見出し画像

息子へ・・・それで良いのだよ

 先程、我が家の息子が長い棒が入った黒い袋と持って「じゃぁ出かけてくる」と言った。玄関まで見送りをしつつ・・「それ、なあに?」と聞いた。

 息子は「釣り竿」と答える。「釣り~ぃ?!」「どこに行くの?」と聞いたら東京のなんちゃらかんちゃらと言っていた。「何を釣るの?」の質問に、なんちゃらかんちゃらと「とにかく食べれない魚だよ」と答えて、玄関から「じゃぁ行ってきます」と出かけて行った。

 我が家の息子は平成11年生まれの早生まれである。大学は1浪をして入った。そして4年間の大学を終わり就職もしないでアルバイト生活をしている。大学を卒業して今年で2年経過している。

 正直を言ってしまえば「1浪して大学まで入って就職もしないのか」と思わなかったと言ったら嘘になる。私も一般的な親である。大学のお金は奨学金を借りたとは言え一部の話であって受験料から計算したら相当なお金を彼にはかけた。大学に行きたいと言ったのも彼である。

 大学の時に就活時期に就職の話を聞いたら「特にやりたい事も好きなこともない。何をやったらいいかわからない」と言われた。

 正直、その時にも「普通はそれでも就職するもんなんじゃないの?」と思ったが、それは彼に言わずに「ふーん。じゃあ何か好きな事見つけるのをするしかないね」なんて言ってしまったらフリーターになってしまった。

 大学卒業後、彼はバイト生活である。朝の通勤ラッシュに乗るわけでもない。残業などで遅くなるわけではない。学生時代から続けている居酒屋のバイトに行く。勝手知ったるところに行くわけだから人間関係も病気になってしまうほどのことはないようだ。

 「駅前でサラリーマン帰りの同級生に会った時にこの子はどう思うのだろう」と思っていた。どうか正々堂々としていてほしい。「惨めだ」と思わないて欲しい。就職をしないでバイトをしながら考える選択をしたのは君なのである。

 そんな生活から1年くらい経過をした時に彼は何かの勉強をしていた。勉強をして資格を取り、普通の会社に就職すると言っていた。

 その時に「それ好きなことなの?」と聞いたら彼は「いや…別に好きなわけじゃないけど」というので私はすぐに「じゃぁやめといた方がいいよ」「今の世の中『普通に就職』とか考えたって無理…無理…」「本読んだりぃ、なんか体験して、好きなこと見つけた方がいいよ」と言った。

 一般的に考えれば、彼は新卒という枠はもう既に逃してしまった。そして普通の会社に就職と言えど「大学卒業後、何をしていたのですか?」という質問が来るだろう。彼にはそのキャリアもない。君はまだ知らないかもしれないが、世の中というものはそう簡単に甘くはないのだよ。

 彼が打たれ強い性格かと言ったら、それには程遠い。彼の弱さは女3人の中で甘やかされたからであろう。

 今の状況ではいけないと彼は思っているはずだ。何かを探している。就職をしなければいけないと思っているようだ。どんどんもがいてみるのもまた人生である。

 今日釣りに出かけると言った息子を送り出し、玄関を閉めた後に「それで良いのだよ」と思った。


 釣りは君の新しい楽しみなのかな? どんどん体験をして、どんどん挑戦をして楽しんでくれ」と君に思う。

 そして世間の荒波に揉まれて傷ついて強くなって、優しくなれ。母は口には出さないがいつも応援しているよ。

 君は居酒屋でバイトをして料理を覚えてきた。経験は何一つ無駄になるものはないのだよ。

 君の人生は私と一緒でもしかしたら遠回りの道を選んでしまうのかもしれない。遠まりした分沢山のものを探したらきっと良い日がくるよ。

 君はまだ知らないかもしれないが、君の体験から自分で気づいて生きて行くことで、人生は何が飛び出すかわからないのだよ。もしかしたら「宝探しのゲーム」かもよ。

 でも一つ覚えていて欲しいのは、私が着実に老婆さんになるということだけは覚えていて欲しい。

 君の世話になることはないが、いつまでも元気なママでいることはないことを頭に入れて今後の人生を設計して欲しいのだ。

 母は今日も君が元気で過ごしてくれる事が、とても有難いと思う。

6月25日の息子へ。

           偉大なる母より





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?