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TRIZ第六回
地下鉄に乗って広告を眺めていると、隣の号車から40ぐらいのスーツ姿の男性が入ってきました。彼は急いでいたのがドアを閉めずにまた次の号車へと向かっていきます。やれやれとドアを閉めようとすると、なんとドアは数秒後に自然と閉まりました。
前置きが長くなりましたが、今日は25セルフサービス原理を扱います。ドアを閉めなくても勝手にしまったこの現象はまさに25セルフサービス原理が働いて言えるでしょう。急いでいる人にはドアを閉める手間が面倒くさいですが、ほかの乗客にとってドアが開くと風が吹くので鬱陶しい。(時間の損失を避けたいが、システムが作り出す有害な効果を避けたい。)そこで、25セルフサービス原理により、勝手に閉まるドアという解決策が生まれました。
この勝手に閉まるドアにはもう一つ発明原理が潜んでいます。それが22災い転じて福となす原理です。本来、減らすべき電車の揺れ。しかし、そんな電車の揺れを利用することで、勝手に閉まるドアが生まれたのです。
※勝手に閉まるドアを25セルフサービス原理としてとらえましたが、実はTRIZにおいては別の捉え方をすることも可能です。それが究極の理想解です。これは、現在の状況からではなく、最終到達点から物事を考える方法で、最終目標を基に現在の方向性を決めるツールといえます。そんな究極の理想解とは、望む機能をコスト無し、害無しで達成するものであると考えられていて、その定義には自然とセルフという概念が含まれて行きます。例えば、ハンバーグを作るという機能を考えた時に、調理の手間や材料・ガス代等の代金というコスト無しかつ、洗い物などの害無しの方法が究極の理想解と言えます。皆さんお気づきの通り、調理の手間なしというのはまさにセルフの概念が内包されているように、究極の理想解にはセルフという概念が含まれているのです。
今日の疑問⑥
なぜ日本では、会の締めとして一本締めを行うのでしょうか?集団としての一体感を最後に確認する文化は世界共通なんでしょうか?(僕自身は、一本締めはとても便利でいいと思います)
今日の学び⑥
先日、ナポリの隣人というイタリア映画を拝見してきました。(上映期間が終わったはずなので、ネタバレしても大丈夫ですかね?!)要約すると、娘との距離感を掴めない父が、隣人との出会い・別れを通して、娘との愛を再び取り戻すという話です。
主人公ロレンツォは、弁護士を引退し、自宅(本来は、自分の持ち家ですが、なぜか自分の家ではなく、娘エレナの家だと言い張ります)にて一人で余生を謳歌する高齢男性。そんなロレンツォには、二人の子供がいますが、ほぼ絶縁状態。心臓病で入院した際にも、見舞いに来た娘エレナを、寝たふりで無視します。
そんなロレンツォの向かいの家に、引っ越してきたのが、ファビオとミケーラの若い夫婦。自分の子供に冷たいロレンツォですが、ミケーラに対してまるで我が子のように接し寛大に面倒を見ます。
しかしそんな若い隣人との共同生活はすぐに終わりを迎えます。人間関係に常に悩みを抱えていたファビオが無理心中をしてしまうのです。救急搬送されたミケーラは、緊急治療室にて、治療を受けますが、意識不明の重体。そんなミケーラを案じたロレンツォはミケーラの父と身分を誤魔化して、四六時中意識不明の彼女のベッドの横で寄り添います。病院にて父に会いに来た娘エレナに対しても、自分はミケーラの父だと言い張り、再度彼女を鼻であしらいます。
なぜそこまでして隣人を思いやれるロレンツォは、何度無視されても家族として接し続ける娘を拒絶するのか。物語が進むにつれ、ロレンツォと娘の間には、亡き妻をめぐる争いがあったことが浮かび上がります。ロレンツォは不倫をしていたことで、自分の妻を死に追いこんでしまっていました。自らの過去へ自責の念を抱くと共に、そんな自分は娘には受け入れられていないと考え、ロレンツォは娘を一方的に拒んでいたのです。
最終的にミケーラの死後、三日間行方不明になったロレンツォは娘エレナの下に現われ、和解がなされて、物語は終焉します。
このように簡潔に説明すると、1つの親子の関係が物語の中心ではあります。しかしながら、ストーリーの中では同時並行的に、様々な人間関係が描かれます。娘エレナと父ロレンツォ、隣人ミケーラとロレンツォの関係は勿論のこと、エレナの息子とロレンツォやファビオとロレンツォ、元愛人とロレンツォ、ファビオとその母親など様々な立ち位置の人間関係が表現されます。それぞれの関係性に共通するのは、距離。家族という近い存在ですら、分かり合えないという人間関係の難しさ・人と人との距離が残酷までに心に響きます。
そんな人間関係の難しさが表現されつつも、ラストの和解シーンは我々に希望を与えてくれます。「幸せとは目指す場所ではなく、帰る家なんだ」という娘エレナのセリフ。
あなたには、そんな「帰る家」がありますか?
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