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気化器は化石化?やさしいクルマメカ解説

ガソリンタンクを一杯に埋めたガソリンはエンジンの中で爆発・燃焼し、排気ガスとして大気中に放出されます。ではどうやって燃料タンクからエンジンまで運ばれるのか?そして、液体の状態からどのように変化し、酸素分子と反応して爆発的な体積膨張と発熱に至るのか・・・・・・

バイクの燃料タンクは大抵の場合エンジンの上にあるので重力がガソリンを移動させます。が、クルマの床下にあるガソリンタンクには重力は期待できません。そこでエンジンが回す燃料ポンプによってタンクから吸い出されるか、またはタンクに内蔵された電磁ポンプによって送り出されることになります。新しいスーパー・カブのエンジンを掛ける前、キーをひねるとカチカチカチという音が聞こえてきますが、これが電磁ポンプの作動音です。

フューエル・パイプという管の中を通ってきたガソリンはフューエル・フィルターというろ過器を通って不純物を取り除かれ、いよいよエンジンまで到達します。が、このときは液体のまま。エンジンの中には気化した状態で送り込まれなければなりません。今の車はほとんどがインジェクターという噴射機で霧状にされ、エンジン内部へと吸い込まれます。しかし、この燃料噴射装置で正確にガソリンを噴射するにはちょっと知恵が必要です。

日本ではマイクロコンピューターを使う燃料噴射が1970年代中盤に実用化されました。それまではホンダやダイハツが採用した機械式と呼ばれる単純な仕掛けのものがあるにはありましたが・・・・

噴射器の動力源はエンジン本体です。が、一回にどれくらいの燃料を噴射すればよいか、の制御が難しい。アクセルの踏み込み量だけでなく、その時のエンジン回転数、吸入する空気の量の多少や外気温度、冷却水は充分温まっているかなど様々なデータを計算して理想的な混合気になるよう瞬時に必要な噴射量を計算し、コントロールします。これが車に使われ始めたもっとも初期の電子回路のひとつで、2020年末頃から問題化している半導体の不足ではこんな場所にも影響が出るのではないかと危惧されています。

今では排気ガスにデリケートになった原付バイクのエンジンさえも燃料噴射です。アナログな気化器(キャブレター)を見るには中古車店で旧車と呼ばれる昭和の車のエンジンルームでも開けないとお目にかかれないかもしれません。気化器は大抵電気を使わず、アクセルから伸びたケーブルでバタフライ・バルブと呼ばれる開閉弁を動かすだけ。加速の時は一時的にピュッとガソリンを噴出させるアクセル・ポンプがついていたり、寒冷時のエンジン始動で混合気を濃くするためのチョーク・バルブなどがありましたが、今、このチョークを手動操作する車を探すとなるとやはり旧車専門店で初期のフェアレディZでも見せてもらわないと叶いません。後期からはインジェクション・エンジンも登場しているので・・・・・・

インジェクターと呼ばれる噴霧装置はふつう一つでシリンダー複数分を担います。噴射のタイミングはグループ化したり、シリンダーの爆発タイミングに合わせたりといくつか方法がありますが、1996年まではシリンダーの手前で噴射された混合気をエンジンに吸い込むのが普通でした。それをシリンダーの中で噴射するダイレクト・インジェクションという方式が実用化され三菱GDIやトヨタD-4のエンジンに搭載され始めました。エンジンが吸い込むのはただの空気だけ。シリンダーに吸入中か、または圧縮過程でシリンダー内に適量のガソリンを噴霧してやります。こうすることで無駄をなくし燃焼効率を上げるのが目的でした。古くはメルセデスベンツのレーシングカーにも採用例がありますが、シリンダーの中という高圧の空気の中で作動できるポンプが大量に安価で供給出来る様になって市販車にも採用し始めた、というわけです。

理論上はガソリン1の割合に対して空気が14.7の比率(重量で比較)がもっとも効率的とされ、理論空燃比と呼ばれますが、実はガソリンが気化するときに気化熱を奪う作用があるために大出力のエンジンでは敢えてガソリンを濃くして冷却の役割を担わせることもあります。逆に燃費を稼ぐためにはガソリン量を薄くしたいわけで、薄いガソリンでも着火できるよう工夫したリーンバーン・エンジンに仕立てることもあります。

昔エンジニアがねじ回しで調整していた気化器の時代には、この空燃比も簡単に操作することが出来ましたが、今ではプログラムを書き換えるなり,ROMチップを交換しないといけません。クルマのメカニズムも次第にブラックボックス化して、ねじ回しでは調整できないパーツが激増しました。

さあ、空気に混ざってガス化したガソリンはいよいよシリンダーの中に吸い込まれていき、本領を発揮するタイミング。ロータリーエンジンや2ストロークエンジンなら説明は簡単ですが、まだほかにも色々と説明が必要です・・・・

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