んだ素材で置き換えた例があります。一本の長いリーフで左右後輪のバネの役割を担うシンプルな構造でしたが、耐久性に関しては未知数の素材。長続きしなかったのはコスト高か経年変化が理由だったのでしょうか?


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