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 愛野藍がレッスン場に行くと、先生のご主人の奨励さんが待ち構えていた。
「今度の発明はいいぞ。バレエ専門の神様時計だ」

 藍はバレエ専用発明家の奨励さんが有難迷惑だ。が、今回は真剣になった。
「ぜひ使わせてください」
「よしよし。最初から3時30分にあわせてある。踊ってごらん」

 大好きな黒鳥を踊ってみる。ところが、足が90度以上にはあがらない。
「すまん。6時にしておく」
 とたんに脚がピンと伸び、時計の針のようにまっすぐにあがった。

「いいだろ」
「そんなの元からできます。一体これのどこが」
「常に正確であれ。まず12時、完璧なシュス。12時40分、完璧なブリゼ。3時25分後ろバッチュ。2時45分でジャンプが床と平行に」

 そこへ先生が来て藍から神様時計を奪い取り、奨励さんの手首に巻いた。
「あれほど生徒に構うなって言ったのに。5時35分にしておきます」
 

奨励さんはレッスンが終わっても部屋の片隅でその姿勢でずっと転がされていた。



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