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くまちゅーる #野良ショートショート

 どなた様の企画に参加させていただく訳でもなく、思いつきの由無し事を綴ったショートショートです。名付けて野良ショートショート。基本一発勝負、書き殴り、推敲無し。よろしければご一読を。


博士「田中君。わたしは滅多にテレビをみないのだが、さっき町の食堂のテレビを見ていたら、CMですごいものを見たぞ。
田中「博士、何か新たに気づかれたんですか?」
博士「そうだ。ワンちゅーるという商品のCMを見たのだ。犬たちがスティック状のものを恍惚の表情で舐めていた。あれは凄いな」
田中「なんだ、そんな事ですか。あれなら随分前からありますよ。元々ネコ用が先にあって、それからイヌ用も作られたんじゃないでしょうかね。今じゃ世界でも評価されてます」
博士「そうなのか!それでな、私はアレを応用した製品の開発を思いついたんだ。最近はよくクマに襲われる被害があるだろ。そこでな、万一クマに出くわした時に、クマ用のちゅーるを渡して、クマが夢中になっているうちに逃げられる、というものだ。名付けて「クマちゅーる」だ」
田中「その商品名はたぶん本家から訴えられると思いますが、面白い!早速やりましょう!」

それから博士と助手田中は、クマの好物に関して研究を進めた。やがてクマがうっとりとなる成分を含んだゼリーが完成。それをスティック状の袋に詰めてクマちゅーる(無許可)が完成した。

博士「私ほどの才能にかかれば、このようなものの開発は、是非もない事。さっそく実地試験だ。田中君頼んだぞ」
田中「承知しました。行ってきます!」

助手田中は、クマちゅーる(無許可)の試作品を携え、クマの出没情報があった山中へと向かった。
田中「この辺りでウロウロしていれば、きっとクマに出会うに違いない。その時はコレをクマに与えて逃げればいいんだ。ああドキドキするなぁ」
その時、田中のいる林道の脇がガサガサとしたかと思うと、大きなクマがのっそりと姿を現した。
田中「ぎゃー。現れやがった。落ち着け。用意しておいたアレをやるんだ」
 助手田中は、クマの鼻先にクマちゅーる(無許可)を差し出す。するとクマは、たちどころに匂いを嗅いで興味をしめした。田中がスティックを落とすとすぐに前足で掴んでベロベロと舐め始め、恍惚の表情となった。
田中「やったぞ!クマはクマちゅーる(無許可)に夢中だ。今のうちに逃げればいい!」
田中はクマの様子を少しだけ撮影すると、早速逃げ出した。

研究室の博士に、その一報が入ったのはそれから数時間後。助手田中が、クマに襲われたがなんとか一命を取り留め、病院に緊急搬送された、との知らせだった。クマちゅーる(無許可)は、長い時間クマをとどまらせるには量が少なかった。それどころか、クマちゅーる(無許可)の味に魅せられたクマが助手田中にしつこく追いすがったらしい。
「まだまだ改良の余地があるようだな」…博士はちいさく呟いた。
(了)

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