VSCC卵 予選day1 観戦記(前編)
はじめに
V将棋界隈の一般リスナーがVSCC卵の予選を観て、どの将棋もとても面白かったので観戦記を書いてみました。本当は9月中に6局すべての観戦記を書くつもりでしたが、間に合いませんでした。一応3局分の観戦記は拙いなりにも書けたので、前半の3局分だけ一旦公開します。よかったら読んでいってください。
ちなみに大会の概要が分からない方や、出場者の情報を知りたい方がいれば、下記のリンク集から飛んでください。
リンク集
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観戦記
1局目 ぽめさん VS 検察側の証人さん
記念すべき大会の第1試合は居飛車対四間飛車といったオーソドックスな対抗系から始まった…と思いきや、先手のぽめさんはなんと金無双急戦を採用。(図1-1)
大会の初日ということもあり、準備期間があまりなかった事を考えると相当練習に練習を重ねてこられたはず。本大会に対する熱い思いが垣間見えた。
検察側の証人さんは恐らく慣れていない戦型になってしまったようで、対応が後手後手になってしまったものの、▲2四歩に対して△同銀と取ったの振り飛車党らしい良い対応。(図1-2)
以下銀交換等の捌き合いが行われ、終盤戦に突入。(図1-3)
初心者にとって優勢な局面からどうやって玉を寄せていくかが大きな壁となるので、筆者はグダグダした試合展開になってしまってもおかしくないなと思っていた。しかし、その不安は一瞬で消え失せた。
図1-3以下の指し手 ▲3四角!!!△3五飛▲5二角成!(図1-4)
▲3四角。この角が打てるのは強すぎる。美濃崩しを少し勉強した初心者~初級者帯の方にとっては、急所の▲7一銀を直接狙いに行く▲4四角や、金を弱い駒で狙いに行く▲4四桂などが目にいくのではないかと考える。どちらも悪い手ではないが、▲4四角は△6二銀、▲4四桂は△6二金寄と受けられて早い攻めがなく、勝ち切るのは意外と大変な将棋になってしまう。
▲3四角であれば5二の金だけでなく、6一の金を間接的に睨んでいるため、もし△6二金寄と逃げられても▲1一竜と香車を取り、次に▲6三香~▲6一角成を狙えば攻めは止まらない。
本譜は3四角に狙いを定めつつ、飛車の成り込みを狙う△3五飛だったため▲5二角成を決行。3手詰も見逃さず、開幕局はぽめさんの快勝となった。
2局目 かにみそさん VS XK⇒ペケ子さん
2局目はかにみそさんの四間飛車に対してペケ子さんのミレニアム。初心者大会でまさかのミレニアムである。こういった金銀をガッチガチに固めまくる囲いは途中で不自然な手を指してしまう事も少なくはないが、本譜ではしっかりとした手順で組んでいた。偉い。
かにみそさんも負けじと美濃から銀冠に組み替えて、決戦の時を待つ。
そしてミレニアムが組み終わった後にペケ子さんが△8六歩からの決戦を決行。 (図2-1)
それから紆余曲折あったものの、かにみそさんが飛車と桂馬を、ペケ子さんが角と銀を手に入れる展開となり、終盤戦に突入した。 (図2-2)
図2-2以下の指し手 ▲3五歩!△6四角!▲3四歩△4五桂 (図2-3)
まずは▲3五歩。とても筋がいい。△同歩であれば▲3四桂があるため、この歩は取りにくい。どう対応するのか注目していたところ、なんと△6四角~△4五桂。これはかなりいやらしい反撃で、玉のコビンからどんどん攻めていこうという手である。
本譜もコビン攻めが続き、図2-4へと進んだ。
後手の攻め駒が少なく、攻めが切れてしまいそうだが、ここから上手くペケ子さんは手を作っていった。
図2-4以下の指し手 △4五金!▲3七桂△4六金▲同金△同角▲4七飛!△5七角成 (図2-5)
ゴリゴリと音がしそうな金打ちを放つ。普通なら何とか受かってそうに見えるが、後手玉が堅すぎる+3筋に歩が打てるのが大きく、なかなか攻めが止まらない。かにみそさんも自陣に飛車を投入して必死に受けにいったものの、5七角成が冷静だった。
以下、ペケ子さんがかにみそさんの抵抗を振りほどき、勝利を収めた。
3局目 検察側の証人さん VS XK⇒ペケ子さん
3局目は検察側の証人さんが四間飛車、ペケ子さんがミレニアムを採用。2局目と同じ戦型になったが、今度は振り飛車側が機敏に仕掛けていった。
図3-1以下の指し手 ▲9五角!△9四飛▲7七角△4二銀▲4四角!△同歩▲7二角 (図3-2)
▲9五角が機敏な一手。飛車が逃げるしかないが、陣形を乱したので角交換を狙いに行き、角を打った局面は角成が受からず、検察側の証人さんが一本取った形になった。以下、先手が馬を作ってからは一旦落ち着いた局面となった。
少し進んで、後手も負けじと馬を作った局面。(図3-3) ここで後手に次の一手のような手が飛び出た。
図3-3以下の指し手 △6七歩!!▲同銀△7七馬▲6九飛△8七飛成 (図3-4)
△6七歩が手筋の一手。飛車で取っても銀で取っても駒損してしまうので、非常に対応が難しい。本譜は桂馬を取りつつ飛車が成り込めたため、一気にペケ子さんが優勢に。ただ、検察側の証人さんもかなり粘り強く、この局面で▲9六馬!と引いて泥仕合に持ち込んでいく。
ペケ子さんが優勢にはなったものの、なかなか検察側の証人さんが簡単には勝たせてくれない展開が続く。 (図3-5) しかし、ペケ子さんは非常に落ち着いていた。
図3-5以下の指し手 △6九歩成!
この歩成で先手は痺れた。先手は攻めに使える駒が少なく、速い攻めが全くないので、このようにと金で攻められる展開になってしまうと勝ち目がない。検察側の証人さんは以降も粘り強く指していったものの、ペケ子さんが終始優勢を維持しながら勝利を収めた。
おわりに
間に合わなかったので、後半3局の観戦記は10月2日に公開予定です。
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