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私には不思議な力があるんです【ちょっと思い出話】

私が子供だった頃、当時はまだ昭和の時代、駅前で道ゆく人に声を掛けて、おでこに手をかざしている大人たちを時折見かけました。子供の私から見るとおばさんでしたが、今思うと二、三十代の若い女性が多かったと思います。自分の子供を連れてる人もいたかな…

ランドセルを背負った登下校の子供に手をかざすために、小学校の近くでずっと立ってる大人もいました。「私があなたのおでこに手をかざすと、おでこが温かくなるから試しに受けてほしい」と子供たちに声を掛けるんです。今の時代なら即通報案件ですね。昭和の時代は色々ゆるかったのです。

そして、実際に手をかざしてもらうと温かく感じるんですよね。

「おい、受けたんかい!」と突っ込んであげてください。ランドセルを背負っていた頃の私は、好奇心には抗えないクソガキでした。怖がる友達をそっちのけで、私はおでこを差し出します。手をかざされると間もなくおでこがじんわり温かく感じられてきました。

「ほんまや、なんかちょっとジワ〜っとあったかくなってきた!」

私が笑ってそう言うと、手かざししてくれたワンピース姿の女性はとっても嬉しそうに微笑んでいました。二十代半ばくらいの中肉中背なのに、どことなくか細い雰囲気の人でした。

なんだか寂しそうな笑顔だなと思ったのを覚えています。この人は誰かに信じてほしかったんだな… 子供ならわかってくれると思って小学校の通学路にずっと立ってるんだなって。

(うん、わかるよ。ほんとにあったかかった!)

家に帰って母に報告すると、霊感がある彼女はそれを「普通のことや」と言いました。人間には目に見えない『気』のようなものがお互いにあるので、手をかざせば通じ合って普通に温かく感じる。それは当たり前のことだと。

「普通のことやから驚くことない、さぁさっさとご飯食べなさい」みたいな感じで母はあっさりしたもんでした。

普通のこと。

そう言ってくれる人がすぐ身近にいたなら、あの時のワンピースの女性も小学校の通学路でずっと立ってる必要はなかったのかもしれないな……

今、ほんのりそんなことを思いました。


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