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播磨へ・前編【不思議な話】

(最初の投稿から大幅に修正しております。スキをくださった方々、すみません)

私は若い頃から長年にわたり、様々な戦国時代の夢を見るという不思議な体験をしてきた。その夢での私はいつも織田軍にいる。

夢の中の私は、織田軍内で起きた不審な出来事の数々や相次ぐ謀叛、いくつもの戦争の解決に取り組みながらも、こじれる戦争をどうにも出来ず苦しみ抜いて死んでいった。

これらはただの夢だが、私自身にとってはただの夢ではない。これは本当に私の前世のことなのではないかと思う。

他人様にそれを信じてもらおうとは思わないし、学校で習う歴史とも違う。これは私の個人的な執念の問題だ。

私は前世の無念を晴らすという執念によって動いている。死んでもわからなかった謎を調べるため、前世の因縁の残る城跡や戦場跡を訪れては、当時の痕跡や、散らばった誰かの思いの残像を拾い集める。そしてあの時わからなかった答えを何が何でも探してやるのだ。

昨日は播磨まで行ってきた。

去年のことだが、戦国時代の摂津国・池田の豪族たちが夢に現れたことがあった。かつて彼らの地域では、豪族たちによる合議制で政治を行っていたのが見えた。

そんな豪族たちの間でなにかとても恐ろしいことが起きていたという映像を見せられた。詳しいことはわからないが、豪族の一人が不審な死に方をしたり、謎のトラブルが次々と起きていたらしい。

豪族たちは「次に暗殺されるのは自分ではないか?」と酷く怯えていた。三〜四人の豪族が夜ひっそり集まって事態の収束のため話し合う。

彼らにも事態が掴みきれず答えは出ない。考えあぐねた結果ひとまず、「赤松に相談してみよう!」そう言って、播磨国の大名・赤松氏を尋ねていくことになった。そこでこの夢は終わっている。

その夢を見てから現在まで、もう一年近く間が開いたが、昨日ようやく赤松氏の痕跡を求めて播磨国を尋ねることにした。摂津国・池田の豪族たちが私に何を伝えようとしていたのか、それを知る手がかりを探すためだ。

とはいえ、広い播磨のどこに行けばいいのかわからない。ちょっと調べると赤松の城は山城が多そうだ。置塩城なんかは本格的な山のようで…

まぁ、霊視するだけなので登らなくてもいいんだが、そもそも車が運転できない私にはその城の近くに行くだけでも難儀だ。

そもそもかつての赤松氏の残像を探すだけなら、城じゃなくて普段暮らしてた居館跡に行けばいいのだが、なぜかこの時はそれが思いつかなかった。とにかく城に行かなくてはと思い込んでいた。

どの城に行けば良いのか考えあぐねていたところ、先日、noteで赤松氏の話をしていた時に、まなきねこさまがとある城の話をして下さったのを思い出した。検索してみると、播磨の西、それも私の母方の先祖が暮らしてきた地域の近くにあるようだ。

「よし!じゃあ、ここに行こう」

どんな城かも知らないが、そこに行けばひとまず先祖の力も借りられる気がする。とりあえず初めての播磨の城はここにしようと決めた。最初に先祖の霊たちに接近しておけば、この先何度か訪れるであろう播磨国への最初の足がかりともなろう。

「小さな城みたいだから、あんまり重要な城じゃなさそうだが、でもまぁ、縁を感じたのだからまずはここに行ってみよう!」

地図を見ると、この城の近くにもあちこち城があるのがわかった。

「ふ〜ん?じゃあ、この城を見たあとは、周辺の別の城にも行こうかな。私は山城は登らないので、城山のふもとを歩くだけだ。二つ城を見るくらい、余裕だろうな。」


朝、私は姫路までの電車の車中では昼飯のことを考えたりしていた。「駅そばにしようかな?去年初めて食べたけど、あれ、和風のつゆに中華そばが意外と合うんだよなぁ〜!」

少し旅気分で浮かれてしまう。いやいや、今から城跡に行くのだから、浮かれてる場合じゃない。食べるのはあとだ。帰る時間を考えると今はとにかく先を急がねば。

姫路からワンマン列車に乗り換えた時点で、ちょっと嫌な予感がしてきた。

「あれ?これって田舎の列車だ…… 」

ワンマン列車というと、降りるときに運転士さんに切符見せるんだっけ?あれ?乗る時は見せなくていいの?わかんないぞ……、普段乗らないから緊張してしまう。

(あ、そうそう、で、これに何分乗るんだっけ?)

ワンマン列車の到着予定時刻を見て驚愕…

「えっ、姫路から一時間くらいこれに乗るの??ええっ??」

私を乗せたワンマン列車は山間の集落をガタゴト進み、車窓は面白い形の山々を次から次へと映して流れ、列車はさらに山間をぐねぐね進み、山を越え、さらに山を目指して進んでいく。

山、山、山…!

私は慌てて母にLINEした。

「お母さん!もしかして、お母さんの田舎って、本気の田舎なん!??兵庫って、もっと都会かと…」

「あんた、今頃何言うてるのん?私は『うちの田舎には山と川しかない』と何度も言ってきたやろ。」

「いや、それは聞いてたけど、肝心の山の数を聞いてなかった!列車がさっきから、山山山、山をいくつも過ぎて、まだ山が見える!!山しかない!!」

「川もある」

「いや、そこはいい!山が多すぎる!!」

「そうや、それがうちの田舎や。ちなみに、あんたが行く城があるとこは、うちの田舎よりもっと山の向こうやで。」

「ええええええええーーー!?」

列車の中、心で叫んだ。

(まじか。。。どうしよう……私、ちゃんと帰れるのかな…)

こんなとき、自分は意外に都会育ちなのだと思わされる。電車もバスもたくさん走っている大阪に慣れていると、その感覚のまま山里を訪れて交通の不便さに冷や汗がにじむ。「来たのはいいけど帰れるのかな?」慌ててスマホで帰りの列車の時間を確認する。本数は1〜2時間に一本、思ったより本数はある。帰りの時刻は遅くとも19時台に乗れば帰れそうだ。

ただし、人身事故などで列車が止まらなければ、だ。最悪のことを考えてちょっと怖くなってきた。

(いくらなんでももうちょっと事前に調べてから来るんだったなぁ…)

私は普段霊視の邪魔になる先入観を払うため、霊視旅行をする際はなるべく何も調べないことにしている。霊視というのは繊細なもので、ちょっとした思い込みで捉え方が変化する。なので今回も何も調べずに来たのだったが…

ガタンゴトン、車窓には次々と個性的な形の山々と田園風景が流れては去り、また山々が見えてくる。どんどん山を目指して進む。はて、このワンマン列車どこまで走ってるんだ?

路線図を確認しようとスマホを見ると、目的地の隣の駅名が目に飛び込んできた。

美作みまさか●●』と書いてある。

(はああああっ!?美作あああ!!???ということは、岡山ああああ!!?)

「おいおい、もしかして今から行く城跡って、国境くにざかいにあるのか!?」

美作と播磨の国境にある城だとしたら…

「もしかして…、今から行く城って、重要拠点じゃねーか?あ、それで周辺に城跡多いのか!!」

小さめの城だと思って舐めてた。気楽な気分で来てしまった…

アカン…、心の準備ができてない。。。今から行くとこはたぶん国境を守る最前線の城だ…

怖くなさそうな城を選んだつもりが…

お、おしっこちびりそうになってきた……

ガタンゴトン…ワンマン列車が揺れる…、よ、良かった…トイレ付き列車で…

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