母が嫌い父が嫌い

小学校低学年の頃だったと思う。
居間の隣で妹と二人で寝ていたが目が覚めた。
両親が喧嘩をしている。

詳細は覚えていないが、父が怒鳴っていた。
怖くて怖くてしばらくじっと様子を伺っていたが
大きな音がした。
思わず飛び出した。泣いて「やめて!!」と止めに入ったように思う。
父は酔っていたのか激昂していたのか分からないが、
母につかみかかって奥の両親が寝ている寝室の衣類タンスに
母を突き飛ばした(と思う)

母は泣いており、私は父と母の間になんとか入って
止めようとしていたように思う。
子供は本能的に母親を守ろうとするというのを何かで読んだ事がある。
私はそれをしたのかもしれない。
そのあとどうやってまた眠ったのかはわからない。

翌日の様子だけが鮮明に映像として記憶に残っている。
学校から戻った時間だと思う。台所の窓からは明るい日差しが入っている。
茶碗を洗っているか、食事の支度をしているかしている母を私は見上げている。
白目が血走っている。泣きすぎなのか眼底出血していたようだ。
母が言う。
「お父さんとお母さんが別れたらどっちに着いてくる?」
私はそんなこと言わないでと泣いたように思う。

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中学に入った私は、小学校の頃の優等生ぶりから、推薦でクラスの副委員長を務めることになる。小学校でもクラス代表などを何年かしていたこともあり、特に違和感もなく引き受けた。家に帰って報告すると母は喜んでいた。

あまり群れて行動するのが得意ではない私は、適当にその場その場で適当な友人関係を作って過ごしていた。放課後は適当にその場のノリで先輩だろうが男子だろうが特に気にすることもなく、他愛もない会話をしたりじゃれあったりしていた。

ある日突然話したこともない他のクラスの女子から教室の後ろの入り口に呼び出され、廊下で3人ほどに囲まれる。「おめー調子こくな」私はまず言葉の意味がわからず「なんのことかわからない」と答えると「おめえ、頭いいんだから考えたらわかるだろ」と言う。さらに訳の分からなくなった私は「何か気にくわないことしたなら言って欲しい」というが「とにかく調子にのるな」「なんとか言え」の一点張り。大体、話もしたことない人からそんな事を言われる筋合いがない。

最初はこのよくわからないやり取りにも真面目に受け答えしていたが、だんだん馬鹿らしくなって休み時間をただ囲まれて過ごすのだが、クラスで適当に過ごしていた友達が心配して話を聞いてくれ、愚痴っていたところ、他のクラスメイトがその様子を彼女の伝えたらしく、今度は「何チクってんだおめえ」になった。

兎に角私のことが目障りなのか、気にくわないのか「今日生理でイライラしてるから」などとと毎日懲りずに絡んでくる。「大丈夫?」と聞く友人に「相談するとチクっただとかとまた絡まれるから言わないでおく」などと言ったような記憶があるが、そんなこんなで最初は話を聞いていてくれた友達ともなんとなく距離を置くようになってしまった。

ある日、朝「学校に行きたくない」と親にもらし、学校で受けている理不尽を母に伝えた。休んだ私の元に担任が訪問した。
翌日放課後、その子達は先生達に囲まれ、指導を受けたようだ。
親分格の子が泣きながらひとり廊下で待機していた私に謝ってきた。
訳の分からないイチャモンはそれ以来無くなったが、釈然としないまま学校生活を送り、真面目に過ごすことがバカらしくなり、小学校から続けていたバレーの部活もさぼりがちになり、今度は小学校からのバレーの仲間から部活を休むことを指摘されさらに面倒になり、仮病を使って早退などをするようになった。

タバコを学習机の引き出しに隠し持っていて、母に見つかった事がある。母はオロオロと泣きわめき、「誰に似たんだ」とひたすら言っていた。
こんな子に育てたつもりはないとかも言っていたように思う。
私は何こいつタバコくらいでこんな馬鹿みたいに喚いているんだろうと
冷めた目で母を見下していた。
泣きながら「お父さんに見つかったら私が怒られる」と言った。

その頃だと思う、夜中目がさめると両親が性行為をしている事が隣の部屋から伝わってきた。「気持ち悪い」と思った。

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高校生になるタイミングで我が家は引っ越し、自室が与えられた。
嫌いだった部活動から解放され、すぐにバイトを始め、適当に学校もサボり
好き勝手過ごしていた。
ある日、バイト代を貯めて買った1万円のZippoのライターを母に捨てられた。
3ヶ月もケースに入っていたのを眺めて、よく洋服を見に行っていたお店の店長にお願いしてなるべく売らないようにと取っておいてもらったものだった。

わざわざ私の部屋まで来て「捨てたから!」と言う。
私の上着のポケットから取り出し、外へ持ち出しどこぞへ放り投げてきたという。
「あんなものあるからタバコなんて吸うんだ」と。
頭にきた私は「バイト代貯めて買ったのに!1万円もしたのに!」と言うと
母はヒステリックになり、私に1万円札を投げてよこした。
その様子がとにかく私を苛立たせ、母を突き飛ばした。

その日以来、毎朝母が作る弁当を食べずに残し家でも両親とまともに話すこともしていなかったように思う。
そんな中、バイト帰りに夜遊びをして22:00くらいだろうか、家に帰ると父が居間から玄関へ無言で来て、私を殴った。かけていたメガネが割れた。

「お父さんに謝りなさい!」と言う母の声を無視して私は黙って自室で
荷造りをして、そのまま玄関から出て行き、繁華街へ向かって歩いた。

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