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冬単が好きな人の話

MANKAI STAGE『A3!』ACT2!
〜WINTER2023〜

が、あまりにも演劇として素晴らしかったので、珍しくエーステについて一生懸命書いてみます。かなり主観です。贔屓目もあるでしょう。そしてネタバレしかありません。舞台のどうこうより原作のお話自体の感想もめちゃくちゃ含んでいる。長い。

一分一秒好きなお芝居しか無いので書きこぼしもあるし全然語彙も無いし進まないんですけど、すみません。

千穐楽を迎えたら、また違う気持ちになる気がするから、地方公演を終え凱旋を控えた今、ひとまず公開します。

はじめに、静かな夜〜アンドロイド〜!?なシーンの歌とダンスは楽しくて好きだったなー!春単の千景さーん!のシーンも大好きでしたが、それと同じジャンルと勝手に括っているあの曲。あの曲調とダンスでのシトロンくんの所作が私は大好きなんですよね〜!すっごく楽しそうだけどパキッと綺麗でどこかロイヤルなシトロンくんの服の裾捌きとダンスが大好き。機敏に動く表情も。本当に一挙手一投足が好き。あのダンスを見て目を奪われない人いる??と思っている。

シトロンにとっての大切なお話

シトロンのファンとしても、役者のファンとしても、今回の冬組公演は怖いほど楽しみにしていました。冬組の関係性も、ガイもとても好きだったので、もはや受け止めきれるか不安でした。それなりに覚悟して挑みましたが、予想を優に超える素晴らしさでした。

最初にシトロンの身元を明かされ、帰国することになる、と告げてからというもの
みんなで最後まで楽しいひとときを!とシトロンが望むも、覚悟してきておきながらまったく楽しい飲み会シーンが楽しめない。この時は流石に困惑しました。私はショックを受けているんだと実感しました。演劇をとても楽しんでいたと言って良いです。

しっかしまぁあんなに楽しい歌でダンスで見応えあるのにあんな入ってこないことある!?と思ったものです。
少しずつ楽しめるようになってから、支配人が後ろでずーっとぶっちぎりで酔ってるのが可愛くて好きだったなぁ!

シトロンが舞台上で泣いている、その異常事態、緊急性に困惑しながらも、それがマンカイカンパニーの人たちの前では起こらないことにシトロンの精一杯の優しさと王座につくものの意地を感じる。一人でしか涙を流さない。タンジェリンたちにも見せない。王座につくことがいかに大変なことかを物語る意味にもなっている。いろんな気持ちをとじこめて、そして、ガイに対しては心を解き放ってほしいと願っている。とんでもない!とんでもない!

「ガイ、そっちはどうだ?仲間はできたか?マンカイカンパニーは暖かいだろ?」
その良さを知っていて自分はみんなに会いたい気持ちが募る中、そこに残したガイのことを思う、歌に気持ちを乗せるシーン、痛々しくて今にも消えそうででも優しくて強くて儚くて美しくて悲しくて、でした。

何度か出てくる、ガイとシトロンがお互いへの気持ちを歌に乗せて届けるところ、どれも本当に二人の表現が大好きだったなー。二人の役者はこのお芝居をしただけで、より親しくなれたんじゃないかと思うほどでした。

笑顔が強さであり鎧である。それを破って仲間の元に助けを求めればいいけれど、そうしてしまうには背負うものが大きすぎる。助けを求めたりみんなの前で悲しい顔を見せることの方が、彼にとっては大変なのかもしれない。故に残酷な手段も選べる、その手段を身につけざるを得なかった環境下にいたことを感じて胸が痛い。そもそも王座につく人の気持ちなんて私たちどころか役者にとっても程遠いものだけれど、その重大さは見事に物語の中で表現されていたので、それとしっかり向き合っていました。つらい。

古谷さんの歌が進化するこの頃。今回はシトロンの見せ場もかなりありました。気持ちを歌に乗せることに関しては前から大好きでした。そんなところが見られる曲が今回はたくさんあって、切ないながらも幸せな時間でした。これに関しては今の古谷さんだからできたことだな、と素直に感じます。おかげでとてもとても気持ちが伝わり、沁みました。

最初の「ガイ」の呼びかけひとつで子どもの頃の回想だとすぐに分かる、すごい、と誰かのツイートを見かけましたが、その通りですね。
ガイと過ごしたいくつかの時間が豊かな歌の中で気持ちと共に表現されていて、綺麗で切ないシーンでした。

話が変わりますがそのシーンの前、支配人の「シトロンくん、今頃どうしていますかねぇ。」のセリフもいつも絶妙で好きだったなぁ。
支配人はいつもその場の空気を掴んでペース配分をしている。田口さんの力だなあ。

シトロンくん、「友達」という言葉に自分で発して明らかに食らってしまったり、最後に願いが叶って友人になれた時、うわっと涙が溢れてガイを抱きしめるシーンなんてもう、何年越しの思いでしょうか。

シトロンのエピソードって強いですよね。強いも変か・・・。一筋縄ではいかない?

兄弟とのいがみ合いの中で王座につくことへの葛藤と、ずっとそばにいた従者と友達になれないもどかしさと、いろんなものを抱えて日本に来ていた。
何が先で問題が生じたのかは定かでないけれど、あんなに素敵な人の周りでも、物語は?王族は?難しいことを起こすんですね。その中でもガイさんを見つけたこと自体は、とても良いことだったんだろうな。

そもそも王座につく、というのが大変なことだけれど、それを当たり前と思っていろんな教育を受ける中に更に人間関係があって、いろんなことと戦っていたんですね。そこで必要なものを身につけねばならず、笑顔という武器もそのひとつで、そしてあの人間性が出来上がったのだなあ。よくぞあの環境下で、あんなにも優しく育ったものだなあ。強いなあ。
演じるには重すぎる、シトロンくんて凄すぎる、とよく古谷さんが言っていますが本当にその通りだなと思います。ちょっと想像しきれないです。しかし、シトロンくんへの愛で溢れる古谷さん、シトロンくんがぶつかる壁にしっかりと向き合って、演劇している古谷さんを本当に尊敬します。好きで楽しんで愛してやってくれているのがありがたい。演劇マニアの古谷さんが挑んでくれて嬉しい。

追記(2023/5/18):
あえて言うことでもないかもしれないけれど、言ってしまえば架空のシトロンくんとの対話ができるのは、本当に古谷さんのすごいところ。
最近、“シトロンくんと2人で出かけた”とぬいを写真に撮っていました。
お人形と撮影すればまるでそれが生きているように関わることができる古谷さん、お茶目でロマンチストで、いつまでも童心を忘れない姿。某カードにもはまっているしなあ。笑
役者には大切なことなのかも。こんな考え方しちゃうのすら蛇足だし、普段は私も言葉にしないけれど。
(気まぐれ追記終わり)

タンジェリンの笑顔にシトロンが癒されていたのも、いいですよね。シトロンから受け継いだ笑顔だろうに。それこそ春組とのシーンも。人と人って影響しあっているんですね。

冬組が作り上げてきたもの

まず、冬組を中心としたキャスト陣の歌が素晴らしかった!
ガイとして迎えた輝馬さんの歌の実力は存じ上げていましたが、見せつけられました。
そしてそれに引っ張られるようにみんなスキルアップしていたような気がする。元から上手な方々だけれども。

曲のメロディも歌詞もめちゃくちゃに好きなものだらけだった。

東さんと丞のシーンは音楽と共に進むので尺が決まっているけれど、とても大切なシーン。
毎回すごく変わるわけではないけれど、変わらずとてもいいシーンだった。豊かな表現力で、見入っていたらあっという間に終わるけどしっかり残る。二人の間に流れる信頼感と、東さんを思う丞の優しい歌声やセリフ、東さんの丞の前だから出る砕けた表情や反応、そんな二人の関係性が許した、不意に流れた涙がたまらなかったですね。
ここも今回の冬単のとても大切なシーンで、楽しみにしていた時間でした。

北園さんのお人柄や俳優としての仕事ぶりを知ってから、大きな変化を持たせず常にいい芝居をする、ブレない、彼の性質が作った空間かも、と思いました。


ガイが冬組一人一人を知るために順番に訪ねて話をするシーン、それぞれのパートやリレーする順番、歌う声が本当にどれも大好きです。

誉のセリフ、「ありのままの彼を、好ましいと思っている」や、
東さんの「でもね」からの丞の話をするところが個人的には特に好きでした。(贔屓目もあるかな・・・)甲乙つけるものでも無いですけど。

前回の冬単、ミステリの最後のアドリブで足したセリフや、真夜中の住人から今日まで作り上げてきた関係性を思い、感慨深くなる瞬間でした。

そもそも「ボクらの距離」リプライズ〜て感じなのがずるい!すごい!冬組リーダーから始まる最強ソング。
今まで5人で確かめ合ってきた関係を6人目にも伝え巻き込んでいくパワーを感じる。静かで優しいけれどパワーを感じる。それが今のガイさんに必要で、届くように、もうこの時からガイの父親と同じようにみんながガイを受け入れ引っ張り上げようとしているんだ。すごい。(今また改めて感動している)

ガイの眠ってしまった側で見守る冬組、「大丈夫そばにいるよ」のユニゾンの優しさたるや。
密が冬組にもらった経験や気持ちをガイにも同じように渡そうとしていて、ここも今までのすべてを乗り越えてきた冬組だからできたシーンでした。

ガイの記憶を歌い語るシーンは、それまで感情を封じ込めてきたガイが解き放たれ、自分の記憶と向き合う、冬組に伝える大切なシーン。
ここを歌を含む表現で伝える、キャストへの信頼が生んだ演出だったのかもしれません。

感情が歌と共に盛り上がって、溢れて、自分は人間だ、苦しい気持ちも嬉しい気持ちも体から溢れて止まらない、というのが本当にたまらなくこちらに伝わってきて震えました。

「もう止まることはない」の歌詞で客席側に解き放たれるように広がる光も大好きだったなあ。

そもそも原作の話が良すぎる!
無理をすることはない、ありのままのガイでいいんだと言ってずっとガイを守ってきた父が、「ガイがたくさん笑えますように」と常に願っていたことの尊さ。それをそっと一緒に願っていたシトロニア。

そして「ありがとうシトロニア」のシーンでシトロンが舞台上、光の中に現れますが、
これは今現在のシトロンではなく、ガイの脳内にその時の感情が生んだシトロンてことですよね。
それってつまり、今までガイがシトロンから受け取ってきたものでできているシトロンだと思うんですけど。

感情をなかなか受け取れなかったガイが今やっとわかった、たくさんの愛情や表情がそれに表れているようでたまらないです。

いわばあの時のシトロンを演じるのは、ガイの役作りみたいなことで、二人で作り上げたシトロンだと思いました。少しずつ毎回表情は違ったけどいつもすごく“いい顔”をしていた。

ガイって、「花が綺麗だ」と言うところや、シトロンとのジャスミン畑の思い出を振り返って思い悩むところや、東さんの頭をぽんぽんするところや、シトロニアが育てた苗に爆速で反応するところや、紬やシトロンが悲しい顔をしたのがわかるところ、明らかに人間らしさが残っているんですよね。それを周りの人がさらっと掬い上げて気持ちを増幅したり、共有しようとしている。見ているこちらもあれ??って思うような人間らしさがずっと存在しているのを誰も逃していなくて。無駄な時間なんてひとつもない。マンカイカンパニーがシトロニアの言う暖かい場所であることが、着々とガイの心を溶かしていくのが目に見えてわかる。

奇跡みたいなカンパニーを覗きにこれてわたしは幸せだと思います。

劇中劇「怪人Fと嘆きのオペラ」

今回の冬組公演では、劇中劇がオペラというのがまず見どころであり大きな壁であったと思います。

あまりに説得力のあるFの歌唱力、素晴らしい輝馬さんの歌を中心に据えて、実力に加えて更に磨きをかけてきたキャスト陣の努力を感じました。

本当に一人一人褒めたいしメロディーも音も良い!もう全部好きでした。困った!

ここはもうキリがないのでささっと書きますね。

・まず「オペラ座のためのアリア〜」が好き
・お披露目の時のリチャードのソロも好き
・「もっと心に染み入るような」
カールの歌唱力や魅力を知っていながら、自分の歌い方に一つプライドを持っていてそれを極めようとするクリスの姿がとても好き。繊細に歌い上げるこのキャラクターが、GOD座には合わなかったがマンカイカンパニーで輝く紬そのものであり、まず紬が演じるクリスというのがとても好きです。
・その後丞演じるラウルが歌う前に入るピアノの音が大好き
・「歌」「歌」の呼応が好き。舞台の上で死ぬのが本望みたいな紬の演じる、Fにのめりこみ狂ったクリスが好き
・「歌は音の羅列じゃない」のところも歌詞もメロディも大好き
・リチャードのパートのメロディがいちいち好き。クリスに降りかかる不幸のパート、「耳狂わせる花束」良すぎる。お前だろ!とは思うけどとても好き。声もいい。
・そして怯えきって冷静さを欠いたリチャードが好き。本当に愚かな、人間の小ささを感じて愛おしさすらある。リチャードはでもそうして生きるしかなかったんだな。必死だった。一番人間らしかったのかもしれません。
・ファントムが必死にクリスを遠ざけ、ライバルは蹴落としていかなければと教わらなかったか!(ニュアンス)と言うシーンも、ああそう教わって苦しい人生を歩んできたんだな、と思いながら、ガイさんの過去も思い出しながら見るシーンですよね。たまらない。
・カールも純粋にクリスとの勝負に挑もうとしているのがたまらなかった!「歌を〜届けたい〜」から「持っているの〜だから〜」のところがよく響く日はテンション上がった。
・フィル「緻密なビブラートのテノール」の音が好き

冬組全員のテンションがどんどん上がっていき激しくなっていく。最高。冬組のお芝居最高。マンカイカンパニー最高。

緻密な台本・演出・スタッフワーク

・ザフラ語のシーンがどうなるか気になっていた。緑の照明も使って緻密に表現されていて分かりやすかった。

照明といえばわたしはエーステで窓から差し込む光とか、中庭の木漏れ日とか、いつも稽古場のシーンで時間帯が分かるような日の当たり方とか、本当に素晴らしいなって思います。今回は特に繊細で綺麗なシーンが多く、何度も綺麗な景色を見ました。

中庭?のシーン、サワサワ風の音がしたり毎朝誉さんが愛でていそうなバードの声がしたり穏やかな日和の中話す二人、とても素敵だったなあ。

・東さんが「天使を憐れむ歌」を外から見て、「みんなとこの場所に立っていたい」というセリフ。意味はもちろん異なるけれどまるでシトロンの思いでもあるかのように、一緒に春組も見ている。あれは舞台ならではの絵でした。ドキッとした。

・舞台セット素晴らしかった!シャンデリアの表現や倒壊のシーンも地方公演は規模に合わせて減ったり蝋燭の倒れ方も変わったり、オペラの華やかさ、王宮の壮大さに合わせ、セットも華やかに、派手に、迫力満点にして見せたの凄すぎました。

・GOD座がずっとエネルギッシュにコミカルに元気をくれるの本当に大好きでした。本当に褒めてるんだけど本当に面白い。咲也のシトロンを思うセリフにたまんない気持ちになってたらGOD座に持ってかれる流れ、いつも助かってました。
あと飛鳥晴翔の前アナが世界一すき!

会場中誰も拍手しないエチュードバトルを堂々と成し遂げる姿いつもその図太さに心の中で拍手していました。

パラパラとかフルール賞ノミネート決まった時のアホみたいに喜んでる時間とか大好きでした。oh GOD!本人たちは本気だからかっこいい。

全力だから面白くて愛おしくて、ファンサ貰いたくて仕方なかったです。

GOD座語りすぎる。笑
どうか舞台版でもGOD座の未来まで見守らせて欲しいです。

・ラナンキュラスの開花が、ガイさんと重なる絵とかたまらなかったですね。

・春単がANSWERSで始まり、冬単はANSWERSで締めるの、良すぎる。ACT2が繋がっていることがわかる演出が光りましたね。

おわり

ああなんかたくさん書いた!ふぅ!まだまだきっと思い出してこっそり書き足しているかもしれません。
本当に、原作のファンとして、キャラクター、役者のファンとして、人が作る演劇としてこの公演が最高の形で残ったこと、感謝します。幸せです。原作読み返したいなとも思う。

見ても見ても足りなかったけれど、停滞することなく進化し続けて終わり、また新たに始まることも、幸せに思わないと。

言ってしまえば初演が始まった時から待っていたシトロンくんの試練、それに挑戦する古谷さん、進化し続けるマンカイカンパニーとそのキャストのお芝居を見届けることができてよかった。

大切に胸にしまいます。

一個人の感想をあれこれ書きました。お付き合いいただき、ありがとうございました。長くてごめんね!



P.S.
後日記した、卒業によせてはこちら。

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