日本のゴリラ

(文:ryotaro)

先にyoshiroがJames Taylor『Gorilla』について投稿していたのを受けて、僕はこのアルバムを紹介することにしましょう。

夏木マリのアルバム『gorilla』です。
渋谷系の代名詞とも言えるPIZZICATO FIVEでお馴染みの小西康陽さんとコラボレイトした二枚めのアルバム。全8曲、約30分。
7曲は小西さんの作詞・作曲・編曲による楽曲が収録されている。
夏木マリさんについては、かっこいい女性、というアバウトなイメージのほかに詳しくはないし、実はその「かっこいい」というイメージ自体も小西さんとのコラボレーション・アルバムを何枚か聴いたことによって得たのだけど……

まぁ、要するにひとことでこのアルバムについて言うなら、かっこいいんですよ(笑)
音楽はもちろん、ジャケットのデザインもね。なんたって小西康陽プロデュースですから。
余談ですが、ジャケットについて小西さんはこんな発言をされているそうです(Twitterのbot情報ですが)。

印税契約を結ぶときにパッケージに関する項目があって、ピチカートはその%が高かった。つまり凝ったパッケージにすることでコストが掛っていて、アーティストが自腹を切るような契約だった。その分何をやってもいいだろうという気概で制作していた。

さて、このアルバムの中で1曲だけ小西さんのオリジナルではない曲が入っていて、それがジェイムズ・テイラー作詞・作曲の「ゴリラ」なんです(やっと本題に戻りました)。ちなみにこの曲だけアレンジも小西さんではなく、音楽家/文筆家/音楽講師として精力的に活躍しておられる菊地成孔先生と、菊地先生とともにSPANK HAPPYで活動していた河野伸さん。
(やっと戻った本題からすぐに逸れますが、菊地先生、と呼ぶのは僕が大学生のとき菊地先生が担当されていたジャズ・ポピュラー理論の講義を受講していたから。もっとも授業は3回に1回の確率で休講だったし、授業内容といえばCDJでジャズ・ポピュラー音楽史のエポック的音源を次から次に流したり、教室のグランドピアノを鳴らしてリディアン・クロマティック・コンセプトだの下方倍音列だのを説明したり、テストは十数曲音源を聴いてそれぞれについて批評めいたものを書くというもので、難なく秀——5段階中の5——を取ることができちゃうすごい授業でした・笑)

ええと、なんだっけ、そうだ、ゴリラだ。そうだゴリラ、行こう。
ということで改めて、まずはJames Taylorの歌うアメリカの「Gorilla」を聴いてみましょう。

これはウクレレの音色ですか、いい味を出してますね。ゴリラにウクレレ。画としてもなんとも微笑ましい組み合わせです(笑)
そういえば最近読んだ文庫本に渋谷直角『ゴリラはいつもオーバーオール』(幻冬舎文庫)というのがありまして、この本の「タイトルに深い意味はあまりな」くて、グッズとして「バナナを持っているゴリラと、オーバーオールを着ているゴリラ、それ以外のゴリラを全部買」い集めている渋谷さんの友人にちなんでいるそうですが、果たしてウクレレを持っているゴリラなんていうのはあるのかしら。

(ちなみに渋谷直角さんの代表作?に『カフェでよくかかっているJ-POPのボサノヴァカバーを歌う女の一生』というマンガ——『このマンガが酷い!2013』ベスト1に選出されている、らしい——があって、表題作の最初のシーンではPIZZICATO FIVEの「スウィート・ソウル・レヴュー」が歌われています。)

またまた脱線しましたが、いよいよこちらが夏木マリの歌う日本の「ゴリラ」です。日本語詞は小西康陽によるものです。

こちらのバージョンではウクレレの代わりに、こちらではチェンバロの音色が効いてますね。ゴリラにチェンバロ。果たしてチェンバロを弾いているゴリラのグッズは……

なお上にYouTubeリンクを貼ったのはアルバム『13シャンソンズ』からの音源ですが、本稿で紹介しているアルバム『gorilla』のトラックでは冒頭に15秒ほどサックス・ソロのメロディーにのせて、マリさんが次のように朗読しています。

「さて、みなさんは、誰だってゴリラを見たことがおありでしょう。これはアメリカのジェイムズ・テイラーという人が書いた、ゴリラについての歌。」

中古でしか扱いがないようですが、とにかく「かっこいい」アルバムなので、中古CDショップなどでチェックしてみてください。

そして最後に、先月、シンシナティ動物園で射殺されてしまったニシローランドゴリラ「ハランべ」(17歳、体重180kg)に哀悼の意を。

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