公取委

独占禁止法について

理念

日本の独占禁止法はアメリカの反トラスト法がもとになっている

元々、特許法などに代表されるように、発明家や資本家を保護することで資本主義的な経済発展を促す法律が存在していたが、これらの権利が濫用されるようになってしまい、競争を促すために大企業側をけん制する法律が必要になった

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ハリウッドが米国の文化の中心である東海岸ではなく西海岸側に設立された理由は、当時の映画大手による特許権の濫用から逃れるためであった

一方日本の場合、独占禁止法制定自体が戦後の混乱期だったこともあり、独自の発展を遂げる
 ・例えば、日本の場合中小企業の割合が多く、大企業による中小企業の抑圧を防ぐことに重点を置くという要請が存在した
 ・また、日本独自の商法なのか、大企業による過剰商法(商品を買ったときについてくるおまけがやたら豪華など)が1950年代ごろは問題視されていて、「不公平な競争」を防ぐ必要が生まれた
 ・一方で、日本経済立て直しにあたっては大企業のトラストをある程度容認しなければならず、そちらのガードが甘い状態が続いた

という細かい差異はあれど、基本的には

「健全な競争が健全な資本主義経済発展をもたらす」

という価値観の元、「健全な競争」のためにしてはいけないこととそれに対する罰則を定める、というのがいずれの国においても独占禁止法の趣旨

禁止行為

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私的独占
いわゆる独占行為
・不当な価格競争などで競争相手を排除・ないし競争相手の参入を妨害する「排除型私的独占」と、株式取得などで他事業者の活動を制約し市場を独占しようとする「支配型私的独占」の二つに大別される

・また、これ以外の行為も含め、独占禁止法の対象となるのはいわゆる企業だけではなく、社団や財団・組合のような事業者団体もである

不当な取引制限
・本来、各事業者が自主的に定めるべき商品価格を事前に連絡を取り合って共同で決める行為である「カルテル」と、公共工事や公共調達に関する入札に際し、事前に受注業者や金額を決める「入札談合」がこれに含まれる

企業結合規制
・合併や株式取得などで事業体の規模が拡大することがあるが、その結果として市場をコントロールしてしまえるような大企業が成立してしまう場合、企業結合は禁止される

独占的状態の規制
・通常独占禁止法の規制はカルテルに代表されるような、「行為」を禁止するものだが、例えば50%超えのシェアを持つ企業が存在するなどの理由で価格が下がらない硬直「状態」が発生することがある。
この場合、競争を回復させるために公正取引委員会は、当該事業者の営業の一部譲渡を命ずることができる

不公正な取引方法に関する規制
・「自由な競争が制限されるおそれがある」「競争手段が公正とはいえない」「自由な競争の基盤を侵害するおそれがある」等の観点から取引方法が禁止される場合がある
具体的な事例としては、
 ・共同ボイコット
 ・不当廉売(恒常的に原価よりも安い金額で販売する。セールなどで一時的に低価格で販売するのはこれにはあたらない)
 ・再販価格の拘束(商品の供給元が小売業者に対し、定価販売を強要する)
 ・拘束条件付取引(取引に対し条件を付ける。例えば、アマゾンが通販サイトへの出品を希望する事業者に対し、アマゾンに出品する際は、他の通販サイトに出品している価格以下で出品するように、という条件を付けて問題となった)
 ・優越的地位の濫用
 ・競争者に対する取引妨害
が対象となったことがある

下請法に基づく規制
・親事業者と下請事業者の間の取引を公正にし、下請事業者の利益を保護するために、親事業者による受領拒否や下請け代金の支払い遅延・減額、返品、買いたたきなどを規制

違反時の罰則

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一般人からの報告、中小企業庁の申請、公正取引委員会自体の探知、違反企業からの報告によって調査が始まる
 ・違反企業が報告することがあるのか?と思うかもしれないが、公取委の調査が始まる前に申告することで課徴金が減免される「課徴金減免制度」が存在する

・調査としては行政調査犯罪調査がある
 ・犯罪調査の方は、調査の結果事件性があるとなった場合、起訴につながることもある
  ・罰則の重さはケースによって異なるが、私的独占や不当な取引制限に対しては、法人なら「5億円以下の罰金」、個人なら「5年以下の懲役または500万円以下の罰金」
 ・行政調査の結果として下されることがある行政処分としては、排除措置命令課徴金納付命令がある
  ・排除措置命令は違反行為を止めさせること、課徴金納付命令は国庫に課徴金を納めるように命令する

参考

公正取引委員会「独占禁止法の概要」

https://www.jftc.go.jp/dk/dkgaiyo/gaiyo.html

企業法務弁護ナビ「独占禁止法とは」

https://houmu-pro.com/contract/59/


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