新卒スタートアップ入社者 伸びる人・伸びない人の違い
カジュアル面談プラットフォーム「Pitta(旧Meety)」を運営している中村です。
新社会人のみなさま、ご入社おめでとうございます🌸 皆さまが選択した"ファーストキャリア"が「最良の選択だった」と、ご自身の力で正解に導けることを祈念しております。
表題の通り、本エントリはすべての新社会人の方に向けた内容というより、スタートアップに新卒入社される方を想定して綴っています。
前提 - 筆者のバックグラウンド
2011年に当時20名程度のスタートアップに新卒入社しており、キャリアの中で2年ほど新卒採用に従事し、約100人ほどスタートアップ新卒入社者の方の活躍動向を側で観察・微力ながらサポートした経験があります。
また、2009-2010年にスタートアップを中心に就職活動をしていた同世代の友人たちが、役員として上場企業を経営していたり、スタートアップを起業して急成長させていたり、スタートアップでインターンしていた友人が外資系コンサルティングファームのパートナーに昇格していたりと、多方面で活躍し始めており、そんな彼らのキャリアの特徴を振り返ってみた、という内容です。
もちろん、キャリアには「こうすればいい」なんて正解はないので、あくまでスタートアップ村に約10年住んでいる、いち村人の意見であることを踏まえた上で、参考になることがもしあれば。そんな想いで筆をとってみました。
1. "機会の集中"を享受できるか
どれだけ学生時代に精力的に活動していた方であっても、新卒入社時はどんぐりの背比べです。
しかし、入社早々何かしら成果を収めることができたり、成果にはつながってなかったとしても、自部署に限らず他部署に対しても関係値を構築し、周りからの信頼を獲得しているなど、ほんの少し相対的に優れた方に機会は集中していきます。
わかりやすく新人賞などのタイトルを獲得した暁には、全社に対して存在感を発揮しやすくなりますし、経営としても「マネジメントの機会」「新規事業立ち上げの機会」「プロジェクトリーダーの機会」「経営チームと一緒に仕事をする機会」などを提供したくなるものです。
こうして最初は些細な差分だったものが、1-3年後には圧倒的な差分にまで広がっていくケースは往々にしてあります。もちろん、遅咲きで大活躍する方もいるのですが、突き抜けたキャリアを歩んでいる方の傾向として、うまくスタートダッシュを切れた方は多いのではないでしょうか。
2. 誰よりもバリューを体現できているか
そもそもバリューとはなんでしょうか?企業によってはカルチャーとも呼ばれますし、スタートアップの採用基準などでよく"カルチャーフィット"という言葉も飛び交うので、耳にしたことがある方は多いと思います。
とある経営者の方が使われていた例えで、バリューとはスラムダンクの海南大附属高校の「常勝」と同じ役割だと仰っていて、とてもわかりやすかったので紹介させていただきます。
スラムダンク海南戦にて、湘北の大黒柱である赤木が海南の主将である牧の足の上に着地して捻挫してしまうシーンがあります。そこで牧は、弱った赤木に攻めかかる指示を出します。
その指示に対し、海南の1年エースの清田が「相手の弱みにつけこむようなことしなくても勝てますよ、牧さん」と言うのですが、牧は「清田、あの文字が見えねえか?」と"常勝"の文字を目で指すのです。清田は「・・・・・はい!!」と答え、プレーに戻る。これこそまさに企業におけるバリューそのものだと思うのです。
バリューとは、企業としてどのようにして勝つか、という価値観です。
新卒社員は、仕事のやり方・価値観に対する固定観念がないため、中途社員と比較してバリューが浸透しやすいと言われています。
新卒採用に注力する企業として、よくサイバーエージェント社が挙げられますが、彼らが新卒採用に力を入れる理由は、「強い組織をつくる→バリューを体現する人を増やす→新卒採用に力を入れる」という論理なのでしょう。
バリューの体現は、能力の有無には左右されません。中途と比較して新卒が優位に立てる唯一のポイントと言っても過言ではないでしょう。誰よりもバリューを体現することで、会社から評価を受けやすい人材になることで、機会を掴み取る準備をしておきましょう。
3. アウトプット偏重・インプット偏重になっていないか
就活で無双していた方が、その後あまり伸びていない...なんてことは多く見てきましたし、偏差値の高い大学を主席で卒業した方でも、じわじわとした成長曲線しか描けていないケースもよく見ます。
この原因の一つに、アウトプット偏重・インプット偏重というスタンスがあるのではないか、と感じています。
学生団体の代表者など就活無双する方が毎年多くいらっしゃいますが、勘違いしてはいけないのは、必ずしも「学生の中で突き抜けた=ビジネスのフィールドで活躍できる」ではないということです。
学生の多くは、学業・サークル活動・アルバイトなどに大半の時間を当てており、アウトプットがわかりやすく表現される領域で経験値を蓄えていません。よって、人より多くアクションさえしていれば、(アウトプットをしている学生人口が少ないので)学生の中で突き抜けた感を出すことは容易です。
それ自体は決して悪いことではないのですが、その経験を通じて変に味をしめてしまうと、キャリアの作り方が「人と違う尖ったアクションでどう差別化するか」の一辺倒になることがあるように思います。それがいいように進めばよいのですが、気づかぬうちに"よくわからない変な人"になってしまう場合もあるので注意です。
当たり前ですが、インプットの蓄積(時代が求める技術・スキル・能力の獲得など)がなければ、良いアウトプットは生まれませんし、いずれ成長は鈍化します。このようなタイプの方は、学生時代の成功体験を一度アンラーニングするくらいがちょうどいいかもしれません。
他方で、インプット偏重もよくありません。受験勉強は得意だけれども、あまり組織の中で成果を出したことがない方や、文化祭やサークル活動などのプロジェクト経験が乏しい方は、インプット偏重に陥りやすいので注意が必要でしょう。
ビジネスの世界、特にスタートアップというフィールドは、答えがわからない曖昧な環境であり、問題自体を自ら定義し実験を繰り返す探索の旅です。悠長にお勉強する暇はなく、自ら行動したことで生まれた結果から学び、次の仮説を生み出していく世界線です。
勉強成績優等生タイプの方は、最初は少しアウトプット偏重気味で行動し、このスタンスに慣れてきた頃に、徐々に持ち前の知的好奇心を乗せるくらいがちょうど良い気構えな気がします。前者のアウトプット偏重の方と比較すると、スタートは出遅れがちですが、中長期で花開く方が多い印象です。
4. 上司・同僚をうまく巻き込めているか
どれだけ個としての能力が高くても、周りの力を使わずに仕事をしていたら良い成果を残せません。逆に言うと、個力が高くなくても、周りから信頼を獲得し、うまく巻き込んで仕事ができると、成果を早く大きく出しやすいです。
まずは50点でいいのでアウトプットを出し、早めにフィードバックを得てから改善サイクルを回すと良いでしょう。日頃から周りの方から信頼を獲得しておけるよう、組織・チームに対して Give する習慣を持ちましょう。
本論からは少し外れますが、新卒でスタートアップに入社する方の中には「起業」を意識していらっしゃる方も少なくないかと思います。有名な話ですが、会社の同僚と起業するケースが、お互いの能力・仕事の価値観が合いやすいこともあって、一番成功しやすいというデータもあるようです。長期的なキャリアを見据えても、社内で信頼を獲得しておくことはとても意義がある、ということも強調しておきます。ちなみに、私も新卒で入社した会社の先輩と一緒に共同創業しています(取締役CTOがそうです)。
5. 自分の市場価値を意識しているか
スタートアップに新卒で入社するくらいなので、野心をお持ちの方も多いことでしょう。しかし、入社時に描いていたキャリアの目標が(良くも悪くも)すっかりなくなってしまうことも珍しくありません。
もちろん、会社の意向によって部署移動したりジョブチェンジをすることもあるかも知れませんし、それ自体が決して悪いことではありません。そもそも最初の目標設定自体が微妙だった可能性も大いにあるでしょう。
しかし、キャリアの主導権は自分自身で持ち続け、定期的にキャリアを棚卸する中で、「ここ数年あまりやること変わってないな」「成長を感じられてないな」と思ったら黄色信号と捉えるのが健全です。食いっぱぐれならぬ"キャリアっぱぐれない"ようにする責任は自分自身にあります。
スタートアップという世界はまだ始まって20年そこそこであり、マネージャークラスの平均年齢は30-40代くらいでしょう。50-60歳のキャリア像が業界としてかなり曖昧な現況です。
また、インターネットサービスの歴史を見てもプロダクト・ライフ・サイクル(製品の寿命)はそれなりに短命であると言えます。つまり、いま急成長している会社が将来も永続的に成長し、存在し続けられるかは不透明であり、「個人のキャリアの寿命 > 会社の寿命」になる可能性は高い。
スタートアップに新卒で入社するくらいですから「会社に守ってもらうなんて甘い考え、あるわけないじゃん」と思っているかもしれませんが、結婚し子供が生まれ、居心地が良く長く在籍していたら、いつの間にか30代中盤に。いざ転職市場に身を晒してみると「全く評価されない・・今までのキャリアはなんだったんだ・・・」となることは、残念ながらザラにあります。
以上を踏まえても、魅力的なキャリアを描くことはこの世界でサバイブする上で必須であり、日本人の性格上、少々エゴイスティックかなと思うくらいでちょうどいいのではないかと考えています。
6. 登りのエスカレーターに乗っているか
市場・会社が急成長しているかどうかは、当然のことながら個人のキャリアにも大きく影響を与えます。
例えば、単一事業でじわじわと毎年5-10%成長している会社と、主観事業が急成長し続けながら頻度高く新規事業を立ち上げる会社、どちらが成長機会が多そうでしょうか。
次々と新規事業が生まれる会社では、活躍した方から新しい部署に異動する傾向があります。そうなると、下にいたメンバーの方がマネージャーになり、マネージャーだった方が事業責任者になったりと、次々に打席が回ってきます。
せっかくスタートアップに入社したのに、構造的になかなか機会をつかむことができない環境であれば、早めに変えることもおすすめします。そんな時は、カジュアル面談プラットフォーム「Pitta」で、まずはキャリアの"ウィンドウショッピング"をすることから始めてみてはいかがでしょうか?(PR)
7. 守りに入っていないか
「5. 自分の市場価値を意識しているか」にて、キャリアの主導権を会社に委ねないことの大切さを説明しました。
その話に加えて、一つの職種・スキルに縛られないことも同様に重要であることも併せて意識が必要でしょう。テクノロジーが進化するということは、当然ながら求められるスキルも常に変化し続けます。
正社員としてビジネス職で入社したとしても、エンジニアにキャリアチェンジしたければ、何かしらのプログラムに参加するなどして複線的に経験値を積み、キャリアチェンジできるよう、社内外に交渉することは可能です。もちろん、その後エンジニアからプロダクトマネージャーになり、またエンジニアに戻ってもいいでしょう(このようなことは実際によくあることです)。
キャリアの途中でフリーランスを数年挟んだり、起業したけどうまくいかず精算することになったとしても、そこで経験したスキルや経験がちゃんと時代に求められることが多くあるようであれば、むしろそれがキャリアアップにつながることもあるでしょう。
最初の数年で培ったスキルを大事に大事に育てるのもまた一つですが、そのスキルに固執し、転職しても同じ仕事・同じ職位で、ただ環境を変えるだけ。上に進まない螺旋階段を歩み続けるようなキャリアを、定年まで続けられるのか?逃げ切ることができるのか?自問自答している方も少なくないのではないでしょうか。
キャリアの足踏みは後退であると捉え、常に新しいチャレンジをし続けることが、結果的に安定につながるのではないかと思います。
最後に
スタートアップで活躍する人の特徴を7つ挙げてみました。それらを抽象化してまとめると、どう捉えられるでしょうか?
という感じでしょうか?
もちろんがむしゃらに頑張ることも大切です。ただ、それはあくまで一つの要素であり、成功に対してこの係数はそこまで大きくないんじゃないかと感じています。
それよりも「そもそも進む方向が正しいこと」「変化する時代・環境に順応していく知的好奇心」の方が係数としては大きいのではないかと思います。
スタートアップは常に困難な課題と対峙しているので、時にはつらい・苦しいと思うこともあるかもしれません。ですが、突き抜けるような方は不確実な未来そのものを楽しむスタンスを持っており、客観的に見るとよくそんなに頑張れますね、と周囲に思われるような挑戦をし続けています。
新卒で入社した会社で役員を目指す方、入社3年以内に起業してやろうと野心を燃やす方、具体的な目標は今のところないけれど充実した仕事人生を送りたいと思っている方など、さまざまなビジョンがあるかと思いますが、それに向けて選択したファーストキャリアが正解だったかどうかは、これからの皆さんの行動次第です。
もしかしたら、大企業・メガベンチャー・外資系の人気企業に就職する友人を傍目に、両親の反対を押し切って、スタートアップに覚悟を持って就職した方もいらっしゃるかもしれません。全く不安がないという方は、ごく少数でしょう。
甘い環境ではありませんが、しっかりとスキル・経験を蓄え続けることができれば、たくさんのチャンスを掴み取ることができるフラットな世界です。
改めて、皆さまが選択した"ファーストキャリア"が「最良の選択だった」と、ご自身の力で正解に導けることを祈念しております。
P.S:
この内容はシードスタートアップ中心に投資実行しているベンチャーキャピタル「ANOBAKA」の投資先企業に新卒入社する方々に向けてプレゼンテーションした内容の抜粋です。まだ名もない起業家にも関わらず、貴重な機会をいただき誠にありがとうございました。
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