理科室まがった　#毎週ショートショートnote

　理科室まがった廊下の奥は理科準備室。ここの主は講師のO先生。O先生の授業はわかりやすくて生徒にも人気だ。でも講師は肩身が狭いのか、いつも理科準備室にこもって何かの実験してる。学校で居場所のないワタシは、いつの間にか理科準備室の常連になった。
　ある日ワタシは、綺麗な液体の入った試験管を触って落としてしまった。こぼれた液体からは甘い匂いが。何だかボーっとなってしまった。
「試験管からこぼれた甘い匂いの液体で気を失う…ねぇ先生、ワタシ、タイムトラベルできるかな？」
「はぁ？筒井康隆の「時をかける少女」じゃないんだよ、そんな訳ないだろ！」
その翌日から、O先生は学校に来なくなった。
「やっぱタイムトラベルしたんじゃね」…噂してたら、先輩がおしえてくれた。
「Oのヤツさ、駆け落ちしたらしいぞ」
先輩によると、O先生は理科準備室で作った香水を保健の先生にプレゼントしては口説いてたんだって。　
先生、ワタシを連れていってほしかったな。

（410字）

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