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採用枚数論 ~クイックボール編~

 はじめまして。関東でポケモンカードをたしなんでいる高校生です。

 今回から自分の脳内整理のためポケモンカードの記事をかかせていただきます。はじめてということもあり、拙い文章になってしまいますが、少しでも目を通していただければ幸いです。よろしくおねがいいたします。

(注)私は口が裂けてもポケモンカードが上手なんて言える人間ではありません。環境デッキの理解度・プレイング・デッキビルド能力など、ポケモンカードにまつわる技術のどれをとっても、今この記事を読んでいただいている皆様の方が私の何十倍も優れています。それを踏まえたうえで読んでいただくと幸いです。もしあまりに的外れなことを書いていましたら、noteのコメント機能で指摘していただくと泣いて喜びます。

 記念すべき初回は、最近疑問に思ったことの言語化に挑戦してみたいと思います。それは、「クイックボール」というカードについてです。

1. はじめに

 CL愛知、CL横浜、シティリーグ、トレーナーズリーグ、ジムバトル、非公認大会…
 ポケモンカードの大会の開催数はプレイヤー人口に比例して近年爆発的に増加してきました。ところが、その一つ一つの大会において、採用枚数が最も多いカードは何かと調べた時、クイックボール(以下、クイック)が該当しない大会はないのではないでしょうか。おそらく、現在の仰天のボルテッカー環境では、スタンダードのデッキの95%以上でクイックは4枚採用されているのではないかと思います。

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 メインポケモンの展開補助ポケモン(デデンネGXやクロバットV)の確保など、試合における重要な役割をたった一枚のコストだけで果たせるクイックは、間違いなく強力なカードといえるでしょう。このカード4枚からデッキを作る人がいるのも頷けるし、数多のデッキ解説記事で『クイックボール4 説明不要』などと書かれるのもわかります。

 しかし、「カードパワーが高いこと」と「四投すること」は必ずしもイコールではありません。現に、サカキやマリィといったカードは、圧倒的なカードパワーを持っているにもかかわらず、採用枚数が三枚以下のレシピも多く見られます。それにもかかわらず、クイックだけはなぜか採用枚数が三枚以下のレシピをほとんど見ません。

 「クイックを採用する理由」の説明ができないポケモンカードプレイヤーはほとんどいないと思います。この記事を読んでいただいている皆様ならなおさらです。しかし、「クイックを3枚ではなく4枚採用する理由」を初心者にもわかるように説明することができるプレイヤーとなると、少なくなってくるのではないでしょうか。

 少なくとも私にはできませんでした。物事を演繹法で説明できないなら、帰納法で説明するしかありません。そして帰納法で説明するには、実験が必要不可欠です。(演繹法と帰納法という言葉の使い方が間違っていましたらコメントください。)そこで私は「クイックの採用枚数は本当に四枚でないといけないのだろうか。」「もし四枚でないといけないとしたら、その理由は何だろうか。」という疑問を解決するべく、今回実験を行ってみました。

 [余談] 上の主張を最も体現していると個人的に思うのは、2018年のインターナショナルサンパウロで優勝した、ゾロアークコントロールデッキです。

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 見ての通り、ダブル無色エネルギーが4枚ではなく3枚採用されています。ゾロアークデッキにおいてダブル無色エネルギーは絶対4枚採用するべきだと考えていた私にとって、この構築はとても衝撃的なものでした。同時に、世間の常識に反しているにもかかわらずインターナショナル優勝という最高の成績を収めたこの構築に、言い表せない感動を覚えました。この構築をみて今回の記事を書き始めたといっても過言ではありません。

2. 実験の方法

 クイックの採用理由を、私は事故回避であると考えています。自分のデッキのメインポケモンが何ターンたっても引けない状況や、手札に使えるカードがないにもかかわらずドローできるカードがない状況を、クイックは一枚だけで解決することができます。他にも、マリィやリセットスタンプなどといった手札干渉をされたあとでも、クイックさえあれば巻き返しが可能なことが多いです。

 逆に言えば、事故がおこっていない盤面では、クイックの必要度は低くなるわけです。自分の盤面が完成に近い状況であるならば、その時必要なカードはクイックではなく、相手の手札や盤面に干渉できるツールスクラッパーやサカキ、リセットスタンプなどといったカードであることが多いはずです。

 そこで今回は、クイックの採用枚数が四枚であるときと三枚であるときを比較して、事故の起こりやすさの違いを探っていこうと思います。もしも事故の起こりやすさに大きな違いがあれば、四枚目のクイックの価値は高いことになります。逆に事故の起こりやすさに違いがほとんどないなら、デッキの枠を一つ生み出せるクイック三枚採用の方が優れていることになります。

 実験で使用するのは、環境デッキの中でも特にクイックへの依存度が高い(と個人的に思っている)ズガドーンデッキにしました。構築は私が最近愛用しているものになります。

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 試合ではなく実験のために使うものであるため、デッキ構築の稚拙さには目をつぶっていただきますと幸いです。

 比較するデッキとしては、上のデッキからクイックを一枚除外し、61枚目のカードとして常々ほしいと思っていた二枚目のエネルギー回収を採用したものにしました。

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 次に、ズガドーンデッキにおける「事故」の定義をしたいと思います。ズガドーンと同じく現環境のTier1に挙げられているデッキに、三神ザシアンというものがあります。今回は、全ての非Vデッキの最大の壁ともいえるこのデッキを仮想敵として、「事故」の定義をしていきたいと思います。

 三神ザシアンとズガドーンのマッチアップで最も大事になるのは、アルティメットレイの可否だと考えています。アルティメットレイまで打たれると、ビーストブリンガーやジラーチ♢などのギミック抜きで勝ちきることはほぼ不可能でしょう。逆に、オルタージェネシスの直後にアルセウスを倒せれば、ズガドーンにかなりの勝機が見えてきます。

 そこで今回は、後行2ターン目までに300ダメージを出せないことを事故とすることにしました。例外として、後行3ターン目にビーストブリンガーつきズガドーンが350ダメージ(大きなおまもり想定)出せた時は事故ではないとします。なお、三神ザシアン側は毎回先行をとり、先行1ターン目にクチートGXを出してくると仮定します。その後、先行2ターン目にオルタージェネシスGXをうち、先行3ターン目にマリィをうちながらアルティメットレイをうってくるものとします。なお、先行2ターン目にマリィをうてる確率は三神ザシアンの構築によって大きく異なるので、うたれた場合とうたれなかった場合両方で実験します。この試行を各々のズガドーンで20回ずつ繰り返し、事故の起こった回数を比較します。

 まとめると、以下のようになります。
・三神ザシアンとズガドーンのマッチアップを想定
・三神ザシアン側先行、ズガドーン側後行
・三神ザシアンは先行1ターン目にクチートGXの魅惑のウィンクを使用。2ターン目にマリィをうってくる場合とマリィをうってこない場合を両方比較。三ターン目は必ずマリィを使い、アルティメットレイでバトル場のポケモンを倒すとする。
・ズガドーンは後行2ターン目までに300ダメージを出す、あるいは3ターン目にビーストブリンガーつきのズガドーンが350ダメージを出すことができれば成功(事故ではない)。どちらもできなければ失敗(事故)。
・なるべく普通のプレイをする(相手の先行2ターン目のマリィが前提の場合、後行1ターン目の手札には不要札を集めるのが正解だが、本来マリィをうたれるかどうかはわからないため、必要札を集めるようにする。)
・クイック4採用のズガドーンとクイック3採用のズガドーンで先行2ターン目にマリィをうたれた場合、うたれなかった場合をそれぞれ20回ずつ行い、「事故」の回数を算出し比較する。(つまり合計試行回数80回)

3. 実験の結果
 

<クイック4採用ズガドーン>
1.マリィを打たれた場合
 後2で300ダメージ 10回/20回 
 後3でビーストブリンガーこみ350ダメージ 2回/20回
 失敗(事故) 8回/20回
2。マリィを打たれなかった場合
 後2で300ダメージ 14回/20回
 後3でビーストブリンガーこみ350ダメージ 3回/20回
 失敗(事故) 3回/20回
合計事故回数 11回/40回
<クイック3採用ズガドーン>
1.マリィを打たれた場合
 後2で300ダメージ 7回/20回 
 後3でビーストブリンガーこみ350ダメージ 1回/20回
 失敗(事故) 12回/20回
2。マリィを打たれなかった場合
 後2で300ダメージ 13回/20回
 後3でビーストブリンガーこみ350ダメージ 2回/20回
 失敗(事故) 5回/20回
合計事故回数 17回/40回


 以上より
クイック4採用ズガドーンの事故率…27.5%

クイック3採用ズガドーンの事故率…42.5%
となりました。

4. 考察
 

 結果を見ていただければわかる通り、クイックボールを1枚採用しないことで、事故率に15%の差がうまれました。つまり、7試合に1回ほどの割合で、「クイックを一枚採用しなかったせいで事故が起きた」試合が生まれるわけです。CLやシティリーグなどの大型大会では、基本的に5試合~10試合、勝ち残ればさらに2,3試合行うことになりますから、この差はかなり大きなものになるでしょう。

 15%の事故率の差を1枚で補完してくれるカードを、私は4枚目のクイック以外に思いつきませんでした(強いて言うならマグノリアなどのドローサポートでしょうが、ズガドーンデッキにおいてはあまり採用したくありません)。よって、4枚目のクイックの価値はかなり高いといえると思います。

5. 反省・結び
 

 ここまで見てくださった皆様には大変申し訳ございませんが、はっきり言って今回の実験は問題点だらけです。三神ザシアンというデッキはアルティメットレイの前にアルセウスを倒されたとしても非Vのポケモンをうまく使えばズガドーンに問題なく勝つことができますので、「事故」の定義をあのような形で定めることは不自然です。加えて、ズガドーン側のデッキ構築や私自身のプレイングも、決して褒められたようなものではありません。
 
 また、最終的な結論である「4枚目のクイックの価値が高い」というのも、最初からわかりきっていたことだと思います。でなければ、三神ザシアンやズガドーンといったたねポケモン主体のデッキに、原則クイックよりもパワーの低いプレシャスボールやキャプチャーエネルギーといったカードを採用する理由がなくなってしまいます。こういったカードの主な役割は5枚目以降のクイックであり、「4枚目のクイックの価値は高い」なんてことはほとんど前提にして採用されているのではないかと思います。

 しかし、私は今回の実験を時間の無駄づかいだったとは思いません。世間で当たり前だと認識されていることに疑問を持ち、実験という遠回りな方法を使ってでも自分なりに説明することができたのはとてもうれしいです。今後も、今回のように地道にカード1枚1枚の理解を深め、精進していきたいとおもいます。

 最後になりましたが、このような駄文を最後まで読んでくださり本当にありがとうございました。もしここまで読んで、少しでも記事の内容に納得してくださった方がいらっしゃいましたら、言葉にならないほどうれしいです。感想や質問、指摘、批判などは大歓迎ですので、よろしければコメントしてくださると幸いです。


Learn from yesterday, live for today, hope for tomorrow. The important thing is not to stop questioning.

- Albert Einstein


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