てるてる坊主のラブレター　#毎週ショートショートnote

　転生したらてるてる坊主だった。まさか紙で作られた人形に転生するとは。てるてる坊主の役目は、作り主の天気に関する願いを神様に伝えること。俺の作り主は真由という俺好みの若い女だ。近いうちに花火大会があり、付き合い始めてまもない男と見に行くらしい。
「てるてるクン、お願い。いい天気にしてね」
そう言われて俺に出来るのは、神様に願いを伝えることと真由が描いたぎこちない笑顔で笑うことだけ。
それからの真由の願い事は数回。雨が降った日には俺の顔は雨で滲んだが、その度に真由が描き直してくれ、俺にはそれが至福の時間だ。だがある日真由は俺を吊り下げていた紐を切り、俺の体を開き始めた。真由、お願いだ。やめて…

　真由は紙のてるてる坊主を開くと、しわを伸ばし、中に書かれた文面を目で追った。数ヶ月前に書いたラブレターの下書き。もう渡すこともない。「てるてる、ありがとね」真由は手紙をシュレッダーに掛け、それはゆっくりと細々にちぎれていった。

（410文字）

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