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映画「裏窓」で無茶する未来のお姫様

ローマの街中でお姫様が大暴れというアクション映画があるが、映画「裏窓」の主役はお姫様ではない。この映画に出演した若い女優さんグレース・ケリーは2年後に本物のお姫様になった。未来のお姫様は、どんな役を演じたのだろうか?

「裏窓」って、どんな映画?

年代:1954年
分野:サスペンス
撮影:カラー
時間:1時間52分

物語をひとことで言うと
怪我で身動きの出来なくなったカメラマンの部屋に訪ねてくる恋人が、近所で起こる事件をかぎつけ犯人を追い詰めようとする物語。

カメラマンのジェフリーズ(ジェームズ・スチュアート(※))は、仕事で足を骨折、身動きが出来ず自宅アパートで静養している。ニューヨークのアパート街。真夏の空気がけだるさを誘い、自室の裏窓からは、近くに住む、様々な背景を持った住民の、いつものような日常が垣間見える。それが冒険家カメラマン、ジェフのささやかな冒険となっている。

そんな退屈なある日、ジェフの恋人、トップモデルのリサ(グレース・ケリー(※))が裏窓から見た光景に疑問を抱く。何か事件が起こったと直感した彼女は真相を突き止めようと大胆な行動に出る。そして真相に近づこうとする中、彼女とジェフの身に危険が迫る。

配信にはない、付録映像が楽しいDVDパッケージ

2003年頃になって購入したDVDパッケージ

「裏窓(※)」のDVDだけではないが、パッケージ製品にはメイキング映像が収められている場合が多い。このDVDには、どのようにセットを組んだのかとか、演出の工夫、役者の回想など、ヒッチコックファンには興味深い内容が含まれている。

DVD化するためのリマスター作業にあたり、オリジナルフィルムの痛みがひどく、修復に手間がかかった様子も語られており、ヒッチコック作品でさえこうなのか、と大変驚いてしまった。

ヒッチコック作品との出会い

ヒッチコックを映画館で見たのは「フレンジー(※)」「ファミリープロット(※)」という最晩年の作品だけで、それまではヒッチコックを知らなかった。その後、「(※)」「サイコ(※)」「めまい(※)」を見て彼の作品にはまる中でこの作品にたどり着いた。

「鳥」「サイコ」「めまい」 では、「めまい」が一番好きなのだが、好きな理由は女優さん。「鳥」は登場人物が目立たないし、「サイコ」はアンソニー・パーキンズがほぼ全てである。 「めまい」 は、助演の女優さんの立場が物語の進行にとても重要な役割を果たし、物語に深みを与える。女優さんが活躍する映画は好きかもしれない。

「裏窓」は、ヒッチコックの作品の中で、女性が事件解決の切り札となる限られた作品であるし、グレース・ケリーの演じるリサがとても魅力的で印象に残りやすく、無茶な行動がハラハラ感を高める効果を出したと思う。

贅沢な参加者たち

この映画の原作(原案)がミステリー作家のウイリアム・アイリッシュ(※)であると知ったのはずっと後。アイリッシュの作品はいくつか読んでいたし、好きな作家だった。この映画のタイトル上ではウイリアム・アイリッシュとしてではなく、別名(本名に近い)のコーネル・ウーリッチと表示されている。

アイリッシュならストーリーは良いはずだし、映像作家はヒッチコック、演じるのはジェームズ・スチュアートにグレース・ケリー。今後決して作れない、とても贅沢な作品である。

裏窓について書かれた書籍

一体何が書かれているのか気になり買った。裏窓のDVDのパッケージカラーは黒と青なのだが、この本はブルーと白だ。そこに何か主張があるのかも知れない。「殺人事件は起きていない?」と書かれている。DVDは黒、書籍は白。そこがポイントかもしれない。実は、書かれている内容は、昔のことで完全に忘れてしまった。これを機会に改めて読み返してみたいと思う。

この映画では主人公は足の骨折のためずっと家の中にいる。周囲の住民も家の中のシーンが多い。閉じ込められた生活が人を追い詰めていく様子は現代社会にもつながる気がするし、この点をどう扱っているかについても気になる所。

印象的なシーンとか気になった場面

グレース・ケリーが登場する場面。主人公のカメラマンが怪我をし、そこに彼の恋人?のグレース・ケリーお見舞いに来るシーンが幻想的だ。主人公がまどろんでいる所、ややスローモーション気味に正面から登場するのだが、ソフトフォーカスで主人公が夢を見るように表現されている。この時のグレース・ケリーがとても美しくファンタジック。モナコ大公だって、誰だって夢中になるはずだ。

出来事や背景描写など
映画冒頭、主人公の部屋の裏窓を通し、物語に登場する人物が次々に描かれていく。ニューヨークのアパートが舞台、舞台演劇のように、物語全体が狭い空間で進む。主人公の恋人を除き、冒頭にほぼ全ての出演者が出てくるので、この後の筋立てがどう進むのか、この空間をどう活かすのかが見所。

主人公の恋人が、外界人(アパートに住んでいない)としてこの世界に入ってくるのが事件発覚のきっかけとなるのだが、どんどん無茶をしていくのが面白い。もし、こんな人が近くにいたならアンバランスさにびっくりする所。こういう描き方がヒッチコックのすごさなのかと思う。

男と女の違いが描かれている

現実世界で、こんな無茶をする女性がいるかどうかであるが、私の経験では、女性の方が無茶をすると思う。男は予想し研究してから動く、人に話を振って反応を見てから動く、熟考してから動くのを止める、方が多い気がする。対して女性は何かのきっかけがあると即座に全力で動く。動く理由が見つかれば躊躇なく動くように思える。

私の印象では、ぜんぜん無茶と思っていなさそうなこと。後悔したり騒ぐのは結果が煮詰まってから。動く前は比較的無防備で楽観的な事が多い気がする。男が三年かかって、やっと実行しようかと考えるような事を、女性は「行ってきた」のように、知らないうちに実行していて仰天する事もある。

あくまでも自分の体験に基づくが、この物語を見てなるほどと思った。皆さんの周囲は?

キャスト
出演:ジェームズ・スチュアート、グレース・ケリー(未来のモナコ公妃)、レイモンド・バー(鬼警部アイアンサイドの)

監督、スタッフ
監督:アルフレッド・ヒッチコック
原作:コーネル・ウールリッチ(ウイリアム・アイリッシュ)
衣装:エディス・ヘッド

制作会社、配給会社
制作:ユニバーサル

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