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ダウンロードファーストクラス #毎週ショートショートnote

2030年、日本は通信速度7Gの時代を迎えた。ただ、その恩恵を誰もが受けられる訳ではなかった。富裕層向け高額契約、ダウンロードファーストクラス契約を結ばねばならなかったのだ。富裕層は瞬時にダウンロードされる音楽や映画などをより早く快適に楽しむことができる。情報格差も甚だしく、中間層や貧困層の不満は高まるばかりとなった。
 やがてそんな富裕層を揶揄するミュージシャン等が現れた。彼等は自らの音源を、1990年代の通信速度でダウンロードしないと楽しめないようにしたのである。さらに、この動きに気鋭の映像作家などが追随していった。彼等は次のような一節で始まる檄文を公開した。 
 「かつて1990年代は、ドットの荒いヌード画像を一枚ダウンロードするのにも一晩がかりだった。だからこそ高鳴る気持ちにワクワクできたのだ」
 こうしてダウンロードファーストクラスに対抗するカルチャー、スローダウンロードムーブメントは始まったのである。

(410文字)


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